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第20話 決着



 (残りのMPを全て使い切る。ここで決めなきゃ、これ以上戦い続ける余力は俺にはない!)  


 身体はボロボロ。いつ倒れても不思議じゃない。ここが勝負所だ! それにこれが最後の攻防になる。ケチる必要も無い!


 その為には残りのMPを全て注ぎ込む必要がある。


 とある仮説によって、俺はあることを思いつき。スキルの検証中に実行したことがある。


 魔法に対する発想は、かつてやり込んだクソゲー、通称『出魔枷』で悪名を轟かせる、VRMMOの黎明期に発売された失敗作が基になっているのは間違いない!!

 このゲームは、魔法に自由度を求めすぎたが故にクソゲーとなった曰く付きのゲーム。正確には『運営』にもっと寛容の心が有れば、ユーザーに慎み深さが有れば名作となり得たゲームだ。

 だが、それは今現在重要ではない。そのうち語る日が来るだろう!


 【叡智】に頼んで俺の脳内に直接。魔法の詠唱呪文と魔法名をインストールしてもらった時に、ふと思いついた。


 『自分のスキルレベル以上の魔法を発動することができないか?』と。


 これが実現できれば、今後かなり楽になるので。聞かずにはいられなかった!


 【叡智】の答えは「出来ない」だったが、俺はある仮説を立てそれを実行した。


 言い訳のようだが、システムの穴を見つけ、活用(悪用)するのは。ゲーマーに限らず、誰もがやることだろう! 恥じる必要性は一切無いはずだ!


 そして俺の答えは「出来ちゃった!!!」だった。出来るとは正直思わなかったので、マジでビックリした!


 しかし、いくつか問題があった。ひとつは体に途轍もない負担が掛かる。ふたつ目は消費MPが桁違いに大きくなるということ。みっつめは制御が難しく、下手すると自爆になること。


 (実際に余波に巻き込まれそうになったからな! 能天気に何の対策も講じなかった。あの時の自分を殴り飛ばしてやりたいぜ!)


 だが、今はその技術が必要なとき!


 (自分の力量以上のことをやろうってんだ。それなりに代償やリスクが伴うのは当然のことだ。 

 検証中にぶっ倒れかけたんで、出来るならもう使うまい、と決めてたのに。二日と経たずに翻そうなんてざまぁねぇやな!)


 使うにしてもこれには時間が必要だ。その間、奴の動きも制限する必要がある。


 (奴っこさんもギリギリのはず。そもそも敵が何かしようってのに、指を咥えて眺めてる義理もない! 先ずは時間を稼ぐ)


 (落雷を多重起動。それから濃霧で目晦まし。更に幻影で攪乱を実行する!)  


 一つの策を破ろうとも、二重三重に続く策で敵を攪乱為べく。

身体と精神に鞭を打ち魔法の発動の準備をする。


 その時は来た。


 詠唱が完了し、魔法が発動すると。オーガの頭上に小さな雷雲が現れ、小規模な落雷が降り注いだ。


 威力よりも手数を目的とした魔法は、オーガの足を止めることに成功する。更に雷には麻痺の追加効果もある。


 (オーガを倒すには到底至らんが。少量のダメージと動きを阻害させることに成功! では次だっ!!)


 雷が止んでもまだ終わらない! 身体中から黒煙を上げるオーガの周囲に前が見えなくなるほどの濃霧が纏わり付き。霧の周囲を無数の影が飛び回る。


 (実際のところ。濃霧がなけりゃただの影遊びだ。でもアイツもギリギリのはず、これ以上のダメージは警戒するはずだ。偽物と理解していようが、どうしても目が追ってしまうはず!)


 オーガが混乱している今こそ、千載一遇の好機。この隙に魔法を完成させる!


