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拠点も新たに

「ルカ……なの?」

「くくく、正解だ」

 にやりと鋭い犬歯を見せながら笑う。

「でも、なんで、そんな姿に?」

「前の体だと北米圏は不便になる可能性があったからな」

 ルカの以前の姿は、10歳くらいのそばかすの残る女の子だった。短めの栗色の髪を2つに分けてくくっていて、かなり幼い外見をしていた。

 それが今は吸血鬼を思わせるイケメンになっている。

「っていうか、性別は!?」

「残念ながらそれは変えられない。胸は最小でさらしを巻いて誤魔化しているな。後はやや長身にして細身に」

 どうやら何らかのアイテムで外見の設定を一から作り直したみたいだ。ローティーンの姿は、北米圏でプレイヤーに襲われない保護機能が働くが、その分飲食や衣服に制限がかかるらしい。

「子供の姿でタバコなんかは許されないのだそうだ」

「色々とあるんですね」

「我が国はその辺が緩すぎると、国連などからは指摘されてるけどね」

 日本がスタンダードから外れているらしい。


「さて、これからどうするのかな?」

「どこかで工房を構えないと、錬金術はもとより、所持品も一杯なんですよ」

 ただ以前と違って資金には余裕がある。一等地でなければ、以前と同じ広さで襲われる危険もない家が持てるはずだった。

「となるとハウスか。しかし、めぼしい場所はすでに埋まっているな」

「やっぱり、そうですよね」

 新規サーバーが開くということで、全世界から一等地を求めてプレイヤーが集まっていた。

 プレイヤーハウスの場所に関しては、早い者勝ちなのだ。俺は手続きに手間取った事もあり、出遅れてしまっていた。

「いっそ、この街を離れるという手もあるけどね」

「え、他の街でも家があるんてすか?」

「ああ、各街にいくつかの物件が用意されている。ただ、買い物なんかが不便だから、やっぱり最初の街に家を持つのが普通だな」

 静かなところで暮らしたいカップルなどが、他の街の物件を利用していたらしい。

「うう〜ん、私も騒がしいよりは静かなところがいいかな」

 買い物が不便になるのは面倒だが、さっきみたいに男に詰め寄られるのは困る。

 元々男にちやほやされたいと選んだ女性キャラだが、実際に男に色目を使われるというのはかなり疲れた。

「地方の街か……」

 俺の脳裏には一つの街が浮かんでいた。



 マクシミリアン家所領シグウェル。鉱山の麓に作られたそれなりに大きな街だ。雰囲気的にはアルプス……行ったことはないので、イメージだが。

 その領主マクシミリアン伯とは、とあるクエストで知古となっていた。

「ふむ、良い所だな」

「転送石でこれたって事は、来たことあるんでしょ?」

「数多の街を巡っているから、どこがどこか分からなくなっているのだよ」

 悪魔的頭脳の持ち主であるルカの言葉は信用ならない。しかし、このALFはかなりの広さを持つゲームだ。すべての街を記憶するというのは不可能なのかもしれない。


「というか何でついてきてるんです?」

「新規で作られたサーバー、多くの外国人がやってきているところだよ。乙女としては心細いから、知り合いに守ってもらいたいじゃないか」

 守られたのはこっちの方なんだが。どうにもルカと話していると、自分の行動が操作されてるんじゃないかと不安になるのだが、その知識と思考は頼りにもなる。

 俺一人では心細い面もある。

「側にいてくれるのはありがたいことかな……」

「って、人の心を勝手にナレーションで作らないように!」

 なぜここまで人の思考を読めるのか。やはり近くにいるのは危険か。

「さて貴女で遊んでいても埒が明かない。その領主とやらに会いに行こう」

「……」


 結局、ルカの言うままに領主の館へとやってきた。実際にこの街に住めるのか、確認をしなければならない。

 門から馬車に乗せられて、玄関口へと運ばれる。そこから執事に先導されて、執務室へ。

「よくぞ参られた、錬金術師殿」

 俺を認めたマクシミリアン伯は、椅子から立ち上がり出迎えてくれた。

「お久しぶりです」

 上流貴族にどう接したらいいものか、少し戸惑ってしまう。

「愚息の足取りでもつかめましたか?」

 マクシミリアン家のクエストは、三男が冒険者になって行方が分からなくなったところからスタートしていた。

「それはまだなのですが、少しお願いがありまして……」

 俺はシグウェルの街に、住むことができるか聞いてみた。

「無論、犯罪者でなければ受け入れるぞ。ましてや恩人たる錬金術師殿の願いを断るわけもない。いっそこの屋敷に住んでくれてもよいぞ」

 豪奢な屋敷は広く、空き部屋も多数あるみたいだが、正直庶民には居心地が悪い。

「錬金術の工房になるので、郊外の方がありがたいです」

「ふむ、そういうものか。確かにあれだけの爆発を起こされては屋敷も保たぬな」

 冗談のつもりかマクシミリアン伯はかかかと笑う。

「わかった、街に詳しい者に案内させよう」

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