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第95話 圧倒的戦力差


 レンジは徐に120mm電磁投射砲『武御雷(タケミカズチ)』を構えると。敵本陣の中心で人骨?を使った悪趣味な椅子に座り踏ん反り返っている『オークエンペラー』に狙いを付け、一拍も間を置かず引き金を引いた。


 膨大な電力が動力機関から銃身へと注ぎ込まれ、銃身から閃光が走る。電磁加速された弾丸は、皇帝を守ろうと咄嗟に動いた親衛隊の体を貫き。それでも勢いの衰えない弾丸は、皇帝の腕を吹き飛ばした。


 周囲のオークが驚愕の表情でフゴフゴと喚いている。電磁砲の射線上にいたオークが肉塊となっただけでなく、この場では最強のエンペラーの腕を吹き飛ばされたのだ。それも間に何体ものオークが肉盾となり威力が弱っているはずの弾丸で・・・・・・。直撃すればエンペラーさえも無事では済まない、その事に思い至ったのだ。


「オイオイ、その程度でビビってんじゃねぇよっ興覚めするだろうが。まだ今のは挨拶代わりに過ぎんぞっ? 喰らえや『メテオレイン』」


 以前に使用した『隕石落下』を改良した魔法を発動。『隕石落下』のような巨大隕石を落とすのではなく、拳大の隕石の塊を雨の如く降らせるスキルだ。インパクトではやや劣るが、細かい殲滅力ではこちらの方に軍配が上がるだろう。その効果は直ぐに現れた。


 皇帝の腕が吹き飛ばされたのを見て、慌てた『オークワイズマン』がすかさず回復魔法を施すが。回復効果が現れる前に、頭上に隕石の礫が豪雨のように降り注いだ。


「GYOO」「BUMOOOO」「BUUUUUUU」


 それを見た『オーク・コマンドチーフ』が号令をかけると『オークワイズマン』を筆頭にした魔法職が降り注ぐ隕石を結界で防ぐべく奮闘する。魔法職総出で結界を張り、半球状に張り巡らされた光の壁は小さな隕石雨に対抗しようとするが・・・・・・接触した瞬間に拮抗さえ出来ず、結界はボコボコの穴だらけとなる。


(ハッ、結界で防御したところで防げるかよっ、ダボがッ!! 上に気を取られてると下がお留守になるぜっ?)


 もはやオークの軍勢はレンジの策に嵌っている。『メテオレイン』は上に注意を引き付ける囮でしかないのだから。


 結界を破壊してなお、降り注ぐ隕石に気を取られていたオークは。足元から迫りくる絶望に気付くことは無い。もはや自分たちは獲物を狩る狩人では無く、一方的に狩られる弱者になり果てた事にまだ気づかない。


 最初その変化に気付いたのは、後方で指揮を執っていたコマンドチーフだった。コマンドチーフのスキル【配下強化LV:10】は自分の指揮下の部隊のHP・MPを除くステータスを50パーセント強化するという強力なものだ。当然、その部隊とはリンクしているため。部隊に所属する隊員が死ねば直ぐにわかる。


 自分の部下たちの反応がどんどん消えている。それに気づき対策を打とうとするが・・・・遅かった。地獄は、全てを貪り喰らう暴食地獄が顕現する。


 危険察知系のスキルを所持しているのか、難を逃れたのはオークの軍勢のほんの一部。五百匹にも満たなかった。後の四千匹のオークは食い殺された。一片の肉片さえも残らず、知らぬ間に足元に広がっていた闇から現れた無数の口。そこから伸びた下に絡め捕られ、鋭利な歯、いや牙に食い千切られ、齧られ、咀嚼され、最後は飲み込まれた。


 大木ほどある舌は自由に動き回り、未だに生きているオークたちを絡め捕っていく。オークも必死で抵抗するが、舌に触れた途端に抵抗は弱くなり、やがては牙で咀嚼されていく。


