関東征伐前夜
加賀 末森城
狸が悔しがっている頃、兼続が来ていた。
佐渡の宝を掘り当てた謝礼と金を献上してきた。
私は金を受け取らず、『越後平野の開発やいずれ関東に返す民、百姓のために使え。』と。
兼続『しかし』
私『子供の使いのように見えて不快かもしれないが、後、何年かのうちに日の本の戦国の世は無くなるだろう。
後は再建の世で我々は戦国の世に疲れた民、百姓の生活を守る義務がある。』
兼続『なるほど、確かに』
私『景勝殿にそうお伝え下され』
兼続は頷き、越後に帰還して行った。
近江 安土城
第六天魔王は北條の忍び集団、風魔党の頭領、風魔小太郎に配下達に調略をかけ、誘降させることに成功していた。
『北條は耳目をもがれた、今潰しても勝てるが、あの地黄八幡と幻庵老がおる。
被害が馬鹿にならぬ。
時間をかけるか、だが』と呟き、北條征伐の準備を整えながら、北條の動きを探った。
小田原では、氏政、氏照、氏邦らの強硬派と氏直、氏規、幻庵、綱成らの恭順派との対立が酷くなっている。
さらに風魔小太郎からは、幻庵、綱成が病に倒れていることで強硬派が勢いを増し、甲斐、西上野、駿河に攻撃を仕掛けてくる可能性があると言う。
第六天魔王は使者を出し、恭順するならば伊豆、相模、武蔵の領有を認める旨は伝えたが、のらりくらりとかわされた。
そんな中、強硬派の氏邦の配下が暴走、史実通りのことが起こってしまった。
第六天魔王『北條を討ち滅ぼしてくれる』
ついに号令を下した。
武田征伐から四年たっていた。
加賀 末森城
私は関東の様子を探っていた。
第六天魔王からの命令が届いていた。
北陸を統治して、もう早いもので10年近く経過していた。
国力の充実は言うまでもない。
私は第六天魔王の北條の次は何処なのか、第六天魔王の頭の中には次の戦いを模索している感じがしてならなかった。
もし、朝鮮ならば反対せねばならないだろうが、朝鮮を攻めてジリ貧なるよりは蝦夷、樺太、千島列島、琉球に琉球周辺の島々、小笠原諸島、台湾、台湾周辺の島々に済州島を手に入れ、殖民や開発させ、現代の憂いを失くす必要がある。
戦乱が終われば、浪人達が増える。
浪人達による治安の乱れが現れるため、彼らを使って、未開発地域の開発、開墾に力を入れる。
私は密かにこのことを三村元親に書状にして纏め、どう思うか、尋ね、北條征伐の際、会って話したいと書き記しておいた。
近江 安土城
毛利、三村、長宗我部らの軍が到着し、関東征伐の軍が次々、着到する中、三村元親はこの信政の書状を読んでいた。
ため息をついていた。
秀親『父上、如何なされましたか』
元親『信政殿からの書状よ。
やれやれ、一回、信長様や信政殿だけで話し合う必要があるかもしれない。
秀親、お主は北條征伐が終わればどうなるか、考えてみたか?』
秀親『日の本は治るかと』
元親『確かに治るが、信長様がこの狭い日の本で収まる器か』
秀親『それは』
元親『外に出ていく、いわゆる海外進出だ。
標的となるは朝鮮であろう。
知っての通り、朝鮮は、難治と言っていい。
また、土地も痩せ、気候風土も厳しい。
それに言語の問題や内陸部の交通もまともに道が整備されてない。
内政にも開発にもおぼつかない箇所だ。
産業と言っても、高麗青磁に酒、漬け物くらいだろう。
学問は儒学が盛んだが。
魅力がある土地とは言えない。
日の本と同じようにするには時間がかかるだろう。
確かに蝦夷などにも同じことが言えるけど』
秀親は父の言葉を聞いて、『朝鮮は』
元親『死地になりかねない、諌めるのは危険だが、朝鮮の実情を知る隆佐も交えてべきだろう』
信政に小田原で話し合うようにしようと信政に書状を送った。




