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第21話 世界の変換点

これが第一章最終話です。



 2053年7月07日。後世の歴史家たちは、この日を歴史の変換点となった日だと。口をそろえて発言する。


 突如として起こった。ダンジョンの出現とそれに伴い起こった【種族】と【ジョブ】の選択を皮切りとした世界各国の混乱。


 今後、確実に起きるであろう種族差別や凶悪犯罪者への対処。対内対外含めた外交から軍事戦略の練り直し。


 ダンジョンから入手できる。奇跡と言っていい程の希少なアイテムや、物資を巡る争い。


 そして、強力な『個』の出現による、各国のパワーバランスの崩壊。


 そう、これまでの国家の力関係は。国土の広さと人口。それに伴う軍事力で決定していたといっても過言ではない。


 無論。資源や技術も重要なファクターであることは、否定しない。


 しかし、【ダンジョン】・【種族】・【ジョブ】の出現により。その当たり前の常識は覆された。


 自国内にどれだけダンジョンを抱えているか。

またそのダンジョンが、どれだけ希少な資源を齎すのか。そして、ダンジョンを攻略できる人材をどれだけ効率的に育成できるか。


 大国といえども、今までの地位に胡坐をかけば。瞬く間にその座を追われ、後進国の後塵を拝することになる。


 しかし、逆にとらえれば小国でも栄光(チャンス)を手に入れることが出来る。そのような時代へと変貌した。


 「ダンジョンの攻略こそ覇権に繋がる」そのことに気づいた国家や巨大企業による。政策の転換や企業方針の変更による痛ましい犠牲。


 国家間の謀略や疑心暗鬼、嫉妬による人間関係の崩壊など。


 世界の大混乱はダンジョンによって起こされた。正確には、ダンジョンの出現に伴う。人間の欲望の加速によって起きた、と言えるだろう。


 しかし、それが本格的に起こるのは、まだまだ先のこと。


 地球の混乱はまだ始まってさえいない。そして、その事に誰も気づいていない。


◆◇◆◇


【??????????】


 光が生まれれば、影が生まれる。


 後に英雄と呼ばれる存在が現れた。悪と呼ばれ、歴史から葬り去られた存在も現れた。


 7月7日。後世で歴史の変換点。そう呼ばれる日に後の歴史において『悪』と呼ばれるモノ達が誕生した。


◆◇◆◇


【USNA】


 「ク、ヒャハハハハハハハハ!」


 「こういうのを待っていたんだ。この偽善に満ちた世界をぶっ壊せるようなチャンスをよ~!!」


 天に向かってその存在は獣のように吼えた。


 「この世界は偽りと綺麗ごとばかり。もう・・うんざりだ。今日の食事に困ってるガキどもがいれば。山みたいな食料を当然のように廃棄する国があるっ!!!」


 その存在の声には感情が含まれていない。いや、激情を押さえ込み冷静で有ろうとしているだけだ。今にも爆発しそうな憤怒の感情を。


 「親の保護下で50歳になっても、引き籠ってのうのうと生活してる奴もいれば、10歳にも届かない年齢で、過酷な環境に働きに出されて一日10ドル以下の賃金で酷使され、過労死するガキもいる。貧困国の最下層なんざ数ドルで春を売るガキ共で溢れていやがるっ!!!」


 そう叫んだあと、その男は拳を地面に叩きつけた。地面には小規模だが陥没が出来ている。人の力ではありえないことだ。


 男は深呼吸をすることで、自分を落ち着かせるよう努力した。だが、その感情を完全に抑えることは不可能だ。それだけその感情は大きい。・・・・そう感情の主にさえ制御できないほどに。


 「持ってる国や家に生まれた奴は勝ち組になり。待たざる国や家に生まれた奴は、殆んどが負け犬のような人生を送る羽目になる、惨めに・・・・な! 勝者は自分の利権が脅かされることを恐れ、弱者が這い上がろうと努力しても邪魔をするっ! それがこの世界のシステムだっ!!」


 その憤怒は一体、どこから生まれたのか? 時代? 体制? それは本人にさえわからないかもしれない。


「このダンジョンと【種族選択】で世界は変わるはずだ。良くも悪くも・・・・・な」


 男は狂ったように笑いながら、踊っている。その声は喜んでいるように聞こえるが、それでいてどこか悲しげな声だった。男の頬からはとめどなく涙が伝っている。


「この不条理な世界を・・・・・ぶっ壊してやるぜ!!!」


 天に向け、そう高らかに宣言した。それは誰に宣言した者なのか? 権力者? 富裕層? システム? それとも神? 或いはその全てに宣言したのかもしれない。


 その瞳には怒り以上の覚悟の炎が灯っている。彼が止まることは無い、自らの願いが実現されるその日までは。その願いを知るものは彼以外存在しない。

 

 


 そんな彼の周りには多くの子供の遺体。10歳に満たない、幼児と言っていい年齢の子供達のボロボロの遺体が横たわっていた。


 後世に【冥王】と謳われる存在が、この世界の支配者を恐怖に陥れる存在が、産声を上げた瞬間だった。


◆◇◆◇


【東西EU連合】


 「私のやるべき事は・・・・・・・為べき事は全て無くなってしまいました」


 そう言って俯く男は、途轍もない虚ろな瞳に深い闇を宿していた。目の陥没は、深淵を覗き見るかのような悍ましさ。


 「世界は変わるのでしょう? 如何なるかまでは知りませんが。しかし、私はもう何も・・・することがない」


 その覇気のなさは、人生の全てを一度に失ったが故の空虚さが満ちている。


 「コインを2回投げて、出た目で残りの人生を決めましょう。一回目は「生」か「死」か。2回目は「善」か「悪」か」


 そう言って男はコインをトスした。


 一度目の結果は「生」。そして、2回目の結果は・・・・・・


◆◇◆◇


【極東】


 「アハハハハハハハハハ。楽~しくなってきたね~!!」


 その女は狂ったように笑い転げた。着ていた服、超一流ブランドの服にシワが付くのもまるで気にしていない。


 「どれだけあっても満たされない。金も。地位も。名誉も。そ~んなもんじゃ満足できない」


 その感情の名は歓喜。


 「君ならこの選択。絶対に乗るに決まってるよね~。ね~。シレン君っ!」


 その女は暗い部屋の中で、狂ったように。歌うようにそう言葉を紡いだ。その瞳には見たものを虜にする妖艶さがあった。


ここまでお付き合い頂き、ありがとうございます。


これで、一章は終了となります。


第二章では戦闘は勿論。多くの登場人物が出てきます。


現在、三章まで一日一話のペースで予約投稿(約百話ほど)してあります。

引き続きお付き合いいただければ幸いです。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 見て気づいたけど、いろんな作品の台詞が混じっている、パクリは、いくない。 でも話は、面白いので頑張ってください。
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