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天運の少女たち  作者: 麻柚
終章 香穂
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天運の少女たち

 香穂の目が覚めた時、彼女の視界が捉えたのは茉莉絵ではなく、春治だった。

 訳も分からぬままベッドの上で春治に固く抱き締められた香穂は、ゆっくりとそばの電子時計を確認した。午前八時を過ぎており、昨日までなら茉莉絵に叩き起こされている時刻だった。香穂は首を戻すと、春治の肩に鼻をうずめた。

 春治とホテルの従業員、それに警察官らしき人物が話し合う光景を遠目に眺めて、香穂は自分が行方不明者扱いになっていたことに気づいた。春治のことだから翌日や二日後にはもう届け出されていただろうに、今日まで見つからないでいられたのは奇跡だった。春治は香穂を叱ることはせず、ただ悲しげに、だが安心したように目を細めていた。

 ほとんど放心状態のまま、春治によって事が進められ、香穂は春治の黒塗りの車に乗り込みビジネスホテルを出た。助手席で、近づいては遠ざかっていく景色や建物を見つめていた。からりと晴れた空には、昨日までの雨の影もない。

「香穂」

 赤信号で停止した時、春治は座席のポケットから折り畳まれた小さな紙を取り出した。香穂が小学生の頃、ノートやルーズリーフの切れ端を丁寧に折った簡易な手紙交換が流行っていたが、ちょうどそのような要領で折られた紙が香穂の手に乗った。

「水谷さんからお前にって、フロントに預けられたらしい」

 春治はそう言って、信号の切り替わりとともに車を発進させた。香穂は思いがけない物の存在に戸惑いながらも、柔く包み込むようにして握りしめた。

「読まないのか?」

「……うん。後で大切に読むの」

 香穂は手紙を持った手を胸に当てて、目を閉じた。

 茉莉絵は、もう香穂のそばにいないのだ。この手紙が、香穂に紛うことなき現実を嫌でも受け入れさせた。

「……ごめんなさい、お父さん」

 春治に伝えねばならなかった最も大切な言葉を、香穂はここでようやく口にした。春治は何も言わず、ハンドルを握る手に力を込めた。


 春治に香穂の居場所を連絡したのも茉莉絵だった。茉莉絵は電源を落としたままであった香穂のスマホを使用したようで、発信履歴が残されていた。沢山の春治からの着信を表示した画面を見て、香穂は申し訳なさと罪悪感でいっぱいになった。それでも、後悔だけはなかった。

 何週間ぶりに足を踏み入れた自分の部屋は、見た目には変化がなかったが、ぼんやりと慣れない空気で満たされていた。落ち着かない嗅ぎ心地を払拭するため窓を開け放つと、香穂は回転椅子に腰掛けた。夏の午前の風が、レースのカーテンをはためかせた。

 角が斜めのラインになるように折られた長方形の紙を広げると、それは三枚のメモ用紙となって散らばった。ビジネスホテルの名が入ったメモ用紙たちの一枚目には宛名がなく、いきなり本文から綴られていた。苺の仄かな香りが、一文字一文字から漂っていた。

 こういうの苦手だし、本当はあんたに言い残すことなんて何もないけど。勝手にいなくなろうものなら、あんたのことだから日本どころか世界中追っかけてきそうだから、書くわ。

 いかにも茉莉絵らしい文章に、香穂は苦笑しつつ続きを読んだ。

 あんたのこと、ずっと嫌いだった。一年の時だって、桐生雅は私の担任でもあったのにあんたのことばっかり。それが本当にあんただけを思ってやったことなのか、下心があったのかは分からないけど。でも、そのくせ私はあっさり桐生を好きじゃなくなったから、自分でも驚いた。やっぱり私に恋愛なんて向いてないのよ。

