4#痛む胸
胸が痛む理由は解からないまま、二人でボールをパスしていた。
「美紅、上手いねぇ」
そういいながら桃香が蹴ったボールはいろんなところに飛んでいく。
「インサイドで蹴るんだよ」
私は言うけど、桃香はインサイドも解からない状況。
ふとみんなの方に目線をやると、光治くんが女の子達に囲まれていた。
「先生、人気だねぇ」
のん気にボールを蹴る桃香。
光治くんはやっと抜け出して、私達の方に歩いてきた。
私は無視してパスを続けた。
「おっ!上手いじゃないか」
私の横で関心しながら見ている。
「先生、モテモテだねぇ」
そう言いながら桃香が蹴ったボールは私ではなく光治くんの方に転がっていった。
「生徒にモテても困るよ」
ボールを貰うと私にパスしてきた。
「モテることはいいことじゃん」
私が言うと困った顔をした。
「受け取れないじゃないか。断るしかないだろ」
また、胸が痛んだ。
パスを止めないまま話しかけてみる。
「もし生徒を好きになったらどうするの?」
ふと目線を光治くんに向けると、ニヤリと笑っていた。
「さぁな?」
意味深な言葉を残して歩いていった。
歩いていくとまた女子に話しかけられている。
胸が痛む。何故だろう。
「今の言葉、何だったんだろうね」
桃香がパスを止めて近づいてきた。
「うん」
光治くんを見つめたまま答えた。




