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第198話 臨界者


 〇~ある二人の存在について~


 オーレリア大陸の歴史において転換点となった存在が三人居る。一人は二千年以上前、神代文明を創り上げた天才。出自・容姿、その全てが謎に包まれた【発明王】。


 あとの二人は現在よりも八百年ほど前。この大陸で半分を手中に治め絶対者として君臨していた二人の怪物たち。


 一人は【死皇帝】。死霊魔法に特化したトップジョブ【霊帝】を獲得した存在。


 一人は【機皇帝】。魔導機械の開発に特化したトップジョブ【機械王】を獲得した存在。


 このジョブを獲得した存在は永き歴史を振り返ればそれなりに存在する。ならばこの二人が何故圧倒的なまでに強かったのか? 


 歴史を振り返ればトップジョブを複数、最大で四つ獲得した猛者も百にも満たぬが存在する。もっとも現在は調整が掛かりトップジョブは最大でも三つまでしか付けない。更には同系統のトップジョブには一種しか就けない。


 だが二人はそういった猛者たちよりも強かった。‥…他にトップジョブを獲得していないのに‥…だ。


 普通ではあり得ないことだ。ジョブはスキルや奥義を除けば、各ジョブごとに上昇値はそれぞれ定められている。それは決して覆せないシステムの根本となっている調整さえ出来ない。


 通常ではトップジョブを得た者と、複数のトップジョブを得た者が戦闘すれば勝敗は後者の側に圧倒的に天秤が傾く。それは子供でもわかる簡単な計算式だ。


 無論、ステータスやスキルで勝敗の全てが決まる訳ではないが、大きく左右されるのは確かだろう。だが……彼らはそれを差し引いても余りにも強い……強すぎた。


 彼らが何故そこまで他と隔絶した実力があったのか? 彼らと同時期には複数のトップジョブ持ちや今は失伝しているトップジョブの保有者はそれなりにだが存在した。その中にあって、なぜ彼らだけが突き抜ける存在となったのか?


 それは彼等がトップジョブの上限値五百レベルに到達した『臨界者』だったがため。そうトップジョブには目指すべき到達点五百レベルという上限が存在する。


 この上限値に到達したモノは[削除済み]となり、他とは隔絶した力を得ることが出来る。


 ——ではどうして彼らが『臨界者』となる事が出来たのか? それは知的生命体の持つ逃れられぬ定め……人の人が生きていく上で必ず起こる争いの極点———すなわち戦争。彼等の存命当時は、魔物ではなく人と人との争いが絶えなかったが故に……。


 ある程度の戦歴を持つ者には既知の事だが、魔物を討伐するよりも人を殺した方がリソース——経験値の入手は大きい。理由は定かではないが知っている者は知っている。

 現在の都市間の法で理由なき殺人は重罪と定められている。だが当時はそのような法は存在せず、血を血で洗い流す、目を覆いたくなる所業は日常茶飯事だった。


 ——皮肉にも……戦争が彼らを『臨界者』へと押し上げ、到達させてしてしまったのだ。


 捕捉するならば魔物を討伐する事によって『臨界者』へと到達する事は可能だ。ただし【■■■】たちが創り上げたオーレリア大陸の不可侵領域『最上級ジョブ専用狩場』……現在では『禁足地』と呼ばれる狩場に篭り続けても十年単位でのレベリングが必要だろう。


 それほどまでにトップジョブにおける三百の壁。三百レベルを超えてからのレベリングは高いハードルが存在する。四百を超えれば、一レベル上げるのに器の上限——カンスト以上の経験値を必要とする。


 過去にトップジョブのレベル四百台まで到達したモノは【死皇帝】・【機皇帝】の二人を除いても、両手の指にさえ満たない。数千年の歴史を遡ってみても・……だ。


 才ある者の証明。トップジョブを得た者ならば永い歴史の中で相当数いた。だがその中で更に篩に掛けられ残った者が十にも満たない。現在オーレリア大陸でも四百に到達した者は一人しか存在しない。どれほど過酷で困難かは理解できるはずだ。


 この世界———魔物と鎬を削り無駄な摩耗を防ぐために戦争という手段を禁じられたオーレリア大陸において、今後『臨界者』が顕れる可能性は限りなく低いだろう。


 さて……随分と関係ない話しを語ってしまった事をこの場においてお詫びさせて頂く。何が言いたかったのかといえば。ある男が目的としているクエストの達成条件は、二体のユニークモンスターの内のどちらかを討伐する事・・・・・。


 そしてそのユニークモンスターは、先ほど語った『臨界者』の二人が創り上げたモノをベースとしている。


 それは……いや、時として因果は複雑に絡み合い、誰にも予想の付かぬ出来事を生み出す。詰まらない水を差すのは止めておこう。もし彼がそれを聞いたとしても、決して止まることは無いだろうから。


















 ◆


 〇<竜の巣48層>


 それは何時に誕生したのか? 両者が本当の意味で自我を得てから、数えるのも馬鹿らしいほどに繰り返された闘争。この戦いは必要がない。そんな事はとっくに理解しているはずだ。それなのにどうして両者は争いを止めないのか? それは両者にさえも分からない? まるで誰かの代理戦争でもしているのか? 本能が目の前の敵の存在を許すな、と訴えているのか。その闘争は数百年単位で今もなお続いている。


 ———だが、終わらない争いというモノは存在しない。幾ら両者の実力が拮抗していようと、やがて終わりを迎える時がやってくる。


 骸の龍と機械の残骸の決着は近い。今では伝説として語り継がれる【死皇帝】と【機皇帝】の雌雄を決した戦争の・・・・・・もう一つの終幕を意味する。


 両者の決着が着いた時、それは神話の誕生を意味する。両者が残した数々の伝説を超え、既存の伝説を超えた新たな神話が生み出される時は・・・・・近い。 

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