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穏やか?な日々④


 〇【天帝】志波蓮二


 選択肢が無さすぎたのも困るが、どれも有りになってくるのも困りモンだ。


「一先ず整理してみよう」


 現在の種族の正当進化先だが未知数な『NEO』種族・?

 トリッキー寄りの万能型『JOKER』種族・悪魔

 生存よりの万能型とみられる『吸血始祖』種族・アンデッド

 物理攻撃特化型の『ジャバウォック』種族・魔獣

 個人生存特化型の『ベエルゼ』種族・魔蟲

 AGI特化型の『ミーティア』種族・怪鳥 

 物理・魔法に優れた『イレイザー』種族・竜 


「『ベエルゼ』は除外。これは譲れない」


 生存特化は魅力だが、蛆を産むのも蠅の生も流石の俺でも御免だ。


 俺個人としては『ジャバウォック』・『JOKER』・『NEO』辺りが鉄板だ。


 『ジャバウォック』の物理特化型は安定して強く、DPSが取りやすい傾向がある。更にダメージ減算と思わしき獣王気。安定して殴り合いが出来そうだ。

 

「ただ、魔力やMPが少なそうなんだよな」


 MPは俺の生命線の一つ。それが少ないのは結構デカい。俺が物理特化ならいいが、魔法職も取っているのでそこがネックになる。


 『JOKER』の偽装や隠蔽能力。後は『有るモノを無いモノ』ってのはたぶん幻術だろう。大鎌に単独で騎士団を壊滅って一文は直接戦闘も長けていると解釈できる。


「俺のビルドはどっちかというと万能型であってもVIT寄り。鈍足ってほどじゃないが、AGIはそこまで高くない」


 それを補う意味でも幻術は魅力的だ。ステータスを偽装する能力もこの地球で生きていく上で役に立つだろう。戦闘以外でも有用という意味合いでは『ジャバウォック』よりいいだろう。


「戦闘だけやってりゃいい訳じゃないからな~」


 あくまでも戦闘は最終手段。魔物ならまだしも、人相手に誰彼構わず喧嘩を吹っ掛けていたら敵を作るだけだろう。そういった意味合いでも『JOKER』は有用だと思う。


 だが……。


「進化によって特性がどうなるのか? それが問題になってくる」


 異形種の特性は進化の際、スキルに変化する。だが全ての特性がスキルに変わらないのは間違いない。普通ならそこまで気にしないが、今回はどうしても手放せない。手放したくない特性がある。


 それが……。


「≪超乾眠≫と≪能力捕食≫。この特性は何としても保持したい」


 流石はAランク上位の最終レベルで獲得した特性といってもいい破格の性能だ。


 〇≪超乾眠≫

 肉体の一部を分体として切り離し、仮死状態で保存する。もし本体が滅んでも乾眠状態の分体が存在すれば、そちらが本体として再誕が可能。乾眠状態の分体は最大でも一体しか作り出せない。一度再誕すると再度乾眠状態の分体を作り出すのに三十日間のクールタイムが必要となる。


 ≪超乾眠≫はレトロゲー風に言うならライフ+1か残機+1ってとこだ。仮に死んでも復活できる能力は代えがたい魅力がある。

 冒険をする、しない以前に復活できる能力を捨てる可能性を選ぶのは勿体なさ過ぎだ。


 〇≪能力捕食≫

 自分より下位の魔物を喰らった時、低確率でスキルを一つだけ奪い取れる。但し、奪えるスキルを自分で選ぶ事は出来ない。一体の魔物につき、最初の捕食一回のみ発動する。


 ≪能力捕食≫は低確率でのラーニング。スキルが選べないのは欠点だが、アタリを引いた場合のメリットは大きいし浪漫がある。


 俺とて嘗ては厨二を患っていた忌まわしき黒歴史を持つ男。能力の模倣や略奪には抗いがたい魅力がある。


 ゲームで厨二ロールをしていた過去は思い出して赤面するが何とか堪える。


「他の候補だとこの特性を失う可能性が高い‥…様な気がする。『NEO』なら最低でもスキルとして残るはずだ」


 『NEO』の詳細が分からないのは痛いが、正当な進化先なら弱くなる可能性は無いと思いたい。


「今の種族も決定打は直感だった。なら今回も直感に賭けてみるかね」


『ふにゃっ!! ふにゃっ!!』


 うん? 鳴き声がしたので放置していたベッドに目をやると……。


 ミケがクレアさんの豊満な双丘に潰されかけていますな。見ればジタバタしつつも涙目で俺に助けを求めているようだ。

 哀れにもクレアは全くそれに気付いていないのが何とも言えんが‥‥…。

 

(流石に可哀そうだし助けますかね?)


