第28話 装備調達とクエスト
必要な情報を入手しても。それなりの金額が手元に残ったので、約束を果たすべくウルトのおっちゃんの店に向かう。口約束でも約束をした以上は守る。
裏通りに入り、店の前まで来たが。相変わらずお客が一人もいない、経営が心配になってくるぜ。
「ウルトさんお金が出来ましたので。装備を見繕ってもらえますか?」
店の中に入るが見当たらなかったので。奥の工房に向かって大声で呼びかけると、奥から慌てて出てきた。
「なんだ、本当に来たのか?まさかウチなんかの店で装備を揃えに来るとは思わなかったぜ」
客が来たことに驚くなよ! そうツッコミたいが、やぶ蛇になりそうなので堪えておく。
「お金がデキたらこの店で装備を購入する約束しましたからね。一度約束した以上は守らないといけません。今後の信用にも関わりますから」
何故か呆れたような目を向けられるが、スルースキルを発動させてやり過ごす。俺が欲しい武器は、あらかじめ伝えてあるので問題は無いはずだ。
ジョブやスキルに関しては念のため教えていない。どのゲームでもビルドからスキルやスタイルを読まれるのは常識だ。『ワーフロ』では有名プレイヤーのビルドや装備などの情報が有料サイトで購入できる。
ゲームにおいて情報は、有力プレイヤーの情報はそれほど価値がある!
ちなみに俺は関わりを作らずに、隠者のようなプレイスタイルなので情報は出回っていない。しつこく聞いてくる情報屋とかクランに対しては、決まって無視を決め込んでいる。
(あの手の連中に妥協や譲歩しても、碌な事に為らん! 却って面倒事に為るだけだ!)
嫌な過去を思い出し、顔を歪みそうになる。
俺のゲー歴にある情報屋がいた。プレイヤー全体の利益と称し。周囲を焚きつけ、俺から情報を毟ろうとしたが。キルした後に、リスポーン地点を特定。殺し続けたら二度とログインしなくなった。俺はその事を後悔してない
(金払ってんのは皆同じ! 俺の情報を見返り無く渡す道理がない! 攻撃するなら反撃を覚悟して当然!)
これが、志波蓮二のポリシーだ。
まぁ俺が悪者扱い為れなかったのは日頃の行いだろうw
『ワーフロ』のPKによるデスぺナは、一日のログイン制限と結構重い(廃人にとってはだが)。それ以外のデスぺナは一定時間のステータス減少だ。具体的なキル回数は覚えていないが、30回は超えていたと思う。
普通ならドン引きモンの行為だが、通報待ったなしだろうが。そいつは有名プレイヤー、実力プレイヤーから嫌われていた(一部からは重宝されていたが)。なので、排除した俺は問題視されず。結局、有耶無耶になったことを追記しておく。
・・・・閑話休題
話が盛大にそれたような気がするが。俺がジョブや種族に関して他人に話さない理由はそれだ。メタ対策ではないが、自分の情報は可能な限り秘匿しておきたい。
おっちゃんは何か言いたそうだったが、結局何も言わずに装備を見繕ってくれた。
「お前ぐらいの駆け出しならこれは十分な装備だ。新人の内は装備を見繕う場合は実力よりも少し上の物を選ぶとイイ。すぐに買い替える手間が省けるからな。それと懐に余裕が出来たら装備の更新はきちんとするんだ。こういうところでケチる奴は早死にするからな」
装飾や装備の値段の提示額は俺のほぼ全財産だった。でも、迷わずに購入する。死ねば終わりの現実でケチってくたばる事ほど馬鹿らしいことは無い。
それと装備を新調するにしても、今後のこともあるので、ちょっと聞いておいた。
「もし私が素材を持ち込めばオーダーメイドの装備なども作っていただけますか?」
おっちゃんはポカンとしていたが、すぐに気を取り直し、大口を開け豪快に笑い出した。
「グハハハハ! ヒヨッコ以下のおめぇがオーダーメイド? 十年早いわ。ましてやこんな潰れかけの店に持ち込みでオーダーメイドの依頼とはつくづく可笑しい奴だ。・・・・いいだろう。持ってきたらお前のために装備を作ってやる。ただし、生半可な素材じゃオーダーメイドなんて作らねぇからな? そこんとこは肝に銘じとけよ?」
照れ隠しなのか、若干顔を赤くして怒ったようにそう言い放ったおっちゃんを見て思わず笑いそうになるが、ポーカーフェイスを維持する。
しかし、なぜこの店がはやらないのか疑問が出てくる。武器や防具などの質は良いし、おっちゃんの力量は・・・・・
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〇名前 :ウルド
〇種族 :ドワーフ
〇ジョブ:大鍛冶師 LV:45 (合計LV:445)