「……そんなこと、ないよ」

 香穂の呟きは、茉莉絵の耳に二度と届かない。

 立場が変わって、私はあんたに助けられて。正直、屈辱だった。いじめてたあんたに助けられるなんて、プライドが粉々にされた。あんたは私がジャスミンだったってだけで私に手を差し伸べたけど、ジャスミンなんて偽善者よ。私が作り出した偽物の人間で、そんなのは私の中にだって存在しないの。その証拠に、私はあんたにジャスミンみたいなこと、何一つだってできなかった。

 香穂は、そのような見返りなど求めていなかった。茉莉絵に、ジャスミンのような優しさを注いでほしかったわけではないのだ。そして香穂は、茉莉絵の否定するジャスミンを、確かに茉莉絵の中に見出していた。力強く摘んだ手紙に、皺が寄った。

 そのくせ私はあんたに求めたの。オーレリーも、遠藤香穂も。あんたが従順なのを良いことにやりたい放題言いたい放題で、なのにあんたは少しも私から離れなかった。むしろ離れようとすると全力で止めてきた。私、度々あんたが分からなかったけど、あんたを利用した。……でも利用されてたのは、私の方なのかしら。

 その文章の続きには、香穂も予想だにしなかった事実がしっかりと描写されていた。

 あんたは、私のためにワンピースを勧めてハーフアップを結んでくれた。私のために私の似顔絵を描いてくれた。でもそれは全部、あんた自身のためなのよ。ワンピースにハーフアップをした私は、まるで写真の中のあんたの母親そっくりだった。私の似顔絵には、私にはない右目の泣きぼくろがあった。あんたの母親にはあったわね。あんたは私の中に、私じゃなくて母親を見ていたのよ。でもあんたはそのことに全く無自覚で、イライラした。私を見てほしいって言ったのは、そういうこと。

「そ、んな……」

 香穂の瞳から大粒の涙が零れ落ち、机を打った。自らの自覚なき行為が、知らず知らずのうちに茉莉絵を傷つけていた。香穂はそれを突きつけられ、やりきれない気持ちと己への怒りで混乱し、ただ泣くほかなかった。

 それにしても、私を見てほしいなんて。本当私って勝手ね。おまけにあんたの寝てる間にいなくなろうとしてるんだから、もっと勝手。でも私、この世から消えるわけじゃないわ。言った通り、叔父様の家に行くのよ。あんたに叔父様の家を教えなかったことについてだけは、私を褒めたいわね。

 最後に忠告するけど、今度誰かと関わる時は、ちゃんとその人自身を見るようにしなさいよ。あんたはちょっと鬱陶しいけど、悪い奴じゃないんだから。たぶん上手くいくわ。それと、あんたの家に残った私の荷物は、全部捨てておいて。間違っても保存するなんて、変なことはしないでよね。

「茉莉絵ちゃん……」

 香穂の涙はとどまるところを知らず、手紙にも落ちて文字を滲ませた。香穂は腕で目許を思いきりこすってから、最後の一文に目を落とした。

 ねえ。まったく不思議だけど、今の私はあんたのこと、嫌いじゃないのよ。

「茉莉絵ちゃんったら、」

 香穂は、涙に暮れながらも微笑んだ。長い間覗くことができなかった茉莉絵の本心を垣間見れた気がして、それが香穂に笑顔を運んだのだった。茉莉絵との別れを、悲しみだけでなくもっと深いところで捉えることができた気がした。

「ねえ茉莉絵ちゃん。私、学校でどうするの? 茉莉絵ちゃんがいなかったら私、一人なのに。どうして分からないのかなあ」

 香穂はくすくすと笑いながら、独り言ちた。三枚目、最後の一枚には、香穂の似顔絵が描かれていた。所々線が掠れたその絵は、香穂のものとは比べるべくもない。

 香穂は手紙を丁寧に畳んで、窓辺に立った。夏の匂いに混じって、雨の匂いがした。

「……ねえ、お母さん。私は、茉莉絵ちゃんにお母さんを重ねてただけだったのかな」

 言いながら、香穂は首を振った。

 琴乃は茉莉絵のように高飛車ではないし、儚げな弱さも、少なくとも香穂には見せなかった。苺の香りだってしないし、妖艶な雰囲気も纏っていない。それでも香穂は、茉莉絵の全てを愛おしいと思った。ただの琴乃の代わりなら、そんな相違点を愛すことはできなかったはずだと、香穂は思う。