 この悪夢を産み出したのは当然ながらレンジだ。オリジナル暗黒魔法『暴食餓鬼界』地面を対象に闇の大穴を作り出し、その範囲内の敵を攻撃する。だが、この魔法には恐るべき追加効果がある。それは注ぎ込んだMPに比例して効果範囲が拡大。更に消費MPの十分の一の数値を参考に対象のVITを減少。更に闇の中に生み出された牙の攻撃力は消費MP十分の一の数値となる。


 今回注ぎ込まれたMPは五万。効果範囲は効果範囲2.5キロ。減少VITは五千。牙の攻撃力は五千となる。食い殺されたオークの防御力はスキルと装備込みでも三千弱。飲み込まれたオークが成す術も無く蹂躙されるのは当然かもしれない。


(この魔法の恐ろしさは牙よりも、相手を絡め捕る舌にこそある。どうだね? 自分たちが強者から弱者になり下がった気分は? 高みで踏ん反り返って調子づいてるからそうなるんだよ! まぁ俺も自分より強い奴が出てきたら弱者になるんだ! その事だけは忘れないようにしないとな)


 悪意ある笑みを浮かべながらそう心中で呟く。この世界に限らず、栄枯盛衰と無縁なものは存在しない。生物・商品・組織であろうとも、コレ(栄枯盛衰)と無縁でいられる存在は皆無といっても過言じゃない。生物はどれだけ隆盛を誇ろうが、より強い存在に睨まれたり、環境に適応出来なければ滅ぶ、恐竜がいい例だろう。商品は流行やブームが過ぎればどれだけ高性能であっても見向きもされなくなる。組織もより強い組織の台頭。内部抗争など崩壊する原因は幾らでもある。この緊急事態にシェルターにさえ入らず、家の防衛設備を過信して壊滅状態に陥った倖月家がいい例だろう。


 当然ながら偉そうに言っているレンジもそれは弁えている。


 レンジとて自分が利己的な人間で他者から疎まれやすいことは理解している(だからといって自分を改める気は無いが)。だからこそ強者の都合で、弱者は容易く排除されることを決して忘れてはいない。レンジは確かに強いが、所詮社会的には何の権限も持っていない一般人に過ぎない。国家がその気になれば、物理的ならば兎も角、社会的に自分を排除する事など簡単に出来る事を常に忘れてない。


 自分だけなら異世界に逃げられる。だが、治療の目途さえ立っていない母を異世界に連れて行くのはリスクが高い。 なので、今回のクエストにも顔を隠し、コスプレ紛いの格好をして介入しているのだ。顔がバレれば政府や軍は必ず自分の身元を割り出し、身柄を拘束する。そして、いかなる手段を用いても自分たちの管理下に置こうと画策することが理解できているからだ。


 レンジにとってソレは到底受け入れられないことだった。

 

 

 先ほどレンジが心中でチラッと漏らしたが。この魔法で真に恐ろしいのは相手を噛み砕く牙ではなく、舌だ。まず、舌に触れた瞬間に『呪縛』のデバブが付与される。絡め捕られると『拘束』により身動きが取れなくなり『衰弱』により全ステータスが半減する。


 レンジがMPを注ぎ込めば注ぎ込むほど極悪な性能になる悪夢の魔法。最もオリジナルなので、レンジ以外に使用するのが困難なのがせめてもの救い・・なのかもしれない。


 生き残ったオークも成す術なく食い殺されていく同胞から目が逸らせないのか、呆然自失しているようだ。だがレンジにはオークに付き合う義理など無い。


(フン、こういった時こそ上に立つ者の器量が問われるんだが・・・・・他のブタと一緒に棒立ちしてるようじゃ器が知れるぜ、皇帝さんよっ)


 眷属が成す術なく食い殺されていくのを見ているだけのエンペラーを小馬鹿にするように笑い、掃討の準備を始める。


 確かに窮地こそトップの資質が問われる。レンジが言ってることは間違っていないが、この状況はレンジが作り出したモノだ。オークたちが今の言葉を聞いたら「お前が言うなっっ!」とツッコムこと間違いなしだ。


