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最終話

 ザンジは父と同じく自分自身を死人化させていた。


肺を使って発声するのと念話では違和感があり、死人をかつて見慣れていたトレーネにはすぐわかった。

メッサーは気付かなかったようだが……。


「ごめんね」

「いいよ、がんばったんでしょ?」

「ははっ……死んじゃうくらいね」

「……」


「そ、それにしてもソロモンの爺さんはよくあの石棺が大事だなってわかったな!?」

「ああ、それなら簡単な事だ。

 我らが『迷宮』の意思に意識まで完全に掌握されるまで少し時間があって、その間考察出来た」

「騎士から命令されたのは墓の掃除と花摘みだったのだ」


 ダイテツがソロモンの言葉を引き継いだ。


「花摘み?」

「そうだ、中央の石棺でも無く、ごく普通の造りの物に毎日花を供えるよう言われたのだ。

 特に私は湿地の浮島などは水面を行かねばならぬので、よく使いに出された。

最初なぜか理解出来なかったが、私もトレーネ嬢に試しに供えてみると理解出来た。

相手を慈しむ心なのだと。

するとそこには、大事な相手がいるという事がわかるわけだ。

ちなみに私がトレーネ嬢を……」

「おおーっと、メッサー!

 それより中央の棺を開けみよう!

きっと良い物があるのではないか?」

「おっ……そ、そうだな!」

「なぜか邪魔された気がする……」


 中央の棺の中には山積みの宝があった。

まさに金銀財宝という奴だ。


「うわっ!すごい!!」

「どれどれ、これはすごいな」

「……ちょっと待て」


 しかし、小さい石板を拾い上げて目を通していたソロモンが顔色を変えて言った。


「ソロモンの爺さん、それ読めるの?」

「ああ、言ってなかったが、ソロモンはこの迷宮が作られたのと同じ時代の人間だ」

「ええっ!?」

「末期であったが、確かにそうだ」

「ザンジ殿がソロモンの声を聞こえるようになったのも、死人になって意味が通じるようになったからでしょうな」

「父さんは?」

「先代は古代語が少し出来ました」

「そうだったのか……

 しかし、よくそんなに長い……」


「ふふっ、生き別れた妹を探しているのですよ」

「えっ?」

「こいつ頭おかしいでしょ?」

「生まれ変わりの妹を一目見たら私はわかるはず!!

 そして、その妹のために目の前で命を投げ打って滅ぶのが我が望み!

妹はその瞬間私を……」


「ところでソロモン、何か大事な物とかがあったって事なの?」

「えっ?

 ああ、ここはどうやら王族の墓らしい。

 この目録によるとだな……。

『反魂の玉』と言うものが一番価値がある」

「それって?」

「一人生き返る」

「えっ!?」


 周りの皆がざわついた。


「拙者は死人のままで結構」

「私も妹があと何年後に生まれ変わるかわからんので要らんな」

「えっ、なんかすごい事言ってるみたいですけど、若様を生き返らせて下さいよ!!」

「いやいや、そういう物があるって事を知ったのはうれしい。

 でも旦那が先でしょ、少なくても今回は」


「えっ?

 じゃあトレーネを!」

「ザンジを!」

「「……」」


 二人はお互い譲り合って決まらない。


「んーでも、なんでそんな道具があるなら騎士は主君の姫様に使わなかったんだろ?」

「石碑に書かれている文面によると、病気で死んだ姫様が元々体の弱い自分に使わずに、もっと役に立つような人間を生き返らせるように願ったとある。

 そして、騎士も姫様以外には使いたくなくて、結局墓に一緒に埋めたって事なんだろう。

ちょうど今の、そこの二人みたいにな」

「なるほど……」


「とりあえず時間も無い事だし、みんなで帰る準備しない?」

「魔力電池もミーナ一人しかいないからな!」

「わ、私一人ですか!?」

「そっか、あんまり増やせないね」


 現時点で魔力回復には魔石を使う以外にはミーナしかおらず、時間が経てば『迷宮』の意思に取り込まれてしまうだろう。


 トレーネの棺を開ける。

「まるで……生きてるみたいだね……」

「そりゃ当然だ、生きてるからな」


「……」

「……えっ?」


 ソロモンにみんなの注目が集まる。


「いや、さっきから何度も言おうとしたのに、さえぎるから言えなかったが、トレーネ嬢は最初から死んでいない」




 ソロモンはパーティーが全滅すると察すると、いち早く逃げ遅れたトレーネを仮死状態にした。

そして完全に意識を掌握される前に、石棺には最後の魔力で保存の魔術を施したのだった。


「ザンジ殿の母上は、その時の時間を稼ぐために体を全部魔力に変換されて逝かれました」

「そうなんだ……母さん」

「おばさん、ありがとうございます……」


 ザンジとトレーネは無事にダンジョンから帰って、幸せに暮らしたという。



これで終わりです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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