そして、鮮血へ12
男の拳がサグアを襲う。
よけきれない!
サグアは殴られながらも急所はなんとか外した。
大げさに床を転がり、殴られた勢いを殺す。
素早く立ち上がると男のいた方を見た。
いない?
後ろから頭を掴まれ、そのまま壁に打ちつけられる。
「がはっ!」
一度、二度、三度、四度、打ちつけられる度に視界が赤く染まる。
突然、手が離された。
壁を背にして男に向き直る。
男は相変わらず感情がまったく欠如した、虚ろな目でサグアを見ている。
触らなくても顔が腫れているのがわかる。
しかし、この男のスピードはなんだ?
あの瞬間に後ろに周り込めるなんて?
サグアは魔力を纏わせた拳で男の顔面を殴ろうとする。
しかし男は顔を少し動かしただけで拳をよけると、サグアの腹に拳を叩き込む。
自身の勢いと男の力。
サグアは地面にうずくまる。
そのサグアに容赦無く蹴りがいれられる。
肋骨が折れたようだ。
よろけるように立ち上がるサグアに、男は腕を振る。
しゃがむようにしてよけるサグア。
そのしゃがんだ所に蹴りが入る。
まともに蹴りをくらい、サグアは床に倒れた。
このままじゃやられる!
助かる為には…
こいつも殺るしかないか。
男はサグアの胸倉を掴み、無理矢理引き起こすと、顔面や腹を殴打する。
サグアは殴られながら男の腹に掌を当て呪文を唱えた。
炎の束が男の腹に大穴を開ける。
肉の焦げる匂い。
男の動きが一瞬止まる。
「これで終わりだ」
男の頭を掴んだサグア。
同時に破裂音。
男の頭が果物のように弾け飛び、男は膝から地面に崩れ落ちる。
相手が動きを止めたのを確認すると、サグアは壁に背を預けながらズルズルと床に座った。
魔力を使いすぎての疲労感。
一体何が起きたんだ?
あの化け物じみた身体能力はいったい…?
明らかに人間の限界を超えていた。
それに、あの目は…。
あの二人組に、なんらかの事がこの古城の中であったのは確実だろう。
とにかく、鍵を探して牢を開けるか。
ルンミイ達にも相談しなきゃな。
サグアは立ち上がると男達の服を探った。
鍵らしきものは一つだけしか見当たらないから、これが牢の鍵なんだろう。
鍵を握りしめたサグアは、折れた肋骨のあたりをおさえながら牢に向かって歩き出した。