 琴乃の笑顔と、茉莉絵の笑顔。明らかに異なる性質を持った二つの表情のどちらも、香穂は愛していると、自信を持って断言できるのだ。

 微風にそよぐ木々を眺めながら、香穂はここからの景色を茉莉絵と並んで見たことを思い出した。部屋を見渡せば、茉莉絵の使用した回転椅子や布団、茉莉絵の読んだ少女小説がある。茉莉絵が忘れていった私物は、彼女のボストンバッグの中に収まっていることだろう。茉莉絵は、いなくなっていない。今年の牡丹の季節はもう終わってしまったが、それは毎年、これからも巡り来る。

 七月の穏やかな青空は、無邪気で、憎らしいほど優しい陽光を全ての生物に降り注いでいた。それでも、この空の下のどこかで茉莉絵が息をしているのだろうと思うと、太陽も青空も、微笑んでいるかのようだった。


 翌日の日曜日、香穂は春治とともに琴乃の墓参りをした。街の賑わいからは少し離れた墓地は、朝の光に照らされて独特の空気を放出していた。

 琴乃が眠っている黒い墓石の前に立った香穂は、静かに手を合わせた。瑞々しい花を朽ちたものと入れ替えて、墓石やその周囲を丹念に磨いた。香穂の額に玉の汗が浮かんだ。線香の匂いに惑わされながら、香穂は最後にもう一度、合掌した。

 そこへ不意に吹き抜けた強風は、墓地の砂を巻き上げ、植物を揺らした。琴乃のために供えられた花々もそれに身を委ねていた。琴乃が応えてくれているようだった。香穂はスカートを押さえ、髪を整えた。

「ねえお父さん。お母さんとは大学のサークルで知り合ったんだよね」

 帰り道、香穂は車を運転する春治に問いかけた。香穂以上に力強く働いた春治は、微かに汗の匂いを纏っていた。暑さのあまりワイシャツから外されたネクタイは、香穂の手の中に収まっている。

「そうだよ。僕はその年院生になったんだけど、サークルには頻繁に顔を出させてもらっててね。ちょうど琴乃は一年生として入ってきたばかりだったかな」

「お母さんはその時から少女小説が好きだったの?」

「ああ。海外の古典的な少女小説が好きだって力説してた。日本文学科なのに変わった子だなって思ったよ。日本の少女小説も好きだったみたいで、卒論は吉屋信子で書いてたかな」

 香穂は春治やサークルの仲間に少女小説について語る琴乃を想像してみて、吹き出した。その姿は、今の香穂よりも幼くて可愛らしいのだった。

「お父さん。お母さんとの出会いって、運命だって思う?」

 香穂が笑いながら尋ねると、春治は大きく咳込んだ。赤信号で停車すると慌てたように傍らの水を飲んだ春治は、言った。

「ど、どうしてそんなこと聞くんだい」

「なんとなく。お母さんと出会えたこと、お父さんはどう思ってるのかなあって」

 春治はしばらく、頬を染めたまま黙っていた。春治との他愛ない会話も久しぶりで、香穂は急かすことなく回答を待った。

「……運命かどうかは、分からないけど」

 眼鏡の奥の春治の瞳は、この上なく温かく前方を見据えていた。

「琴乃と出会わなかった自分なんて、考えられないよ」

 春治の答えは、香穂に強く響いた。香穂の欲しかった答えを、そのまま春治がくれたようだった。

「香穂にも、いつかそんな人が現れるだろうね」

「……ふふ、もういるよ」

「え!?」

 香穂が言うと、春治は明らかな動揺を見せた。再び咳込んだ春治が可笑しくて、香穂は笑った。

「女の子だけどね」

 茉莉絵との出会いが運命的なものだったのかどうかは、神のみぞ知るだ。だが香穂は、春治同様、茉莉絵やジャスミンと関わりを持たなかった自分なんて想像もできない。それでいいのだと思う。何故出会ったのかとか、出会わなかったらどうしていたかとか、そんなことは考えなくていい。だって、出会うことができたのだから。

