かしら~中!新人自衛官物語 第3状況
ついに自衛隊の門を叩いた信。彼が配属された武海駐屯地とは・・・・。
第3状況 いざ、自衛隊へ
座門にある信の自宅。ジリリリリ、電話が鳴る。「はい、鈴本です」信は受話器を取った。「自衛隊相模野事務所の大川です。」電話の相手は大川だった。「信くん、結果だけど・・・・」大川の言葉に息をのむ信。「曹候補士、曹学はダメだったけど・・おめでとう、2等陸士合格だよ!」信は全て駄目だと思っていたが、2等陸士だけでも合格と聞き驚いた「有り難うございます。」信はそれしか言えなかった。「詳しい事は書類が郵送されてくるから、それ読んで準備よろしくね。入隊までまだあるけど身体壊さないように気をつけて。」そう言い大川は電話を切った。信は家族に合格したことを伝えたが特に反対等はなく入隊することに決めた。「まずは高校を卒業しないと・・・。」信はお世辞にも成績が良いとは言えない、高校もぎりぎり合格したし、なんとか留年せず3年生までなれたが、進級会議にはかならず名前が挙がったほどで、補修やレポート提出などでなんとか進級できていた程だった。「でも、就職決まってればだいじょうぶだよね、公務員だし、まさかダブリってことはもうないだろう・・・」信の思惑通り、無事高校を卒業できた。また、友人の浩之も海上自衛隊の2等海士に合格していて、共に高校を卒業した。
1998年3月27日、信の入隊日。信は緊張と不安もあり一睡も出来なかった。朝6時30分頃、地方連絡部の広報官、大川が迎えにくる手はずとなっていた。ピンポーン!時間きっかりに大川が来た。玄関にくる信、そして家族の姿も「では、お子さんをお預かりいたします。」大川は深々と頭を下げた。「んじゃ、行ってくる。」信は玄関で家族にそう言って大川と共に家を出る。家の前には広報用のバンが止まっている。乗り込む信。「しばらく自由ともオサラバか・・・。」そんな事を思っていると、バンが動き出した。行き先は神奈川県縦須賀市にある武海駐屯地。信が約3ヶ月間教育を受ける駐屯地だ。
神奈川県縦須賀市、武海駐屯地。
そこは半島となっている縦須賀市の海岸線沿いにある駐屯地で、主な駐屯部隊は東部方面隊隷下の第7教育団であり、それぞれ第233教育大隊、第127教育大隊、第231教育大隊があり、まさに陸上自衛隊における教育専門の駐屯地と言っても過言ではない。さらに中学を卒業して16歳から入校し陸上自衛官としての教育を受ける、防衛庁直轄の少年術科学校、さらには海上自衛隊縦須賀教育隊、航空自衛隊武海分屯基地が同居しているマンモス駐屯地である。231教育大隊は曹候補士および曹学の教育を担当しており、信のような新隊員課程(2等陸士)は233,127教育大隊で行われていた。信はその233教育大隊に配置されることになっていた。
広報用のバンが武海駐屯地の門を入る。しばらく走ると233教育大隊という看板が立てられた建物の前で止まった。信と大川が車を降りる。「僕はここまでだ、あとは現場の指示に従って。これからが大変だけど信君なら大丈夫、頑張ってね」大川は手を差し出した。「有り難うございます、お世話になりました。」信と大川は握手をし、別れた。大川の広報車を見送ったあと、信は受付に行く「233教育大隊配属予定の鈴本信です。」受付にいる制服姿の係員にそう告げる。「んーと鈴本君・・・、ああ、233の300共通教育中隊だね、じゃ、あちらの方に行ってください。」係員が指した方向に300共通教育中隊と書いたプラカードを持った係員がいる。その回りにはすでに何人か集まっているようだ。信は合流すると到着の旨を伝えた。「えっと、鈴本信君。」係員はバインダーに挟んだ名簿をチェックする。「ああ、これで全員揃ったね、じゃ、今から入隊時身体検査と入隊手続きを行いますので、私に付いてきてください。」係員の後について信たちは歩きはじめた。
第4状況に続きます
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