〇HP :10467
〇MP :5789
〇力 :1300
〇敏捷 :75
〇体力 :1800
〇知力 :346
〇魔力 :198
〇運 :654
〇アクティブスキル
【武器作成LV:7】・【防具作成LV:6】・【装飾作成LV4】・【金属鍛造LV:7】
【希少金属鍛造LV:3】
〇パッシブスキル
【魔力操作LV:3】・【鎚術LV:6】・【目利きLV:5】・【鍛冶LV:7】・【炎熱耐性LV:4】【寒冷耐性LV:3】・【麻痺耐性LV:4】【毒耐性LV:4】
〇固有スキル
鍛冶の才能・・・・・・【未開放】35/100%
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凄まじいステータスだ。スキルは俺より少ないが、それは俺が異形種だから。数はともかく内容は完全に劣っている。普通に高レベルで、あと少しでカンストだ。これまで見た冒険者にもカンストした人物は誰もいなかった。それに未開放だが鍛冶の才能もあるのにこの店の閑散とした状況。何らかの事情があると見るべきだろう。
しかし、あったばかりの人物のためにそこまで首を突っ込む気はないし、中途半端なお節介は相手にとっても迷惑になるだけだ。
礼と一緒に代金を渡して、俺は足早に立ち去った。
正直に言えば、あのおっちゃんの事情を聴いて力になりたいという思いはあったが、こちらもあまりノロノロとしているわけにはいかない事情があった。それは・・・・・・
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〇クエスト名【ゴブリンキングの討伐】
ファーチェスの南東にあるラバンの森にゴブリンキングが誕生した。
放置すれば眷属を増やして近隣の街を蹂躙するだろう。
至急、討伐のために動け。
クエスト難易度:D
達成条件・ゴブリンキングの討伐
失敗条件・クエスト発生から一週間の経過
クエスト成功確定報酬・首都までのフィールドを開放
失敗ペナルティー・この世界へのログインを一か月制限。
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突如、現れたこのクエストが原因だ。
【叡智】君から聞いたとき。特に注意すべきモンスターとして~キングなる名称のモンスターは。配下を率いて、その数だけでも厄介な上に。~ジェネラルやエリートナイトといった『統率系』のスキルや『眷属強化』などのスキルでステータスが強化されるので非常にやりづらいらしい。
実際にギルドでもキングの名称の付いたモンスターは、実際のランクのプラス1と思え。という格言まであるようだ。ちなみゴブリンキングはランク4。だが、ランク5相当という計算になる。
ランク5:戦闘系のジョブを複数修めて一定の戦闘センスが無いと対処は厳しい。
つまり、最低でも『呪術師』はカンストしていないと話にならない。カンストしてもそれは最低ラインだろう。
こちらの時間で約4日半。正直言ってかなりの無理ゲーだが、7日ギリギリまで時間を掛けるのもまずい気がする。
俺の勘だが、時間が経つほど配下の数や強さが強化されるような気がする。
だが失敗も論外。どちらの時間で一か月かは知らんが、仮に現実時間なら、ひと月を無駄に過ごすことになる。そんな無駄な時間は俺には無い。
(なら解決方法は、たった一つ!)
クリアしたけりゃ、死ぬ気でレベリングをするしかない。実に単純だ。
(薬草採取やギルドの依頼を熟しつつ、レベリングだ。ラバンの森は奥まで行けばランク4から最大で5までのモンスターが出るので、リソースには困らないだろう。
成功すれば冒険者ランクも上がる。そうすればダンジョンに入る資格もできる。災い転じて福となすだ。リスクを恐れてちゃリターンは得られない。
俺は無謀と言っていい試みに委縮する心を奮い立たせるために、ポジティブ思考全開でカッコつけた言葉で己を奮い立たせた。
異世界での最初に試練がスタートした。
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入手装備品一覧
頭・風のバンダナ(8級)・敏捷増加LV:1(敏捷に50の補正)
体・盗賊の服(8級)・敏捷増加LV:1(敏捷に50の補正)
腕・黒鉄のガントレット(8級)腕力強増加:1(力に50の補正)
腰・硬革の腰当(8級)・スキル無し
脚・硬革のブーツ(8級)・敏捷増加LV:1(敏捷に50の補正)




