悪霊の鏡05
「あらためまして、私はヒポの父でこの村の村長、ヒポルです。この度は息子を助けていただき、ありがとうございます」
ヒポルは丁寧に頭を下げた。
後から、さっき外で会った屈強なドワーフと、頭からスッポリ黒いローブをかぶった人物が部屋に入って来た。
二人はアタシ達の前にお茶を置いて、壁際に立つ。
「聞けば、ルンミイさん達はこの村を目指して闇夜の森に入ったとか。その訳とは?息子の命の恩人です。私に協力できる事があったら言ってください」
「実は…」
アタシはローマン王に人質を取られ、悪霊の鏡を破壊してこいと命じられた話をした。
話を聞くにしたがって、ヒポルの顔が険しくなる。
「悪霊の鏡…。たしかに、鏡の祠に祀られている鏡はあります。しかし、あれは『真実の鏡』。悪霊の鏡なんてものは知りません」
おや?
話が食い違ってる。
ローマン王はここの村人は嘘つきだから気をつけろ、みたいな事を言ってたが、嘘をついてる感じは一切しない。
ヒポだってそうだが、嘘みたいな器用な事は出来ないタイプだ。
…となると、悪霊の鏡なんてない…?
どうしたらいいの?
「なんにせよ、その鏡を壊さなきゃ、俺らの仲間が殺られるんだ。鏡の祠に案内してくれねーかな?」
シュウドの言葉を聞いて、屈強なドワーフが激怒する。
「あれは!我らが先祖代々守ってきた聖なる鏡!その鏡を破壊するなど!!!!」
「サガー!!!!」
ヒポルに止められ、サガーと呼ばれた屈強なドワーフは拳をおさめる。
「村長!こいつら、王都から派遣された敵かもしれません!最近、王都ローマンは近隣の村々を制圧しようとしていると聞きます!こやつらもその一派なのでは?鏡を破壊など…!!」
サガーの言葉に、ヒポルも困惑した顔をしている。
「息子の命の恩人だ。力になれる事はなりたい。しかし、鏡の破壊とは…」
そこで、初めて黒いローブの人物が口を開いた。
「村長、どうだろう。東の塔に『真実の気持ち』を取りに行ってもらったら?」
その案に、サガーがのる。
「なるほど。それはいい考えだ。真実の気持ちなら…」
「そうだな…。息子の命の恩人を試すような真似はしたくないが…」
「だー、時間がねぇんだ!」
シュウドが叫ぶ。
「やる事が決まったのなら、教えていただきたい。シュウドも言ったが、時間がないんだ」
サグアの言葉に改めて村長がアタシ達を見る。
「この村の東の塔に、『真実の気持ち』という物がある。それを取ってきてくれないか?これは我々の村に古くから伝わる真偽を判断する伝統。真実の気持ちは邪な心がある者は決して手に出来ない。息子の命の恩人を疑うようで心苦しいが…邪な心が無いと判断出来なければ、鏡に案内する事は出来ない」
ヒポはなんとなく不安げにソワソワしている。
なに?
そんなに危険な所なの?




