暁の翼
「この少女がですか・・・?」
村長が信じられないようにミルドに尋ねた。
「・・・ああ」
ミルドも険しい顔で頷いた。
「・・・貴方がた、『暁の翼』は誠実な事で有名ですので信じましょう。ですが、どの様に倒したのですか?」
村長が俺に尋ねてきた。
「魔法です」
俺は素直に答えた。すると、村長は驚いた顔をした。どうしたんだろう?
「魔法ですか!?」
「?はい」
どうしてそんな驚くのか疑問に思っていると、ミルドが頭を掻きながら教えてくれた。
「あ〜、嬢ちゃんは魔法の才能があるから知ら無いかもしれないが、普通は嬢ちゃんの年であそこまで魔法が使えるのは異常なんだよ」
あ〜納得。ってええ!?
「異常なんですか?」
俺は思わず尋ね返した。すると、ミルドだけじゃなくロリンコとチャラリーオ、村長までもが頷いた。
「・・・内緒にしていてください」
俺がそう言うと、みんなはコクリと頷き、約束してくれた。
「はぁ、もう少しでバレるとかだったよ」
夜、俺はミルド達の泊まっている宿に居た。ミルド達が泊めてくれたのだ。
「取り敢えずハーム村まで来たけど、この後どうしようかなぁ」
俺はベッドに横になって、今後のことを考えていたがいつのまにか寝てしまっていた。
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side暁の翼
宿の近くにある酒場に暁の翼の三人の姿があった。
「しかし、フィールは何者なんだろうな〜」
チャラリーオが椅子を傾けながら呟いた。
「それは天使でしょう?」
ロリンコがその呟きに反応して答えた。それを聞いたチャラリーオはロリンコを呆れた目で見て、「そう思うのはお前だけだよ」
と返した。
「天使か・・・」
ミルドがそう呟くとチャラリーオはガタンッと椅子から転げ落ちた。
「おいおいおいおい!ミルド!お前も目覚めたのか!?」
「おぉ、ミルドさんも気付きましたか幼女の素晴らしさに!」
「お前の性癖は知らねぇよ!」
「なんですと!?私のは性癖ではなく美を愛する心です!胸などという無駄な贅肉が好きな奇特な貴方に言われたくありません!」
「お前には言われたくねぇよ!」
いつもの通りロリンコとチャラリーオ喧嘩を始めたのを見ながらミルドはエールを一口グビリと飲むと、口を挟んだ。
「いや、俺が言いたいのはそういう意味じゃない」
「あ?だったら何なんだよ」
ロリンコの頰を引っ張りながらチャラリーオがミルドに尋ねた。頰についた引っ掻き傷がなぜか笑いを誘う。
しかし表情を変えることなくミルドは続けた。
「あの歳にしてあの桁外れの魔法と魔力。そして本来聖職者しか使用できない治癒魔法。それに何より、あの整った顔立ち・・・昔聞いた昔話に出てきた天使に似ていると思ったのだ」
その言葉を聞くと、未だに掴みあっていたロリンコとチャラリーオは互いの手を離して席に戻った。
「・・・確かに不思議な子だったな」
「ええ、私の感が囁いているのです」
「どんな風に?」
「彼女はただの幼女ではない!と」
「いや俺もわかってるから、あんなすごい魔法見せつけられてるし」
「まぁ確かにそうですね」
「・・・欲しいな」
「おや?貴方も此方ら側に?」
「違ぇえよ!?俺が言ったのは仲間としてだよ!」
「・・・そうですか」
「おい待て、何で悲しそうにしてるんだよ!」
「貴方のような残念な方も幼女なら癒してくれますよ」
「残念なのはお前だわ!幼女なんかに靡くかよ!」
「幼女なんか……ですって?」
「あ?やるか?」
「ええ、やりましょう」
流れる様に再び喧嘩を始めた2人を見てミルドは片手でジョッキを持ちながらボソリと呟いた。
「お前ら、相変わらず仲良いな」
「「何処が(ですか)!?」」
冒険者たちの宴は夜が更けてもまだ続く……。
お待たせしましたか?