「クレア、今のままだとミケがプレスされた座布団みたいになっちまうぞ?」


『にゃにゃにゃっ!!!』


 俺がクレアの肩を掴み軽く揺すると、ミケもここぞとばかりに大声で懇願するように鳴き声を上げた。


「え? あ、ミケちゃんっ!!」


 ようやくミケの状態に気付いたのか、ロックしていた両腕をパッと離すと。ミケは脱兎のごとく逃げ出し俺の頭に飛び乗った。


 重くは無いが、せめて肩に乗せようとするとミケは器用にも俺の身体を縦横無尽に駆け回る。


 ≪壁面走行≫をそんな利用するなって感じだが、窒息しかけたトラウマか。クレアが差し出す手にも拒絶を示し、俺から離れようとしない。


 クレアがアタフタするが、別にどうってことない。


「このままで構わんよ。小さいから大して重くもないしな」


「分かりました」


 クレアがミケに『後でお仕置きですからね?』と言わんばかりの鋭い目線を向け。ミケがビクッと怯んだ様に(俺の頭上で)蹲る。

 そんなミケを見つつクレアに向き直ると笑顔を張り付けていたので、野暮なツッコミは止めておいた。


「じゃあアイテムの確認と行こうか」


 俺はインベントリに仕舞ってあった『アムリタ』『暴君の宝冠』『賢王の王錫』を取り出す。


 『アムリタ』は高級な香水瓶のような複雑な装飾が施された透明な容器に、濃い蜂蜜色の液体が入っている。


 『暴君の宝冠』は荘厳華麗な装飾のなされた金の王冠で、中心部には漆黒の宝石。その横に寄り添うように七色の宝石が埋め込まれている。きんきらきんに飾り立てた如何にも権威の証って感じがする。


 『賢王の王錫』は古めかしい樹木が複雑に絡み合った錫杖って感じだ。装飾や細工は施されていない古めかしい杖にしか見えんが、俺的には落ち着いた感じが好ましいな。


「凄いですね」


『くぁ~っ!!』


 クレアも興味深げにマジマジと取り出されたアイテムを見ている。ミケは興味なさげに(俺の頭上で)欠伸をしているのが対照的だな。


 とにフレーバーテキストさんを見てみましょうかね。


 〇『アムリタ』

 アイテムランク:特級

 神が飲むとされる酒とも秘薬とも伝えられている。服用すれば肉体の負ったあらゆる傷を癒すのみならず万病を癒す。

 服用と同時にあらゆる病魔に対して抗体が出来るので、服用すれば二度と病に罹らない。

 その効果は肉体に限らず、通常の手段では手が出せない魂魄が負った傷さえも完全に癒す。

 人の手で作り出すことは可能だが、その製法も技術も完全に失伝している。作り出すにしても超希少な原料と完璧な製造方法に製薬技術を極めた職人が必要になるだろう。

 

