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初恋  作者: 木嶋 稔
3/6

3#授業

入学から3日目、体育の授業があった。

先生は、光治くん。

私は気の乗らないまま、桃香に連れられて運動場に出た。

「桃香ぁ、サボっていいー??」

「ダメッ!!どんな先生か見たいもん!!」

入学式のあの事から、桃香は光治くんが気になるらしい。

「普通の人だよ?」

こんなことを言ったって全然聞いてくれない。

「普通な訳ないでしょ!

 美紅を笑わせた人なんだから!」

本当に普通の人なんだけどなぁ~。

私が桃香の後ろを歩いていると、

いきなり後ろから何か硬いもので叩かれた。

「なっ?!」

後ろを振り向くと光治くんが居た。

「今日はサボらなかったな」

その声と同時に桃香も振り向く。

「あ!!」

桃香が声を出すと、光治くんはきょとんとした。

「例の先生!!」

その言葉で私の方を見た。

「例のってなんだよ、例のって」

そう言いながらまた頭を叩いた。

「なんでもないですよー。」

桃香はいつもの笑顔でそう言うと私の手をひいて歩いていった。

光治くんはまた、きょとんとした。



「あの人だよね?」

みんなが集まっているところまで行くと桃香が振り返って言った。

「そうだけど。普通でしょ?」

「ま、普通だね」

その言葉に笑った。

笑っていると光治くんがやってきた。

「お前ら集まれー!」

その声でみんながぞろぞろと集まってきた。

「よし!じゃあ、授業を始める」

そう言うと授業の説明をし始めた。

私はその説明を聞くはずもなく、空を見上げた。

今日は雲ひとつない青空だ。

なんて思ってると、声が飛んできた。

「こらぁ!新垣!ちゃんと聞け!」

視線を戻すと光治くんがこちらを見ていた。

その時だけ前を見るけど、また違う方を向く。

授業なんて『つまらない』以外の言葉で、どう表せばいいのか。

「―――をする。わかったか?新垣」

いきなり名前を呼ばれて、驚いた。

「わかったよー」

分からないけど分かったフリをしてみた。

「じゃ、来い」

光治くんが手招きをする。

「へっ??」

「へ?じゃない!お前と手本を見せるって言ったら、わかったって言ったじゃないか」

そんなの聞いてません…。

私は渋々立ち上がった、光治くんの方へと行った。

そこにあったのはサッカーボールだった。

サッカーでもすんのかな…

私は光治くんの耳元で呟いてみた。

「なにすんの?」

言い終わって光治くんの顔を見ると書類などがはさんである板で頭を叩かれた。

「話聞いてなかったのか、お前」

呆れたように言う。

「私が話しなんか聞くとお思いで?」

また叩かれる。

「罰として後から体育教官室に来い!!」

そう言うとまた授業の話に戻った。

自分の場所に戻ると、桃香が笑っていた。

「何、笑ってんのよー」

桃香の頬をつまむと、にこっと笑った。

「だって美紅が楽しそうなんだもん。」

私が楽しそう――?

「そんなことないよ」

つまんでいた手を離す。

隣を見ると、まだにっこりと笑っていた。

その笑顔に私も笑ってしまった。

「こらぁ!そこの二人、早く行動する!」

周りを見ると、みんなはサッカーをしていた。

「で、光治くん。サッカーするの?」

立ち上がりながら聞くと、また叩かれた。

「サッカーするの!しかも、光治くん言うな!」

その様子を見て桃香がクスっと笑った。

「えっと……柏木だっけ?」

「ひどっ!生徒の名前ぐらい覚えようよ!光治くん」

お返しに私が頭を叩くと「スミマセン」と謝ってきた。

「ホラっ、新垣も柏木も早くやるっ!」

そう言いながら、私と桃香の背中を押した。


その時、私は

光治くんが桃香の背中を押したことに

何故か胸が痛んだ。


話し言葉が多いですね。。

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