「お父さん、今日の夕飯はお父さんが食べたいものにするよ。何がいい?」

「そうだな、香穂の作るものはなんでも美味しいよ」

「お父さんってば。でも、お母さんにはまだまだ敵わないよ」

 春治と琴乃が出会わなければ、香穂はこの世界に誕生しなかった。春治にも琴乃にも、ましてや茉莉絵にも、出会わなかった。香穂は自分と繋がりのある全ての人間を尊く感じて、少しずつでも幸せを分かち合いたかった。

 まずは、一番近くにいてくれる人から。


 春治との和やかな夕食を終えた香穂は、明日が早いからと言って寝床についた春治を見届けてから和室に入った。琴乃の仏壇に線香を上げ、手を合わせる。

「お母さん。お父さんを傷つけて、ごめんね」

 電気を点けないままの和室は、リビングから僅かに射し込む照明だけが頼りだった。香穂は座布団の上に正座して、琴乃の写真を見つめた。

「私がここに帰ってこない間、茉莉絵ちゃんとは色んなことがあったの。お母さんは天国からそれを見ててもう知ってるかもしれないけど、話してもいいかな」

 香穂は、桐生雅の一件でこの家を飛び出してから今日までのことを、琴乃に詳細に話した。写真の中で純白のワンピースを着た琴乃は、春治を心配させたことを叱りもしたし、茉莉絵についての話に笑顔を見せもした。

 桐生について、春治は正式に告白の断りを入れたらしい。桐生も弱くはない人だ。きっとすぐに立ち直って、前進することだろう。

「ふふ。お父さんとお母さんって、本当にラブラブだったんだね。お父さんから色々聞いちゃった」

 香穂は口許に手を添えながら、大いに笑った。自分の両親の馴れ初めを知るというのは、妙に照れくさいものだ。

「ねえ。私にもいつか、そんな人が現れるのかなあ。お父さんはそう言ってたけど、なんだか信じられないよ」

 香穂はそう呟いて、琴乃を見つめた。自分が誰かと愛し合うなんて、香穂にはまだ想像もできないことだった。その点については、もっと茉莉絵に聞いておくべきだった。

 自分は恋愛に向いていないと書いていた茉莉絵も、これからまた恋をするのだろう。その相手も茉莉絵を想い、そして茉莉絵にこの上ない幸せを与えてくれることを、香穂は祈った。


 和室を出た香穂は、自室に上がった。ベッドに飛び乗り、枕元の『第三若草物語』を取って、栞の挿入された部分を開く。前回読んだ時とは違って、すんなりと内容も頭に入ってきた。登場人物たちは皆生き生きと輝いていた。

 『若草物語』を読んでいた茉莉絵は、もう読み終えただろうか。『第四若草物語』まで読破してくれるだろうか。そんなことを思考して、香穂は物語に更に陶酔したのだった。

 元々残りの頁数も少なかったことが手伝い、三十分ほどで本を読み終えた。香穂は、それを新たに本棚に挿入した。

 本棚には、茉莉絵と共有したかった本がまだまだ沢山あった。『家なき娘』もきちんと読んでほしかったし、『少女パレアナ』を読んでもらえたなら、パレアナの得意な喜びを見つけ出すゲームだってしてみたかった。そういえば、茉莉絵との手紙のやりとりはまるで『あしながおじさん』のようだった。茉莉絵は、毎回律儀にお返事をくれる、あしながおじさんだった。香穂はくすりと笑った。

