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量産型メイ

 セイラは思ったほど怒ってもなくて、メッセージにも普通に返答があった。今はまたID巡りに精を出しているらしい。

 俺としては昨日作ったポーションの効果を確かめに行こうか、ウィステリアの状態を見に行こうか悩む。

 伯爵の依頼があるので、ヒーラーは急務ではあるが、やっぱりウィステリアからか。

「姉様、行くです」

 俺の出かける気配を察したメイが二階から顔を出した。メイは二階の寝室で寝ているらしい。

 新しい家のレイアウトもそうだが、皆の暮らしぶりに無頓着だったかなぁとルカの言葉を反芻する。

「どうした、です?」

 二階から飛び降りてきたメイが小首をかしげながら聞いてくるのを、首を振って何でもないと答えつつ家を出た。

 庭の畑では今日もモフモフが遊んでいる。


 転送石を利用してネルベルクの街へと移動。週末だけあって、いつもより活気があるようだ。

 その言葉の端々に『シグウェル』という単語を聞いた気もするが、異国の言葉で詳細がわからない。

 メイは特に気にしないようで屋台の方を見回している。

「何か欲しいのか?」

「ううん、シグウェルの方が美味しいからいい」

 メイにはある程度のお小遣いを与えていて、俺がいない間も食事ができるようにしている。

 やはりセイラが鍛えた料理は、メイにも好評らしい。

「じゃあ、さっさと終わらせて帰るか」

「はい、です」


 木工職人のリカルドの店は、相変わらずの閑古鳥。客の姿は見当たらない。

「いらっしゃい」

 迎えてくれるクレアの人形の顔にすら、暇だという雰囲気がにじみ出ていた。

 そういえば、店の中が片付いているように感じる。

「暇だから一通り片付けたのよ」

 俺が店内を見回していると、クレアが教えてくれた。

「見ての通りガラクタまがいの人形ばかりだけどね。色々と拾ってきて、手直ししてるみたい」

 自身も拾われた人形だったクレアは、同僚達をどう思っているのだろう。

「他の人形も動くようになった方がいい?」

「全然。ただでさえ仕事が無いのに増えても仕方ないわ」

 人形の本分は鑑賞される事、動いて働くのは損だわとクレアは言う。

 かといって物言わぬ人形に戻る気もないようだ。何だかんだでリカルドの世話を焼くのが楽しいのだろうか。

「リカルドは奥でその後の人形を量産してるわ」

 呆れた様子のクレアのセリフは捨て置けないものだった。


 昨日の今日、ゲーム内時間でも6日ほどの間に、メイの姿をした人形が10体ほどできていた。

 いくらメイ本人から許しを得たとは言え作りすぎじゃないか?

 というかウィステリアの作業は終わったのか?

 例によって作業中は話しかけ辛い雰囲気でノミを振るっている。

 とりあえず作業が一段落するまで、メイの人形を見ていく。マーカスもそうだが、被写体の魅力を引き出すようなポーズは流石だ。メイがメイで無ければ、買ってしまうかも知れない。

 俺の隣でメイが、人形を真似してポーズする姿に、やはり本人が一番可愛いと思い直す。

「ん、なんだ、客か」

 ようやくリカルドがこちらに気づいたようだ。

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