 (黒魔法第一位階・土壁と火炎で溶岩を創り出す。それに水球を合わせれば黒魔法第4位階・水蒸気爆発の完成だ! これをオーガの周辺に発動待機状態で設置してその後は。 

 ・・・・っち。やはり頭痛がしやがる。だがあと少しだ。このソル・ソードのもう一つの機能を使う準備・・・完了)


 自分のスキルレベル以上の魔法を発動しようとする代償。

それは頭が割れるような頭痛となって現れた。 痛みから意識が遠のきそうになるが、唇を噛み踏みとどまらせる。


 そして、オーガを中心に水蒸気爆発が発動する! 


 高熱の溶岩の中の気泡が、水によって急速に冷却される事によって生じる気泡の膨張と破裂により、小規模な爆発が連続して巻き起こる!


 爆発はオーガを中心に起こっているが、こちらも決して安全じゃない。爆発によってかなりの衝撃波が俺にも襲いかかる。


 本当は障壁でも張りたい所だが、その時間さえ惜しい。全身に叩きつけられる衝撃に構わず。

 複数の準備を同時に進行させ、俺は最後の攻勢に出るべく距離を詰めた。


 爆発の中心地にいたオーガは。腕は千切れる寸前、全身から夥しい出血をしている、まさに満身創痍といった様子であったが、目はまだ死んでいない。「相打ちになってでも俺を殺してやる!」って眼をしていやがる!


 (そうなると狙いはカウンター。一撃貰っても、こちら動きを止めて渾身の一撃を当てる気だな? この身体で直撃を貰ったら即死! だったら!!)


 縮地で一気に距離を詰め。急所である、心臓に向かって剣を突き出した。


 肉を抉り、急所を貫いた感触が手に伝わってきた。


 確かに刃は心臓を貫いたが、相手はまだ死んでいない。俺を道連れに出来るのが嬉しいのか? その顔は醜悪に歪み、眼は狂喜の光を放っている!


 全てを振り絞った一撃を打ち込むべく拳を引き絞っている。それに対し、こちらの動きは完全に止められた。


 拳が俺の体を捉え、衝撃で俺は吹き飛ばされて・・・



・・・・・・・・はいなかった。


 渾身の一撃を打ち込み。殺した筈の獲物が吹き飛びもせず、未だに生きていることにオーガは浮かべていた歓喜の笑みを一変させる! その変化した顔に張り付いている表情は驚愕!!


 「なんで死んでないのか不思議か? その秘密は盾スキル・石壁に体術系スキル・霞間。動けなくなる代わりに防御力を倍加するスキルと攻撃を受けた瞬間に打点をずらすことで威力を半減させるスキルさ。・・流石にこんだけスキルを重ねりゃ即死はしねーみたいだな。それと5・・・・・4・・・・・このカウントが何だかわかるか? 3・・・・・・・2・・・・・これはな・・1・・お前のくたばるまでの時間だよ。・・・0!!」


 言葉が通じるか知らんがここまで戦った仲だ! 俺の生存の理由を丁寧に教えてやる。それに、どの道これで最後だっ!!!


 カウント終了と同時に後方へと飛び退く。


 その言葉はハッタリじゃ無い!! カウントが終わったと同時に、剣が大爆発し内側からオーガを爆死させた。


 「ソル・ソードの効果の魔法剣威力強化。使えば一回で破損の使い捨てだが。勝利と引き換えなら安いもんだぜっ!!!」


 その代わりソル・ソードはスキルの代償として完全に破損してしまった。惜しいっちゃ惜しいが、命の代価としたら安いもんさ!


 黒魔法第4位階「大爆発」。その魔法をソル・ソードに込めてオーガの内部に突き刺し。魔法を発動させた。流石のオーガも内側からの大爆発には耐えられなかったようだ。


 さっきから頭痛が止まらない。半端なく痛いが、今は勝利の高揚のためか気にならない!


