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世界の成り立ち

作者: 木芽月

昔、混沌としていた世界が動き始め、軽いものは天へ、重いものは地へとなっていった。

その撹拌された世界は、徐々に捻れ二つの乳房が向かい合っているような形となった。


天と地はお互いを見ることはできても交わることはできない。捻れの中心は固く玉になっており、お互いが完結していた。



ある日、驚くべきことに軽い地人の男と重い天人の女が生まれた。

二人は生まれた場に留まることができず、捻れた玉の手前にいるしかなかった。

近くで生きているものがお互いしかいない中、二人はそう決まっていたかのように愛し合うようになった。

しかし、生きる世界が違う者、声を聞くことすらできない。



いつしか二人は捻れを直そうと思うようになった。二つの世界がまた竹の一節のように繋がれば、手を取り合い抱き合うことができる。



しかし捻れを直す方法など分かるはずもなく、苛立ちが募った二人の意識は、目の前の玉に向いた。これさえ破壊すればいいのだ。


世界の膜が破れどうなるかなんぞ知ったことではない。


ただ一度だけ、愛する者に触れてみたい。



その日、二人は遂に玉を破壊する決心をした。世界の膜が捻れ玉になった部分に静かに爪をかけ、思いきり引っ張った。

手から血が流れ出したが不思議と痛くはなく、これを乗り越えれば会えるのだという思いで一心不乱に引っ張っていると、案外簡単に玉は千切れた。



その瞬間、二つの世界の悲鳴が響き渡った。


二人は喜びに満ちた顔でお互いの手を掴んだ。



しかし、元々二人は軽い地人と重い天人であった。


束の間手を合わせることができた後、地人の男は天へ、天人の女は地へ行ってしまう自分の体を止めることができなかった。



その間にも、世界は花が開くように膜を開いていき、地はどこまでも続くように感じる程広大になった。天はその場所を地と触れるほどに広げた。



重い地人の女と軽い天人の男は、もう会って触れ合うことは出来なかった。

しかし、ただ一度触れた手を開くとそこには、小さな小さな天人でも地人でもない、「人」がいた。二人はお互いの手から生まれた「人」を、母のいる地で生かすことにした。

ただし、「人」が望み、力をつけたならば父のいる天へ来ることも許した。


元からいた天人達は「人」にとっての神となり、地人達は精霊となった。


これが、我らの生きる世界の成り立ちだ。

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