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杏の思い出  作者: 神井
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3

年齢制限するほどではありませんが、微エロです。


「カナちゃん、すごかったわよ。ソロ!」



礼拝のあと、子猫のように彼方に擦り寄ってくる美笛。



「ありがとう美笛。」



彼方は美笛に優しく微笑みかけた。



今までなら、ここで美笛の頭を撫でたりしていた。



しかし、最近美笛に触れることが恥ずかしくなっていた。




美笛のことは妹のように可愛く思っている。




最初はそれほど仲良くなりたい、とは思わなかったのだが。




美笛のドジと内気さは彼方の母性をくすぐった。




よく楽譜で指を切ってしまう美笛。



痛いと呻く彼女の指に唾をつけてやったりして。




放って置けなくて、あれこれ構ううちに、



美笛は彼方の心の一部になっていった。




しかし、彼方は美笛を純粋に「可愛い」と思っているだけではないことに気づくことになる。




それは夏休みの合宿のことだった。



合宿所は山の教会。



夏だというのに、気温は15度を下回っていた。



深夜、彼方は寒さで目を覚ました。



脂肪が少ない彼方は比較的寒さには弱かったのだ。



(本当に夏かよ…。)



そんなことを思いながら、独り、体を起こした。



山の空気は澄んでいる。



天窓から覗く月や星が美しかった。



ふと、隣で眠っている美笛が目についた。



彼女はぐっすり眠り込んでいた。



(よくこんな寒い中、寝てられるよな…。)



この日の昼間は、講師から美笛の指導を頼まれた。



未だに正確な音程がとれない美笛のために。



彼方は絶対音感を持っているし、ピアノも得意なので講師の助手のような存在だった。



(君ももう3年なんだから、しっかりしなきゃ駄目だよ…。)



彼方は月光に輝く美笛の黒髪を指に巻いていた。



(いいな…僕も黒髪がよかった。)



よく友人たちに鳶色の髪を羨ましがられるが、



彼方からしたらコンプレックスの一つだった。



なぜなら、赤毛には似合わない色が多い。





髪から指を離すと、



今度は美笛の寝顔をじっと眺めた。



昼間のおどおどした感じとは違う雰囲気。




(どんな夢を見ているのだろう…。)




…無意識に美笛の頬に触れていた。




(温かい…)




彼女の体温が指を伝って全身に流れ込むような感覚。



彼方は体の芯から熱いものが溢れ出てくるのを感じた。



なぜか息も苦しくなってくる。



喉が渇く。




(美笛…)




思えば、これが最後の合宿だ。



彼方たちの高校は大学の付属校だが、エスカレーター進学する生徒は5%に満たない。



卒業したら、美笛と離れ離れになるのだろうか?



もしかしたら彼女は中国へ帰るかもしれない。



そう思うと彼方の胸はキリキリ痛んだ。




(どうしてずっとこのままでいられないんだろう…。)



このまま、17歳の少女のままでいられたら…。



(美笛…頼むから、ずっと僕の傍にいて…)



引き付けられるように顔を近づけると



そのまま美笛の唇に唇を重ねていた。







次の瞬間、我に返り、慌てて唇を離した。




自分は一体何をやってるんだ。




(何てことをしてしまったんだ!僕は!これが女友達にすることなのか!?)




美笛はまだ安らかに眠っていた。



その寝顔を見ながら彼方は自己嫌悪に陥った。



(僕は最低だ!純粋な美笛を汚した!最低!)



翌朝、割と器用な彼方は何もなかったように美笛に接した。



しかし、あのショックは治まるわけもなく



彼方の胸の奥で燻り続けた。



当然のことだが、それから美笛の顔を見るたびに胸が痛む。



妹のように思っていた美笛を



いつの間に「そんな目」で見ていたのだろうか、と




罪悪感いっぱいの彼方だった。











続きます。

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