 疲れ果てた身体を地面に横たえ休息を取る。だらしないが今はこの余韻に浸ろう。


◆◇◆◇


〇チュートリアルダンジョン<はじまりの迷宮>が攻略されました。


〇これにより、箱庭名:【地球】のチュートリアルモードが解除されました。


〇各地のダンジョンの情報にアクセス開始・・・・・・・アクセス不可。


〇当初の計画通り。時間経過によりダンジョンを起動させます。


〇チュートリアルモード終了と同時にクエスト・シナリオシステムを開放します。


◯本日の午前0時に地球で種族とジョブの選定を開始します。選択期限は7日です。それまでに未選択だった場合は強制的に決定致します。


〇これよりダンジョン攻略の功績を讃え、攻略者に報酬を進呈します。


〇ランク4の魔玉を進呈します。


〇ソロ攻略報酬「悪鬼の狂面」を進呈します。


〇最速ダンジョン攻略報酬「改竄の指輪」を進呈します。


〇チュートリアルダンジョン攻略報酬「探索者装備一式」を進呈します。


〇ファーストダンジョン攻略報酬として【偽装機能付きアイテムボックス】の容量を500㎏に増加します。


〇通常報酬「トレジャーボックス」を進呈します。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 「くっくくくく。ハハハハハハハ。アーハハハハハ。これだよ、これ。この報酬をもらえる瞬間が最高なんだよな。このドキドキ感たまんねぇ~」


 死にかけといて、コイツ馬鹿じゃね? と思うかもしれないが、これはゲーマーの性だ! 誰に何と言われようが止められない!


〇これよりチュートリアルダンジョン<はじまりの迷宮>の迷宮区を封鎖します。


〇チュートリアルモード終了に伴い。固有ギフト「愚者の叡智」を回収します。


 (そう・・・か。・・・ここまで世話になったな。あんがとよ!)


 ここまで攻略できたのは。間違いなく【叡智】の知識おかげだ。俺は感謝を込めて感慨に耽っていた。


〇【愚者の叡智】へのリソース供給量の特典として固有スキル【智者の解析眼】を進呈します。


「・・・・・・・・俺の感慨に耽っていた時間を返せや」


 あまりの短い別れと再会に文句をブ~垂れる。


〇これより、固有ギフトは固有スキルと名称を変更し、所有者にとって最適な形へと変更します。


〇【無限の可能性】を【進化の系統樹】に変更します。


〇【多言語対応】を【万能言語対応】に変更します。


 「ん~んん!!」


 新たに齎された情報の重さに挙動がおかしくなる。


〇ダンジョン攻略に当たって、最大戦功獲得者を選定開始・・・・【志波蓮二】が選出されました。


 「んん~んんっん~!!」


 は? 最大戦功? 何それ? ちょっと待て!


 【志波蓮二】に〈【■■■】クレア〉を進呈します。

〈【■■■】クレア〉の全ジョブと記憶の消去を開始・・・完了。


 「????????????!!!!!!!!!」


 だ、だから待ってって!もう限界! お腹一杯だからっ!


〇【迷宮街ファーチェス】及び周辺のフィールドを開放の致します。


〇【迷宮街ファーチェス】は<はじまりの迷宮>の大広間より転移できます。詳しい概要はテキストを参照してください。


〇迷宮攻略の報酬に全ての傷を癒やします。


 身体が光に包まれたと思ったら。あれだけ痛かった全身の痛みが綺麗サッパリ無くなり、無数の傷や負傷も何事も無かったように消え去っていた!


〇迷宮区の閉鎖に伴い。大広間まで、強制転移を行います。


 「ちょ! ま、まった。じょ、情報とし、質問を!!」


 無駄だと思うが、このクソッタレなシステムについて質問しようとしたが。無情にも視界がブレると見たことのある風景に切り替わった。


 目を開けると、そこは大広間だった。


 ボスとの激闘を終え。勝利の余韻に浸る間もなく齎された情報の数々に・・・・思わずへたり込んでしまう。


 (お、終わったと思ったのに。じょ、情報が重すぎる!)


 俺は生まれたての子鹿のように、暫しの間。ぷるぷると震えていた。



 志波蓮二の波乱に満ちた冒険譚は、まだ始まってさえいない!

お読みいただきありがとうございます。

あと一話で一章は終了します。本日の朝六時に投稿致します。

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