 レンジは飛翔すると超高熱火炎放射器『獄炎鳳翼(フェニックス)』を真下に向けオークに、一瞬で精鋭の大半を失い茫然自失となったオークたちに向け引き金を引いた。


 砲口から極太の炎、いや熱線が発射されその光を浴びたオークは装備諸共消し炭となる。途切れる事のない熱線は、容赦なく生き残ったオークに降り注ぎ。黒炭の塊を作り出していく。


 盾を構え防ごうとする者、水魔法や結界を展開する者もいたが。熱線を防げない。盾も、魔法も5秒と耐えられずに熔解する。さもありなんこの熱線の温度は一万度に達している。仮に炎熱耐性を付与した盾や鎧を装備していたとしても、輻射熱によって肉体を容赦なく焼き尽くす。


 超高熱火炎放射器『獄炎鳳翼(フェニックス)』その字のごとく高熱の炎を噴射する火炎放射器だ。この兵器の機能はたった二つ。炎を放射状に噴射する通常(ノーマル)モードと炎を圧縮して純粋な高熱を発射する熱線(ブラスター)モードの二つのみ。


 シンプルだが複雑なギミックを搭載していない分、それに特化した威力は目を見張るものがある。森などの燃え易いモノがある所では火災が心配なので使いづらいが、そういった場所では使わなければいいだけだ。


 上空より大地を舐めるように移動する炎は地上のオークたちを問答無用で殲滅していく。オークたちもこのままでは全滅するのは理解している為、必死で弓矢魔法でを撃ち落とそうとしているが、空竜を高速で移動するレンジを捉えることが出来ずに一方的に蹂躙されていく。


 抵抗を止め生き延びんと炎から必死に逃げ惑うその姿からは東京を破壊して、蹂躙して、そこに住む人間を虐殺した少し前の喜悦を含んだ表情は一切なく。『俺たちはこんな目に遭ってるんだ?』といった、恐怖だけがあった。


 同胞が蹂躙されて黒炭の塊になってから消滅していく光景に心が折れたのか、やがて逃げることさえ止めて地べたにへたり込んでしまう。レンジには同情する理由も攻撃を躊躇う理由も無い。300匹ほどの集団に向かって砲口を向けると容赦なく引き金を引く。


 真紅の炎が集団の中心部に降り注ぎ、炎が治まった時には300匹のオーク大の黒炭が残っていたが、直ぐに光の塵となって消滅した。


 だがこれで終わりではない、このクエストの達成はオークの軍勢を滅ぼすことではない。『オークエンペラー』を討伐する事なのだから。


 残っているのはオークはたった三匹。『オークエンペラー(豚皇帝)』『オーク・クイーン(豚女王)』『オークコマンドチーフ(豚総司令官)』の三匹のみ。


 オークの死骸は全て消滅し、光の塵となったことで。周囲に存在するのは瓦礫の山だけだ。

この2日間で大都市東京は甚大な被害を受けた。住民の被害は恐ら3万人以下だろうが、インフラの破壊に建築物の倒壊など合わせれば、経済的な損失は軽く10兆円を超えているはずだ。


 そして生き残ったオークたち。生き残ったのは偶然ではない、レンジは敢えてこの3匹を残しておいた。この豚の軍勢は所詮『運営』のパシリに過ぎないが、この悲劇を起こした張本豚でもある。その落とし前はきっちりと付けさせて貰うために。


 レンジも自分にその資格は無いことは理解していた。だが自己満足や偽善と言われようが、これはレンジなりのケジメのつけ方だった。


 ◆


(俺はこの悲劇に嘆く資格も怒る資格も無い・・・・だが後始末だけはつけさせて貰うぜ)



 この惨劇は、ある意味でレンジの予定通りだ。悲劇を起こすことで国民に危機感を持って貰う。そのため早期に介入せずに悲劇が起こり事を知りながら、知らぬ存ぜぬを決め込んだ。


 もとより神ならざるレンジに全てを掴む力がある筈も無し。そんなことは当たり前だとしても、その一言で自身の感情にケリを付け、残ったオークの首魁たちに殺意を込めて睨みつける。


