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第185話 『ロード・オブ・キャッスル』 


 〇<巨蟹コックピット>


「あら? クレアもう大丈夫何ですか?」


 布団から起き上がったクレアを見てアイリスが声を掛けたのはクレアの表情が優れないからだ。だが体調が悪いが故のものでない事は知っているのでさほど心配はしていない。


「レンジ様を騙すような真似をしてしまいました」


「騙してなどいませんよ? 私は『クレアは寝込んでいる』と伝えただけで、マスターが勘違いをなさっただけですよ?」


 クレアはジト目でアイリスを見つめるが、アイリスはさも心外ですと言わんばかりだ。


「勘違いなさったと知っていたら訂正するべきでしょ?」


「クレアの体調が悪かったのは事実です。それにクレアもマスターが自分をどう思っているのか知りたかったでしょう? 今のままだとクレアにとって良くないと私も思っていましたからね」


 先ほどのレンジの言葉を思い出したのか、クレアの頬が真っ赤になる。それを横目で見てアイリスは意地悪そうにニヤニヤとしている。


「『クレアに無理をさせる気は無い。ここでクレアを失うような事態になったら、俺は自分がどうなるかわからん』・・・・・女性なら愛した男性に一度は言われてみたいセリフですねぇ~」


 冒頭は先ほどレンジが言った愛の告白のような言葉だ。ご丁寧にレンジの声音を真似ているのが無駄に芸が細かいといえる。それを聞いたクレアは赤かった頬がさらに赤くなり、恥ずかしさに耐え切れなくなったのか両手で顔を覆ってしまう。


 だが顔を隠そうとする余り口元が嬉しそうなのは隠し損ねている。アイリスもやや大げさに伝えたが、クレアの体調が悪かったのは事実なのでそれ以上の追撃はしなかった。


 この一幕から分かるが、クレアは体調こそ悪かったが寝込まなくてならないほどではなかった。それを敢えて大げさに伝えたのはクレアのため。


 レンジが自分を追い込んでいるように、クレアも自分を追い込んでいるのをアイリスは察していた・・・・・このままではクレアが本当に倒れてしまうと危惧するほどまでに酷くなってきている事も。


 笑顔の仮面を張り付けたまま、アイリスは内心で嘆息する。


(クレアの根底にあるのはマスターへの愛情。マスターの役に立ちたいという想い・・・・・・ですが、自分がマスターの役に立っているのか不安なんでしょうね・・・・・だから過剰なほど自分を追い詰める)


 アイリスから色眼鏡なしに見てもクレアは十分役に立っている。レンジがクレアを認め頼りにしていることも明白だ。


 そもそも力のない者に同行を許すほどレンジの思考はお花畑ではない。だがクレアは必要以上に自分を追い込んでしまっていた。あの体調が悪くなるまで行っていた過剰な錬金術がその証左だ。それがクレアが倒れる前兆と考えたアイリスは一計を案じたのだ。


 即ち体調が悪くなったクレアを強引に休ませた後、レンジにはクレアが倒れたとやや大げさに伝えることでレンジの真意を聞き出そうとした。


(これもマスターが『愛してるぜクレア』。とでも伝えておかなかったからですね)


 レンジが正直な気持ちをクレアに伝えておけば、クレアはこれほどまでに自分を追い詰めなかった。


(マスターがクレアに好意を持っているのは端から見れば簡単に察せられるのですが‥…直接口から聞いたわけじゃないですし、クレアは不安なんでしょうね)


 アイリス的には『クレアはもう少し我儘になって、マスターに甘えてもいい』そう思っている。


 ——全ての元凶は、マスターがキチンとクレアに自分の気持ちを伝えないのが悪い。そう論じてレンジを悪者にする。


 通信越しだがレンジがこの件について反省しているのは声を聞けば簡単にわかる。騙すような真似をしたのは多少は申し訳なく思うが……。


(どうせ休ませるつもりだったので問題は無いです・・・・・・マスターの自業自得という事にしておきましょうか)


 にこやかに結論を下す。


 本来なら≪悪意感知≫や≪偽証感知≫を保有するレンジに虚偽は通用しない。だがアイリスは過去のデータから『機械人』などの虚偽報告は≪偽証感知≫を潜り抜けられることを知っていた(どういう理屈かまでは理解していないが・・・・・)。それ以前にクレアが寝込んでいるのは事実なので嘘は言っていない。進化直後と伝えた事も絡めレンジが勝手に勘違いしただけである。


 レンジがクレアを大切に思っているのは明らかだが、クレアとしては不安だったのだ。だがあの言葉を聞いてクレアも落ち着くはずだ。端から聞いていてもあれはプロポーズと勘違いされても仕方がないレベルの物だ。


(今も放心しているクレアがそれを証明していますね。マスターもこんなイイ女から愛されているのに襲わないとは・・・・・・・あっちの性癖をお持ちなのでしょうか?)


