隠居追放
近江の国 小谷城 浅井 長政
重臣達が揃って、私に話があると言う。
話を聞いて目眩がした。
義兄上に逆らえば、どうなるか。
わからないまでもない。
朝倉と一連托生は御免と言っていい。
話の元は万福丸らしい。
我が子ながら恐ろしいくらい先を読んでいるのは間違いない。
私は当主として、織田に着く決断を下すことにした。
明くる日、私は家臣一同の前で将来、起こりうる朝倉と織田との争いについてだが、家臣一同と相談した結果、織田に着くと発表した。
しかし、父、久政が『何を言っているのだ、
浅井は朝倉に着くのだ、信長などにはつかぬ。
新九郎、あの女にたぶらかされたか』
遠藤は久政の発言を無視して『家臣団を代表しまして、殿の発表に従いまする。
先程、雨森弥兵衛を織田様の元に派遣しました。
朝倉攻めの先鋒を請うようにしました』
私は頷き、『良かろう、父上、我々はあれほど朝倉に上洛するよう、忠告しましたが、無視されました。
言うなれば、将軍家の命です。
将軍家に逆らっている。
逆賊を討つのは将軍家に従う我々の勤め。
我が妻を侮辱する発言はやめられよ。
どうしても朝倉に着くと言うのならば、家中の乱れを齎す以上、見過ごせぬ。
父であろうとも許されぬ。
それに父上、貴方は既に隠居の身、ここに出てくることや発言を許した覚えはない。』
員昌や遠藤に命じて久政を隠居所に追いやり、遠藤は隠居所の米や金子を全て城の兵糧庫に封印し、海北綱親や田中吉政と言う若い将に兵を与えて守らせた。
評定を万福丸は冷めた目で見、醜態を晒す祖父を見、蔑笑を浮かべていた。
同上 浅井 久政
なんとか、せねば大恩ある朝倉は滅びる、使者を出そうとしたが、城を抜け出せない。
金子や米がないことに気づき、激怒した。
『おのれ、新九郎』
どうにもならなかった。
長政はさらに第六天魔王にある要請をしたことに久政は気づかなかった。
しばらくして、第六天魔王は丹羽長秀を派遣し、久政を引き取り、美濃に連れ帰った。
山城の国 第六天魔王
長政が父、久政を追放したか、絵図面を書いたのは我が甥、実行したのは傅役の遠藤。
最終的に久政に引導を渡したのは長政。
それにしても、使者の雨森弥兵衛も見事に役目を果たしたわ。
これで、朝倉は潰れる、浅井と朝倉の縁があって頼みづらかったが。
三河守は東海、備前守に北陸を任せ、儂は西に出る。
第六天魔王は直ぐに、狸と長政に書状を送り、越前せめを要請してきた。