 レンジの視線に気付いたオークたちも戦意を滾らせてコチラを睨んでくる。その目は眷属を殺された怒りと憎悪に満ち「お前に一矢報いてやる、刺し違えてでも殺してやるっ」と確かな覚悟を宿しているように見える。そしてオークたちの高まる戦意に気が付いたレンジも闘志を昂らせる。


「上等だぁっ」


 他の兵装をしまい込むと新たに『百腕之魔神』(ヘカトンケイル)を取り出し、上段に構える。レンジの構えに対応するようにエンペラーが大剣、クイーンは長杖、コマンドチーフは槍と、それぞれの獲物を取り出し構える。


 3日間に及ぶクエスト『豚皇帝の大暴走』。その最後の戦闘の火蓋が切って落とされた。


 先手はクイーンが取った。杖に魔力が集まると、レンジの周囲に魔法陣が浮かび地面が陥没していく。


(体が急に重くなった上に、手足の自由が利かなくなる・・・・・か。恐らくは呪術『呪圧傀儡』だろう、バカがッ)


 スキル『呪詛移し』で対象をコマンドチーフに変更。クイーンの放った呪術は対象をレンジからコマンドチーフに変更された事により、コマンドチーフは急速に苦しみ出す。


 レンジよりも呪術耐性の低いコマンドチーフは『呪圧傀儡』に耐え切れず。大地に平伏し、糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちた。ッその様子を見てクイーンは慌てて魔法をキャンセルするが、状態異常までは治せない。急いで解呪するべく動き出すが、すでに遅い。『百腕之魔神』《ヘカトンケイル》を魔力式散弾モードに切り替え、クイーンに向けて連続して引き金を引く。


 『百腕之魔神』《ヘカトンケイル》の砲口から豆粒ほどの塊が無数に飛び出した。だがその一発一発の威力は決して高くないが、直撃を喰らえば無視できるほど弱弱しい威力ではない。


 散弾モードは一度に五十発以上の弾丸を発射する強力な代物だ。クイーンは解呪を中断すると結界を張り散弾を防ごうとするが・・・・・・・甘い。散弾は結界を貫く事は出来ないが、それでもその場に釘付けにするくらいの威力はある。つまり結界を維持している内はその場から動けない訳だ。


 『百腕之魔神』《ヘカトンケイル》の引き金を引いた状態で空いた手で48式連発杭打砲『超連撃杭打砲(ガトリングパイル)を取り出すとすぐさま装備。結界を展開しているクイーンに狙いを付けると発射ボタンを握り込む。


 六本装填された杭が一本ずつ回転しながら引き絞られていく。この兵装は硬度や耐久の高い敵を想定して開発された物らしく、射程が短く燃費が悪いことを引き換えにした超攻撃力が自慢の一品だ。


 六本の杭が全て引き絞られたと同時に縮地で一気に展開された結界前まで距離を詰めると、もう一度発射ボタンを握り込んだ。限界まで引き絞られた杭が高速回転しながらクイーンに迫る。


 クイーンは自分の結界に絶対の自信を持っているらしく、迫りくる杭を嘲りを含んだ余裕の表情で眺めているが、その自信と油断が命取りとなった。


 最初の一撃で結界を破壊し、間をおかずに放たれた2撃目がクイーンの身体を抉り取るように貫いた。それでも杖を掲げて何やら魔法を放とうとしたクイーンに黒魔法『爆裂』でクイーンの身体を内側から木っ端みじんに吹き飛ばした。


 この『爆裂』は相手の内部に干渉し、圧を加えることで生物の身体を内側から弾けさせる残酷な魔法だ。燃料などを使用した機械に使えばこれまた内側から弾け飛ぶ極めて応用の利く魔法だ。無論かなりのレベル差が無いと成功しないが、クイーンはもはや死ぬ寸前だったので簡単に効果を発揮したようだ。