 香穂はベッドに仰向けになり、スマホを見た。その画面にはフェアリームーンが、ハートにリボンを結びつけたイラストのアイコンで表示されていた。香穂はそれを起動させ、お気に入りユーザーページからジャスミンのページに飛んだ。画面に現れたのはジャスミンの花ではなく、このユーザーは存在しません、という無機質な文字だった。

 どこか想定していたその表示に、香穂は顔色を変えることなく、マイページに戻った。ダイレクトメールページを開くと、ジャスミンへのメールはオーレリー側からのものだけで七十通ほどあった。それらを見返すことなく香穂は退会手続きを済ませ、アプリをアンインストールした。


 ねえ、茉莉絵ちゃん。届かない手紙なんて書いても無駄だって、茉莉絵ちゃんは呆れるかな。それでも、私は書きたいの。ごめんね、これは私の、最後の我儘だから。

 私はね、茉莉絵ちゃんを嫌いになったことなんて一度もなかった。だって茉莉絵ちゃんは、凄く綺麗だったから。それに、私より悲しい目をしてたから。いじめてる茉莉絵ちゃんの方がいじめられてる私より可哀想に見えてたから。可哀想なんて、茉莉絵ちゃんにとっては嫌われることより嫌なことかもしれないけど、私はそう思ってたの。

 ジャスミンさんが茉莉絵ちゃんだって分かってから、私は茉莉絵ちゃんを知りたくなった。本当の茉莉絵ちゃんはどっちなんだろうって。茉莉絵ちゃんには何度も拒絶されちゃったけど、私のしつこさに負けてくれたのかな。私を頼ってくれたことが凄く嬉しかった。この頃から私はずっと、茉莉絵ちゃんを好きだったんだよ。それなのに急にいなくなるなんて、酷いよ。林間学校もショッピングも、遊園地に行ったことも、茉莉絵ちゃんに突き飛ばされたことだって、今は大切な軌跡なのに。

 なんだかあまり書くことが思いつかないや。茉莉絵ちゃんに伝えたいことはその都度伝えたつもりだから、私の中に言葉が残ってないのかも。

 だから、最後に。似顔絵ありがとう。まさか茉莉絵ちゃんがこんなことしてくれるなんて思わなかった。私の粘り勝ちかな、なんてね。私もお返しに茉莉絵ちゃんの似顔絵、もう一度描いたの。今度こそ茉莉絵ちゃんだけを思って、泣きぼくろもないよ。茉莉絵ちゃんの顔を思い出しながら描くの、大変だったんだよ。私たち、二人だけの写真なんて一枚も撮らなかったんだなって、今になって気づいた。ボツを沢山出したぶん、今までで一番よく描けてるはずだから。あ、林間学校の集合写真を見ながら描けばよかったんだ。今更それに気づくなんて、本当馬鹿だね。

 茉莉絵ちゃん。私もね、茉莉絵ちゃんのこと嫌いじゃないよ。ううん、好き。……いや、大好きだよ。


 香穂の手紙の文字は、後半薄くなり、最後の一文は掠れてなんとか文章を判別できる程度になっていた。香穂は役目を終えたクリーム色のペンを、バニラの芳香と一緒にキャップに閉じ込めた。完成した手紙は茉莉絵からのものと同じように折って、中にダイヤモンドの指輪を包んだ。それにペンを添えて、引き出しの最奥に仕舞った。

 きっといつか、懐かしい思い出とともにそれを広げる時が来るだろう。


 この先に続いていく未来のどこかで、もしまた彼女たちが邂逅するとしたら、その時こそ、二人が天運に導かれた少女たちであったことが証明されるのだ。

ここまでお読み頂き、本当にありがとうございました。

ちなみに、少女小説たちはほぼ全て、世界名作劇場枠でアニメ化された作品の原作です(『第四若草物語』を除く)。

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