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桜と死

作者: 月影 ゆかり

成功率 4パーセント


これを聞いて、どう思うだろうか?


僕が思ったのは 成功するはずがないということだった。


まぁ、まだ23歳だし。


やりたいことは、まだあるけど。

でも、別に死んでもいいかなって思った。


お父さんは早くに死んだし、お母さんも3年前に死んだ。


でも、一応手術はしろと親戚とかに言われて渋々やることになった。


まぁ、やってもやらなくても死ぬだろうけど。



病院の庭のベンチに座って桜を見ていた。

春、好きだったんだけどな。


「お花、綺麗だね」


小さい女の子だった。

2つ結びをしていてニコニコと笑っている。


「君、何歳?」

小さいのに、大変だなと思いつつ周りを少し見る。 親はいないみたいだ。


「10歳!」

両手を広げて僕に見せる。


純粋だなぁ。僕はもうすぐで死ぬってのに。


「そう。 お母さんとかお父さんは?」


女の子は少し俯いて言った。

「ママは、いないよ。 パパはお仕事」


「でも、病室から出て来ちゃダメだよ」

半分、どこかに行って欲しいという気持ちからそう言った。


「おにいちゃんもお外出てるよ」


うっ、ぶっちゃけ ただの純粋なバカだと思っていたが…。


「はぁ、わかったよ」

仕方ない、後で病室まで送っていこう。


「うんしょ」

女の子は僕の隣に座って来た。


まぁ、別にいいか。

また 綺麗な桜を見る。


「あの、お花なんて言うの?」

女の子は桜を指しながら、僕に質問してきた。


「あれは、桜だよ」

少し強い風が吹き、桜の花弁がパラパラと落ちてくる。


「さ、く、ら?」


「うん」


女の子は、パァッと笑顔になった。

「私の名前もさくらだよ!」


「そーなんだ」

お前の名前に興味はない。

というか、そもそも子供なんてあんまり好きじゃないんだけどな。


「おにいちゃん、楽しくないの?」

女の子は、心配そうに聞いてくる。


「え、なんで?」

無理矢理、笑顔を作って話しかける。


「笑ってないから」


うっ、 よく見てんなぁ!

「もうすぐで、死ぬからだよ」


「死ぬ?」

女の子は首を傾げながら聞いてくる。


「なんでもない。」

子供に、何を言ってるんだ。僕は


「もうそろそろ、戻ろう!」

女の子は、立ち上がって また笑った。


「そうだな」


2人で歩きながら、女の子は言った。

「ねぇ、おにいちゃん」


「なに?」

今度はなんだろうか。


女の子はとびきりの笑顔で言った。


「また、桜 見にいこうね!」


「できたらな」


桜の方をちらりと見て思った。


生きてたら、桜を見に行きたいな。

今度は1人じゃなくて、この子と。






桜を見に行くという願いは叶わなかった。


僕は、死んでいない。


奇跡的に手術が成功したのだ。


だが、女の子は


死んだそうだ。


退院する時に、女の子の事を聞いたのだ。


そしたら


「それが、 昨夜 亡くなっちゃったの」


とても、重い言葉だった。




最後に庭に出て、桜を見た。


ほとんど桜が散っていたが。



頰から、涙が溢れる。



あいつが、いないから泣いてるんじゃない。

あいつが、死んだから泣いてるんじゃない。


あいつが、死ぬということを知らずに死んだから 泣いてるんだ。



来年や、再来年もきっと春が来て

桜の花を見て、あいつのことを思い出し


泣くだろう。



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