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とある魔法使いの娘の呟き 002
“父が、娘の私より一つ下の姫に恋をした”
唐突に何をと思うかもしれないが、事実なのでしょうがない。
十七歳を迎え、最近いろいろな方々から、毎日のように見合いの話を頂きうんざりとしていた今日この頃。恋愛どころか、学院生活でやりたいことがあるのにと悶々としていたところ、まさか独り身になって久しい父が恋をしたと私の部屋に飛び込んでこようとは、考えもしません。
まあ、扉ごと風魔法で吹き飛ばしておきましたが、なにか?
さすがにこのまま放置するのも、目覚めが悪い…
「お嬢様」
私の意図を察した使い魔兼侍女の赤い瞳の少女が影から現れ、何も言わずに廊下で伸びている父を居間まで引き摺ってくれたので、付いて行く。
「カユールの葉は、まだある?」
ふと、先日作ったお茶のことを思い出した。
「この間、卸した時の残りでよろしければ」
先日、王都の喫茶店の店主に月に一度卸しているハーブティーで、なかなか評判がいいようです。
「ええ、それをお願い」
「はい、お嬢様」
先に歩く彼女に精神安定の効用があるハーブティーをお願いして、再度その後に続きます。