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とある魔法使いの娘の呟き 003
さて、ことの起こりといいますか。
父がトチ狂ったことを言いに私の部屋に突撃を仕掛けてきた原因。それは、国の華と呼ばれる我が国の王女の十六歳の誕生日を祝うパーティーが原因です。
姿こそ、熊の様な山賊の体の父ですが、魔法薬の世界では名の知れた魔法使いであり、私が在学している学院においても魔法薬学の教鞭を取っています。
これまた、魔法治癒師として有名であった母が存命の頃は、治らない病や怪我はないとまで言われていたとか。
ただ、十年前にあった大雨の際、氾濫した川の被害地へ救援に行った母が、二次災害に遇い亡くなってからは、その勢いはなくなってしまったと、父の恩師である学院長が残念がっていました。
口汚い人は、冬眠した熊だと笑ったとか…
母の死を理解できなかった幼い私を抱き締め、静かに泣く父の嗚咽は今でも忘れられない。