「……エリクサーの強化版ってとこだな」


「凄い効果ですね。それに特級なんて聞いた事がありません。一級が一番上だと思っていました」


「俺もそう思ってたよ」


 最初に宝珠を見た時には腰を抜かし掛けたからな。そういやバタバタしてクレアに説明してなかったっけか? まぁ使っちまってもう無いし、黙っておこう。


 『暴君の宝冠』

 アイテムランク:【伝説級】

 保有資格者:志波蓮二

 六つあるとされる王の証。自分の領土に対して施行した法律を遵守し無かった者に対し、定められた罰則を自動的に与える。

 例え法を知らなかったとしても領土内に入った瞬間に警告が発せられるので、欺瞞は通用しないだろう。

 自分の領土内に入った全ての人間範疇生物に対して効果を発揮・適用する。

 但し、王の証が四つ以上なければ効果は発揮しない。


「‥‥…」


「‥…」


『……』


 俺とクレア、後ついでにミケが顔を見合わせる。何とも言えない気まずい沈黙が場を支配している。


 あるんだよな……俺持ってるんですけど? 王の証を四つ以上……。


「まぁ俺は領土なんて持ってないんで宝の持ち腐れでしかない。誰かを支配して喜ぶ趣味も無いしな」


「これは使いどころを間違えば独裁者を生み出します。取扱注意です」


 同感だな。間違っても性根の狂った奴には渡せないもんだよな? これは俺が永久封印しておこう。


「じゃあ次に行こうか」


「そうしましょう」


『にゃんっ!!』


 重くなった場の空気を変えるべく勤めて明るい俺の口調にクレアたちも同調した。使い道のないモンの議論ほど不毛なモンは無い。それ以前に俺は領土なんて持ち合わせちゃいないので意味が無いのだ。


 『賢王の王錫』

 アイテムランク:【伝説級】

 保有資格者:志波蓮二

 六つあるとされる王の証。王錫に触れる事で自分の領土の状態を常に把握できる。また王錫に触れている時は、領土内の地図を立体映像で映し出す事も可能。

 領土内の侵入者や侵略者は赤い光点で示され、分かり易いようにマーキングする事も可能。

 但し、王の証が四つ以上なければ効果は発揮しない。


 FPS系統の全体地図。神視点を所有者に与えるってとこかね? 防衛に関してはかなり有用なアイテムだな。

 領地を持った貴族とか支配者とかにとっては便利だろうな。戦争はもちろん、スパイとか丸わかりになる訳だし……どっちにしろ領土が無い俺には使いようが無いけどな。


「たぶん自分の所有権のある土地でも効果があるんだろうが、わざわざこんな御大層なモンを使う必要が無いよな?」


「私もそう思います。現在のレンジ様の自宅を警護するなら、アイリスの魔道具で事足ります」


 俺の意見にクレアも同調する。どうやら考えは同じらしい。


「領土が広大と聞きゃ凄く感じるが。広い土地ってのは管理が面倒だし、何より統治するのに大勢の人間の強力がいるからな」


「現状ではレンジ様と私にアイリスの三人、二人と一機しかいません。広大な土地を持っていても宝の持ち腐れになります」


 ため息混じりのクレアに俺も頷き同意を示した。クレアも俺と同じ考えのようだな。


 信頼できる人間がいないのに、広大な領地など邪魔にしかならない。眼の行き届かない所で腐敗や反乱の芽が育つのは何時の時代もお約束だ。

 

 俺がこの国……とまでいかなくても県なりを支配すれば有効かもしれん。だが俺にそんな野心なんぞない。


 王の証だの伝説級だの騒ごうが、無用の長物に過ぎない。


 後はユニーク武具の確認だけか……そこまで考えふと気づく。


「そういやアイリスは? まだむくれてんのか?」


 俺が武装を全壊させたせいか。ここ最近、アイリスのご機嫌はよろしくない。故にご機嫌取りも兼ねて褒美、というか許可を出したんだが……まだ拗ねてんのか?


 俺の部屋で検証をする予定を伝えていたが、未だに姿が見えないのはおかしい。アイツは検証や記録が大好きだからな。


 クレアはどことなく呆れた様な疲れたような複雑怪奇な顔で口を開く。


「レンジ様が『機械人』の量産許可を出されたので奇声を上げながら夢中になって作業してます」


「……」


 そう、俺はご機嫌取りも兼ねて『機械人』の量産を許可した。但し、渡した資材が尽きるまでという条件付きだが……。


「声とかは外に漏れてないよな?」


「地下書庫から通じる門は高度な幻術と私のスキルで隠してあるので問題ありません」


 その言葉に安どのため息を吐く。母さんには少しの間、この家でゆっくりして貰うつもりだ。バレたら要らん心労を掛けるからな。


「他はともかくこのユニーク武具はアイリスが好みそうだ。二度説明も面倒だし、地下で検証しようか?」


「ふふ、分かりました」


『にゃにゃんっ!!』


 俺たちは立ち上がると、自室のドアを開け地下書庫に向け足を進めた。

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