 地味にレンジにとって不名誉かつ失礼な考えを抱く。だが男色家は始原時代でも存在した記録があるため『趣味・嗜好は人それぞれですね』と邪な考えを思考から即座に排除した。


 レンジの名誉のために伝えれば、レンジは決して男色家ではない。クレアの想いに気付いていながら受け入れないのはクレアが嫌いとかいった感情からではない。今は母を助ける目的を達成する事を最優先にしているからであって、そのために全てを賭ける覚悟があるからだ。もし自分が死んだ場合、クレアに余計な負担を掛けたくないという想いもある。


 レンジとクレアが結ばれるかどうかは別にして・・・・・・それは少なくともクエストが終わってレンジが母を助けてからなのは確かだろう。



 ——閑話休題。

 


「それで・・・・・進化は無事に完了したんですか?」


 ようやく再始動したクレアに確認を取るが、これは話しの切っ掛け作り。クレアのにこやかな顔を見れば結果は分かり切っている。


「ええ・・・・・進化の影響なのか、体が怠いのが治って却って体調が良くなった感じがするわね」


「それは良かった・・・・・どんな種族を選択したんですか?」


 記録者として好奇心が旺盛なのか、そのように創られているのかは知らないが、未知の情報に興味津々といった様子で操縦を一旦停止して自動操縦モードに切り替えるとクレアの顔を覗き込む。


「ちょっとアイリス、ち、近いわよっ!? お、落ち着いてっ!」


 普段の小憎らしいほどまでに冷静な雰囲気とは違う、例えるなら餌を前にした腹ペコの猛獣のようなアイリスに、クレアは若干、かなり引き気味だ・・・・・。今も必死で近づく顔を両手で押しのけている。


「あら? 失礼・・・・・当機は未知の情報に目がないモノでして・・・・・」


「ちゃんと教えるから落ち着いてちょうだいね? 私が選択したのは『ロード・オブ・キャッスル』というA+の種族よ・・・・・・聞いたことはある?」


 その言葉に目の焦点がズレる。表情も仮初の人間味が薄れ機械のような能面に変わる。


「データベースを照会・・・・・・・・・不明です。少なくとも始原文明時代に出現した記録はありません」


「そうなの? 一度だけ過去に出現したことがあるとフレーバーテキストには記載されていたんだけど・・・・・・神代文明の、この世界で出現したかもしれないわね」


「聞いた感じですと戦闘系統ではない種族の様ですが・・・・・どんな能力や特性を持っているのですか?」


「説明するよりもステータスカードを見せた方が早いわね」


 そういってステータスウインドウを開くと拡大してアイリスに見せる。補足すればクレアは誰にでも見せる訳では無い。ここまで気軽に見せるのはレンジとアイリスだけ。クレアもジョブやスキルの重要性は十分すぎるほど理解しているのだ。


「・・・・・・・・・・・・」


 アイリスは絶句してカードを食い入るように見つめる。


 戦闘職ではないクレアのステータスはMP・DEXを除いて決して高くない。だがスキルや特性は途轍もないモノが有る。それも当然・・・・・種族ランクA+はレンジの『エヴォル・ネオグラトニアス』と同格だ。


 ステータスカードにはこのように記載されている。


 ◆


 Name:クレア

 種族:『ロード・オブ・キャッスル』・種族ランク:A+・0/100%

 MR:9

 JOB:【高位錬金術師】

 LV:100:合計500

 HP:2550

 MP:21300

 SP(体力):3575

 STR(筋力):700

 AGI(敏捷):700

 MAG(魔力):5350

 VIT(耐久力):777

 DEX(器用):5350

 LUC(幸運):4500


 〇アクティブスキル

・【黒魔法】・【広域結界LV:10】・【精霊魔法】・【神聖魔法】・【錬金術】・【両性魅了】・【モンスター・クリエイション】・【鑑定眼LV:10】・【看破LV:10】・【挑発】・【フォートレスカウンター】・【マナドレイン】・【乱数転移】・【エリアバーサク】・【付与魔法】・【シャドウバインド】・【召喚】・【召喚契約】・【地形操作LV:10】・【罠作製】・【キャッスルウォール】・【デコイ】・【ドッペルビースト】・【イリュージョン】・【モンスターキャノン】


 〇パッシブスキル 

・【索敵LV:MAX】・【回避LV:2】・【魔力操作LV:10】・【軍団指揮:LV10】・【並列起動LV:10】【結界強化LV:MAX】・【魔力解放】・【騎乗LV:10】・【全状態状態性LV:10】・【MP回復速度上昇LV:10】・【HP回復速度上昇LV:10】・【従魔強化LV:10】【城塞強化LV:10】・【フォートレスLV:10】・【従属強化LV:10】・【軍団掌握LV:10】・【詐術LV:10】・【偽証感知LV:10】・【調教LV:10】・【ショートチャージ】・【魅了強化】・【感覚同調】・【錬金の知識】・【経験値共有LV:10】・【審獣眼】・【分析】・【意思疎通】


 〇種族特性

・【浮遊移動】・【周辺地形操作】・【城塞改造】・【並列思考】・【城塞同化】・【物理耐性】・【魔法耐性】・【魔力分解】


 〇固有スキル

・【約束の二人】・【多言語対応】・【徴税権】


 HP:補正・——


 MP:補正・S


 SP(体力):補正・——


 STR(筋力):補正・——


 AGI(敏捷):補正・——


 MAG(魔力):補正・A


 VIT(耐久力):補正・——


 DEX(器用):補正・S


 LUC(幸運):補正・A 

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