表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
杏の思い出  作者: 神井
PR
21/32

20



皆を円形に並ばせると彼方は高らかに言った。



「このまま皆で歌おう。

下向いてたり、直立不動だったりしたらすぐ分かるからね!

最低3人と目が合うように!」



彼方の言葉に皆は照れるようにに笑い出した。




「やっだぁ〜。」



「気まずいって!」




そんな中




「じゃあ、私彼方ガン見するっ!」




彼方とよくつるんでいるオルガン科の七海(ななうみ) 京香(きょうか)が陽気に言った。




「いいとも、僕も京香ガン見するから!」




彼方もにやつきながら返した。




「じゃあ、いくよ、1、2、3!」




彼方の指揮を合図に



リズミカルなピアノの音色が流れだすと、



皆そのリズムに合わせて体を揺らし始めた。




「Joyful,joyful we above thee God of glory Lord of love


(ジョイフルジョイフル 私たちは主を讃える

栄光の神、愛の主よ)


hearts unfold like flow'rs before thee opening to the sun above


(主の御前で私たちの心は花のように開き、

天に向かって解き放たれる)




彼方率いるソプラノが出だしを飾ると



京香、美笛たちアルトが追いかけた。




「Melt the clouds of sin and sadness, drink the dark of doubt away


(罪と悲しみの雲は溶け、疑惑という暗闇は追い払われる)


Giver of immortal gladness,fill us with the light of day!


(永遠に続く喜びを与えて下さるお方よ

私たちを日の光で満たして下さい)




彼方と京香は目が合う度にくすくす笑っていた。



彼方は歌に支障をきたさなかったが、



京香は3番あたりになると笑いすぎで歌えなくなっていた。




「Thouart giving and for giving ever blessing ever bieast well spring of the joy of living ocean depth of happyrest!


(主は与えられ、罪を赦され、どんなときも祝福されるお方

生命の喜びの豊かな源であり、深淵なる安らぎを与えて下さるお方)


Thou our Father,Christ our brother all who live in love are thine;

teach us how to love each other lift us to joy divine


(主は私たちの父、キリストは私たちの兄弟

愛の内に生きるものは全て主のもの

互いに愛することを私たちに教えて下さい

神聖な喜びに私たちを引き上げて下さい) 」




ソプラノとアルトが分かれるころ、



二人につられたのか、美笛をはじめ他のメンバーも楽しげに笑っていた。



講師も困ったように笑いながら見守っていた。



最終部分になっても京香は笑い転げている。



彼女は笑い始めると中々止まらない。



彼女を見ていると自分もそうなりそうなので



彼方は京香から顔をそらして歌い始めた。




歌が止み、ピアノが止まると



講師は笑みを浮かべながらパンパンと手を叩いた。



「素晴らしくてよ!楽しそうで何より!直立不動で暗ーく歌うよりずっといいわ。……問題は…七海さん!いつまで笑ってるの!本番そんなじゃ困るわよ!」



「あははははははは!ご、ごめんなひゃい…………!ふふふふふふふふ!く、くるひい!」




彼方は首を横にふりながら京香に近づいた。



「全く、ガン見するって言ったのは君だろ。僕の何がそんなに可笑しいんだよ。」



「わ、わからにゃい!だって彼方、まじでずっと見てるんだもんっ。ふひゃひゃひゃ!」



「もう、しょうがないな。なんなの、この生き物!」



彼方は少しにやりとすると



京香の脇をくすぐり始めた。



「きゃあああ!や、や、やめてえ!」




一同、苦笑いとなった。





(あんな風になれたらな…。)




じゃれあう二人を見て美笛はそう思った。



京香みたいに陽気で笑いじょうごな性格だったら



彼方に恋なんてしなかっただろう、と。



そして始めて皆の顔を見ながら歌ったことで気づいたことがあった。



久しぶりに歌を歌って楽しい気分になった。



(……私が歌に求めていたことはこれだったんだわ。)











続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