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ウェルドゥグ防衛の成果

 ウェルドゥグの防衛戦は終わった。最深部にまで侵攻した冒険者も泉の底にあった宝箱を開けて、そのまま転送されていく。

 それを確認した俺は、シグウェルの北部にあるウェルドゥグの移転先である坑道へと転移を行った。



 仮の執政府はかつて鉱山だった頃の休憩室だ。既に大半の者が集まっていた。


「ご苦労様。上手くいった?」

 俺の顔を見てある程度は察しているセイラが確認してきた。


「大体はね。坑道での死者は3人、みんなプレイヤーだから死に戻ったよ。最深部に辿り着いた5人は、セイラの弁当を堪能して帰った」

「それは良かったわ」

「姉様、なんであの人形を入れたです?」

 少し不満そうなメイに詰め寄られる。

「いや、嫌がらせに付き合ってくれたお礼と言うか」

 リカルドに罠に使う小道具を借りに行ったら、押し付けられただけだが。

 そのリカルドは人間をはめるトラップを作ると言ったら、嬉々として協力してくれて、絶妙な重さで崩れる落とし穴とか、隠し部屋を隠す扉とか巧妙に作ってくれた。


「今戻りました、姫」

 アレックスが姿を転移して戻ってきた。彼には森の中で待機するアグラムの正規軍に、瘴気に見える様に紫に着色した胞子を巻いてきて貰った。

 ウェルドゥグで栽培されていた中である種のキノコは、人体に有害な胞子をばらまくらしい。

 症状としては、胸焼け、嘔吐、軽い頭痛、下痢といった軽いものの不快なもので、行軍はできなくなるだろう。

 後遺症も特になく、症状の継続性もないということで採用した。

 これでこの森には有害な瘴気が満ちていると思ってくれれば、ウェルドゥグの街も解放されるかもしれない。


「しばらくは常駐する部隊がいるかもしれませんが……」

「いやいや、望外の措置だよ。もうウェルドゥグの事は諦めていたのだ。それにこの新天地も悪くはない」

 キョーグスは俺に感謝してくれる。


「大半は伯爵が用意してくれたものですから。早いところキノコの増産ができれば、食料面も不安が無くなるでしょうし」

 比較的成長が早いらしいキノコを軸に、保存していた魔獣の肉などで食いつなぐ予定になっている。

 その他の生活用品などは、シグウェルの街から融通してもらう事になっていた。

 ウェルドゥグの街で流通しているのも人間と同じ通貨なので、正当に買い揃えられるようだ。

 伯爵いわく臨時収入になると笑ってこたえていた。


「これからが大変だと思いますが、何かあったら連絡してください」

「このお礼は必ず……」

 俺の手を握り、涙を流すキョーグス。かなりの感動屋であるのは短い付き合いでもわかる。

 情緒の面で言うと人間と妖魔であまり違いはないのだ。こうなると、妖魔相手にレベル上げとかしにくくなるのだが。



 仮眠はとったものの、ほぼ徹夜での作業で流石に疲れた。

 シグウェルの街に戻ると、ウィステリアの煎れてくれたお茶でほっとする。

 ウェルドゥグの飲み物も悪くはないのだが、基本的に得体が知れない。


「お疲れ様」

「何とかね」

 一仕事終えた充足感はかなりあった。人のために作業するというのは、悪い気もしない。ボランティアとかの精神に近いのかな。

 多くの妖魔に協力してもらって、様々な罠を仕掛けた。最後の部分は他のプレイヤーに協力して貰って、仕掛けの動作だけをやってもらい、プレイヤーに見えるところはメイに頑張ってもらった。


「こっちは文化祭の催し物的な感じだったけど、ウェルドゥグの妖魔にとっては生死を掛けたイベントだったんだよな」

「事実上の被害者は出てないんだし、凄い成果だと思うわよ」

 アグラム側に被害を出してしまうと、禍根が残り妖魔を倒すまで討伐軍が計画される可能性もあった。

 なので被害は出さずに追い出す方法を模索したのだ。


「何にせよ疲れたから寝るよ」

「そうね、明日ノートを渡すわね」

「ありがとう」

「こんな無茶はあまりしないでよ」

 笑いながら忠告してくるセイラの顔を見ながらログアウトした。



 NPCとは言え、多くの人と交わり、一つの成果をあげた経験は俺の中で何かに変わった気がする。

 ルカの言っていた合コンとは違うのかもしれないが、一つの目標に向けて、色んな考え方から意見をまとめて実行に移す。

 それが民主主義の根幹なのだろう。

 好戦的なオーガ達は、直接刃を交える事を望んでいたが、部族の要望よりもウェルドゥグの街全体の利益を優先してもらった。

 その代わりにアレックス達プレイヤーと模擬戦をやる段取りが組まれている。


「これも一種の政治なのかなぁ」

 交渉、折衝、妥協、決着。互いの利益がぶつかる時に、何を優先してどれを実行するか。

 それだけだと反感が残るので、他の部分では譲歩する。改善案が理にかなったモノなら取り入れて、修正して物事を動かす。

 その結果で多くの人が幸せになれるようにするのが、いい政治ということだろう。


 俺の中に残っている暴力表現規制法案。これも目的があって実行された。単に民意の人気取りというだけではないのかもしれない。

 しかし、頭ごなしな規制で、本当に望んだ結果が出るのか。

 発起人が何を望み、どうしてその手段をとったのか。

 それを知った上で、こちらの望みと相手の望みを両立させられる妥協点を模索できれば……。

 一度決めた法律を変えるのは難しいらしいが、現行の法律にも色々と手直しが入っているモノも多い。

 その為の方法を学んでいくのが、今一番やりたいことか。心理学も楽しそうだが、俺がやりたいのは扇動ではなく、融和なのだろう。

 数は力が民主主義だが、やはり騙して人を集めるのではなく、納得してもらって賛同してもらう。

 そのためには規制法案で何が阻害され、何が守られるのか。そこをはっきりさせるのが大事なのだ。


「ルカが目指してるのもその辺なんだろうな」

 経済面から規制法案の影響を調べて、マスコミや政治家に情報を提供する。それもまた一つの方法なのだろう。

 そのためにはコネクションが必要で、多くの人と繋がりを持つための合コン。


「手段がイマイチ、ピンとはこないんだけど」

 ならば自分なりの方法で、多くの人に意見を聞いてもらえる状況を作るしかない。


 おぼろげだが、自分がやりたい事への道筋が見えた気がする。

 まだまだ方法は見えないけれど、それに向かって行動すれば何らかの結果が出るはずだ。失敗したら反省して、そこから先にどうやって進むのか模索する。

 考え続ける事が、人間として前に進む方法。壁に当たってそれを乗り越えるのか、回り込むのか、打ち壊すのか。方法はその時々で違ってもいい。目標さえ決まっていれば、前には進めるだろう。

 ますは考えよう。

 そう思いながら眠りに落ちていった。

色々と書きたいことがグチャグチャになってるので、ここで一先ずの終了とします。


終わってない事もたくさん残っているのですが、書きたい事は書いたような、そんな感じなので。

無理に続けると、かえって変な解決策になってしまいそうです。


少し別の物語で息抜きしてから、また書き始めるかもしれません。

中途半端な感じで憤りを感じられる方もおられるでしょうが、ご了承ください。

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