クエストの報酬
ゴブリン達の野営地は、最初の爆発の影響で簡素なテントは崩れ、鍋や武器が散乱した状態になっていた。
ゲーム的に死体は消えてくれているので、その点はありがたい。
残っているのは立派な作りの食人鬼用のテントくらいだった。
中に入ってみると、目に突くのは頭蓋骨の山。食人鬼の戦利品ということなんだろう。
後は食人鬼の物であろう甲冑。刺々しい鋲が打たれた鎧はかなりの重量で、セイラが着るのも無理だった。
「デザイン的にも嫌だしね」
しかし、これを着て戦っていたらと思うと更なる苦戦を予想させた。
「他には……」
乱雑に置かれた荷物の中に、何枚かの紙が混ざっていた。拾い上げてみても、文字が判読できない。
「これって何語?」
「私も読めないわね。オーガの言葉なのかしら?」
何らかの情報があるかもしれないので持ち帰る事にする。
他は古くなった毛皮とか、ボロ布とかなので放置。重たい甲冑はくず鉄くらいにはなるかも知れないので持ち帰ることにした。
「金棒も持っていく?」
「素材にしかならないでしょうけど……」
所持袋に入れさえすれば、重さも関係なくなるので詰め込んだ。
「ご苦労。発見だけでなく、集落を潰してくれたとか」
「それが集落ではなさそうです」
伯爵の屋敷に行って、報告を行った。
「なるほど、軍事行動のように見えたと。この書類は私も読むことはできないので、誰かに解読させよう。何にせよ、君達はよく任務をこなしてくれた。報酬を支払おう」
伯爵が取り出したのは成功報酬の45000。金貨45枚が入った革袋だった。
「あの、本当にこんなに貰っていいんですか?」
「ああ。本当ならオーガも倒したと言う事で上乗せしたいくらいなんだが、財政的にも余裕はなくてな」
「だったらこんなに私達に渡さず、他に使ってはどうですか?」
「君達は報酬を受け取るだけの仕事をした、それは相応の対価だ。もし我々に気を使うなら、この街で散財してくれ」
「この街で?」
「うむ。錬金術師殿が街の道具屋で素材を買ってくれたら、道具屋は儲かり、その一部は税金として我々に返ってくる。道具屋が酒場で飲めば、そこで酒場も儲かり税金もしかり。そうしてお金は回っていくものなのだよ」
「なるほど……」
「君達がこの街でお金を使ってくれれば、それだけこの街は発展するのだよ」
「私達がNPCにお金を払うと街が発展するのか」
「そういうシステムなのね」
もしかしたら、前回の鉱山での岩盤破壊も街の発展に寄与しているのかもしれない。
「マクシミリアン家の貴族クエストの一貫って感じかな」
「街が一定以上成長したら、また何かクエストに繋がるのか」
「今回の報酬は街に還元しないとね」
「そういうことなら、喜んで協力しよう」
振り返るとそこには、貴公子ルカの姿があった。
そのままルカも伴って、街の酒場へと場所を移動した。
この姿のルカと対面するのは初めてのセイラに、改めて説明する。
「姿を変えるクエストアイテムでこの姿になったみたい」
「お見知り置きを、レディ」
跪いてセイラの手を取り、その甲にキスをする。いかにもキザなやり取りなのだが、セイラはまんざらでもなさそうな表情だ。
「女性にはわかりきっている事でも、態度で示して欲しい事があるのだよ」
などとまた人の心を読んだような事を言われる。ALFがこんなことになって、やや距離を感じ始めていた俺としても、ちゃんと相手に伝える努力はしないといけないとは思った。
「さて、何かのクエストの打ち上げなのだろう。私にも協力させてくれよ」