 クイーンは最後の抵抗さえ出来ず、上半身と下半身が真っ二つになった状態で大地に倒れ伏したが、他のオークと同様に直ぐに光の塵となった。


 その様子を見て恐慌状態になったエンペラーが斬りかかってくる。48式連発杭打砲『超連撃杭打砲(ガトリングパイル)を収納し、『百腕之魔神』《ヘカトンケイル》で負けじと斬り結ぶ。


 しかし相当な業物のように見えるエンペラーの大剣は、ヒヒイロカネを用いたブレード『加具土命』と斬り結んだ瞬間に根元から断ち切れてしまう。さもありなん、この大剣の原料はアダマンタイト。ヒヒイロカネの方が硬度は遥かに高い上に、仕込んだギミックの超振動効果により。触れた瞬間に全てを断ち切る圧倒的な切断力を誇っている。アダマンタイトは強固な金属だが、せめて同ランクの金属でも持ってこない限りは勝負にさえならない。これがヒヒイロカネの大剣であれば、斬り結ぶくらいは出来ただろう。


 鍔迫り合いに競り負け、尻餅をついたエンペラーの手足に散弾を打ち込み無力化する。そして未だ状態異常から復帰していない総司令官の頭部に狙いを定め、炸裂弾を撃ち込む。


 発射された弾丸は寸分の狂いもなく頭部に向かう。流れる様に着弾と同時に爆炎を巻き上げ、総司令官の頭部だけでなく、全身を吹き飛ばした。


 ・・・・・・・・・・・残すはエンペラーあと一匹。


「『グランドクロス』『ダーククルセイド』」


 スキル名を唱えると、神聖な光の奔流と漆黒の闇の奔流が地面より湧き出て十字架の形を成す。


「BUGYAAAAAAAAAAAAAAAAUOOOOO!!」


 エンペラーも最後の意地を見せたいのか、両足をジタバタと動かして光と闇の奔流から逃れようとする・・・・・・・・・・・だが既に銃弾によって砕けた両手足では限界があった。


「BUMO、BUMOOO」


 動きは徐々に弱くなり、抵抗する気力さえ無くしたのか声さえも小さくなっていく。


 これぞ【暗黒騎士】と【聖騎士】のカンスト時に修得したスキル。一瞬で発動でき高威力を誇る奥義スキルだ。再使用までに一定のクールタイムがある以外は特に弱点は無い優等生スキルだ。


(あんまり使わないスキルの検証も、今回の連続クエストで可能だろう。今の俺の魔力ならかなりの威力が出せるようだ)


 やる事が多すぎるためにスキル、魔法の検証。特性の把握など、余りにも検証することが多すぎるために後手後手に回ってきた。だがこれを良い機会ととらえて、この後のクエストの方針を組み立てていく。


「BUMOOOOOOOOOO!」


 最後に天に向かって断末魔の咆哮を上げると、力尽きたように倒れ込んだ。あれほどの威容と巨体を誇った皇帝は、絶対の自信を持って率いていた軍勢を蹂躙、全滅させられ。側近を嬲り殺され、最後はまともに興味さえ向けられず光の塵となる惨めな最期を迎えることになった。


 レンジはその憐れな姿を冷え切った目で見つめていた。オークたちは所詮運営共の用意したパシリ、使い棄ての道具に過ぎない。だが都民を虐殺したのはオークエンペラーを筆頭としたオークたちの選択だ。・・・・・・・・・・同情する余地は無い。


『オークエンペラーの討伐を確認しました。それによりクエスト【豚皇帝の大暴走】の勝利条件を達成しました』


(フン、やはりアナウンスがあったか。さて、どんな報酬が貰えるのかね? この後にまだやるべきことがある、さっさと進めて欲しいもんだ)


 このクエストはレンジにとってあくまで前座に過ぎない。本命はこの後に行うパフォーマンスなのだから。アイリスの能力は信用しているので準備に抜かりは無いだろうが、それでも余裕をもって挑みたいのだ。


 レンジは地上に降り立つと、腕を組み次のアナウンスをじっと待つ。


『それではこれより報酬を進呈します』


 その報酬はレンジが予想もつかない程にぶっ飛んだ代物だった。  

お読みいただきありがとうございます。

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