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軍神の来襲と

加賀の国 大聖寺城 浅井 信政



これで三回目ともなる、越後の軍神さまの加賀への出張です。

あれとまともに戦うのは勘弁して下さい。

こちらの身が持たないのも、確かです。

あの阿呆の我儘に付き合うのもどうかと、思うが、まあ、出張ってきたら、情け容赦なく、お星様になって貰う。

新しい時代の人柱にはふさわしいだろう。

だが、こちらにも馬鹿というか、撃って出て雌雄を決すべしと言う馬鹿がいる。

織田の援軍として来た、池田恒興の娘婿の森長可や佐久間長盛らである。

父や私は即、そのような考えは却下させた。

父は『あの軍神と正面から戦うのは愚の骨頂、冬が来るのを待ち、撤退させる。

あの軍神の軍事的な才幹は想像を超えるものだ、武田も川中島で五回に及ぶ戦いをしたが、決着は付かなかった。

無駄に兵を消耗させるのは反対だ。

何のためにこの陣城を造ったのか』

私は『父の考えに賛同します、私はもう一つ、加えておきたい。

軍神とただ正面から戦うのではない、あの軍神の命数は遠からず、尽きる』

もう一人援軍としてきていた、明智光秀が『

信政殿、それは?』

私『あの軍神の健康についてだ。

塩を肴に大酒を喰らうとか、そのような生活を続けていたら、長くはない。

命数をはかりながら守備に力を入れるべきだろう。

それに軍神は野戦においては敵なしだが、攻城戦はあまり得意ではない。

忍耐力も低い、短気を催し、有力な将を敵に回すこともあるとか』

光秀『長政様や信政様の意見に賛同する、むやみに撃って出るのはやはり避け、軍神が引き上げるのを待とう。

それに、関東の北条に使者が派遣し、軍神の鋭鋒を関東に向けさせるしかなかろう。』


基本方針が決まり、軍神の挑発を避け、守りを固めた。

数か月間に及ぶ睨み合いは益なく、軍神は越後に引き上げた。

だが、軍神が一度越前を伺うが二度目はなかった。

第六天魔王から堀秀政が使者としてやってきて、軍神とは戦わないようにという使者が来たにも関わらず、引き止めたのに、撃って出て、軍神に挑み、無闇に兵の命をすり減らした、佐久間長盛らは第六天魔王の怒りを買い、蟄居、謹慎と言いつけられたという。


援軍の将として私は蒲生氏郷と会った。

氏郷『やはり、信政様、噂通りの方ですね』

私『光秀殿が総大将と貴殿が副将として援軍の将として差し向けられれば、無駄に兵の消耗は避けられただろうに、まあ、焦りもあったのだろうな、佐久間殿は。

柴田は南信濃を切り取り、丹羽、滝川は飛騨、羽柴、前田は播磨、但馬。

松永、明智は紀伊や摂津、丹波。

私の父は加賀を伺い、私が丹後を得た。

佐久間殿は摂津でしたが、石山がほぼ孤立しているのに、落とせなかった。

周りより、低くみられたのかもしれない。

あまり功を上げると、嫉妬する方もいますし、互い気をつけるとしましょう』

氏郷『信政様もですか、私もです。

上様は才幹のある者は優遇します、例えば、

三村元親殿などが挙げられます。

上様の子、信忠様は嫉妬はしませぬ。』

互いに溜め息をつき、『信雄様ですか』

氏郷『冬との縁談の時も嫌がらせがありました』

信政『妹三人いますから、誰かに嫌がらせを仕掛ける可能性。

あるかもしれない。

氏郷殿、何かあったら援護を頼む、貴殿を信じて話すか、私の妹の初と三村の秀親殿に仕掛ける可能性がある』

氏郷『それはまた』

信政『信長様に話すことにしよう。

まあ、上手くいけば、ちょっかいは無くなるが、あの手の小物は逆恨みする可能性もある』


互いに気に入られてはいるが、嫉妬や恨みを買うため、周りに気を配ることに時間を要することが多かったという。

しばらくして、軍神が越後に引き上げた忍びの報告が入り、大聖寺城に遠藤と磯野らを残し、引き上げて行った。



















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