序章
前作『VRMMOでネカマ日記』のその後のストーリーになっています。
新天地でのプレイということで、人間関係などがリセットされた状態で、前作を知らない人でも読めるように執筆していく予定ですが、前作に目を通していただければ、より世界観を楽しめると思われます。
『Another Live in Fantasy』略称ALF。
アメリカ発のVRMMO(仮想現実大規模多人数オンラインゲーム)で、世界規模で展開するファンタジー世界を舞台に剣や魔法を駆使して活躍できるゲームだ。
日本でも運営が行われ、人気を博していたのだが、暴力表現などを理由に、法案で世界とのアクセスを制限される。それを受けて運営会社は日本からの撤退を発表。ゲームをプレイするには、海外のサーバーへの接続を余儀なくされた。
これにより、日本人プレイヤーは極端にその数を減らすとこになっていた。
俺、鍋島直紀は「ケイ・リュウゾウジ」という女性キャラクターを作成してプレイしていた。
ゲーム内で様々な人達と交流を持ち、プレイを楽しんでいたのだが、急なサーバーの閉鎖に呆然としてしまう。
ただやり残した事も多いので、何とか海外サーバーでもプレイできる環境を整えた。
しかし、一緒にプレイした仲間達で、海外決済してまでプレイを続けようという人は少ない。
日本国内のサーバーが閉鎖されるのに伴い、アメリカで日本人用に新たなサーバーが設定されたが、多くの国のプレイヤーが流れ込み、最初の街に持てるプレイヤーハウスの争奪戦が起こっていた。
そうした混乱が更に日本人離れを引き起こしている。
「さて、どうするかな」
知り合いがほとんどいなくなり、特に親しかったシゲムネやセイラも海外決済の壁にあたって、すぐにはログインできない状況だ。
仲良くさせてもらっていた女の子クラン『チェリーブロッサム』のメンバーも、揃って別の国内ゲームに移籍したらしい。
その中の一人と特に仲良くなりたがっていたシゲムネは、そちらにもアカウントを作ってプレイを開始したらしい。
再びゲームを新規に始めたようなフラットな状況。
しかも周囲では馴染みのない言葉が飛び交っている。世界に広がっているALFの新規サーバーの開始ということで、様々な国からプレイヤーが集まってきていた。
日本サーバーが閉鎖され、海外でのプレイを余儀なくされたプレイヤーに対して、試験的に導入されたのは『通訳システム』だ。
特定の相手と対面して会話する際に、相手の言葉を自分の言語へと変換してくれるシステムで、NPCとプレイヤーの会話に使われていたらしい。
ただまだ完全な翻訳には至ってないらしく、誤訳もありうるらしく、使用には注意が必要ということだった。
そのため安易に人の会話に割って入る勇気は出ない。
この新天地で俺は、大きな目標を持ってプレイを開始する。