表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕だけがハーフなエルフの件について  作者: 澤梛セビン
地球編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/13

9.断崖エレベーター

 直径が、恐らくだけど60センチはあると思う。


「よし、行くぞ。そーれっ!」


 長さは目測で5メートル。この超重量物質を、どうやってここまで持ってきたのか。

 ただなんだろう。普通に6人で持ち上げてるんだけど。


「「「「どっせーい」」」」


 ――――ズゴーーーン!!


 根元の加速器に向けて、鉄塊(杭)が叩き込まれた。地響きを響かせながら地面に突き刺さった杭は、地面から1メートルのところまで埋没。衝撃で舞い上がった火山灰が、辺りを白く染めた。

 まさに、力業。


 パイルバンカー(物理)は、圧倒的なパワーだった。


「いや、なんでやねん」

「どうした篤輝。そんな、エセ関西弁使うほどか」

「だって、え。なんで、僕を迎えに来て帰るって話だと、さっきの通信で理解したつもりだったんだけど」

「ああ、そうだぞ? もう少し作業したら帰ることに間違いないが」


 僕が見ている前で、持ち手付き貨物コンテナから次々と材料が運び出されている。

 いや待て、何だあのコンテナは!?


 いわゆる大型トラックのコンテナ部分。全長が6メートルはある、そのコンテナの中には巨大杭が一本。さらに極太ワイヤーを始め、いろいろな機材が詰め込まれていた。

 やがて4本目の杭が打ち込まれて、それを起点に何かが作られていく。


 そんな光景を、呆然と眺める。いや、何だろうここ数日、周りに圧倒されることが多い気がする。

 世界は週末の様相だけれど、そこに生きている人たちの行動力というか。

 地上は確かに住むことができなくなっていて、人類の大半がほぼ地下に潜っている。でも、そんな中でも地上での活動を諦めていないみたいな。


「ねえ、何感傷に浸っているのよ。あなたも大概おかしいのよ?」

「……え、僕?」

「だってそうでしょう。わたしはここからスタートした景色しか見ていないけれど、普通だったら火山灰に埋もれた無生物の世界を、防護服を着ているとはいえ山歩きするなんて狂気の沙汰よ? 今日のが二回目のルートなのよね? 前回は独り?」

「うん……独りで、ここまで来たよ」

「なら確定ね。アツキは自殺志願者か、狂人か。もしくは天才とか運命とかチート人類の類いよね」


 何も、言い返せないや。


「でもいいと思うわよ。それでも、生きているんだから」




 太い金属ワイヤーが4本の杭に巻き付けられて、崖下に垂らされた。

 コンテナは、恐らくここの拠点として活用されるんだと思う。少し離れた場所の枯れ木が抜かれ、均され圧縮された地面に設置された。


 しかしこれはすごい。

 防護服が、某ゲームのパワーアーマーのごとく、増幅された圧倒的な力ですべてを整えていく。無限電力を生み出すエリクシルの真骨頂が見えた瞬間だった。

 まあ少なくとも、僕が着ている防護服よりも圧倒的に高性能だとは思うけれど。


「篤輝、待たせたな。下でキャビンが付けば、下りられるようになるぞ。ところで、キャンプから何か追加で指示でもあったのか?」

「連絡はしばらく無いかな。なんで?」

「そうなんか? 誰かと喋っていたからてっきり、教授の誰かと通信してたんだと思っていたんだが」

「えっと……」

「わたしと喋っていたのよ。直接会話するのは初めてよね。ミモザよ。よろしくねゴウダさん」

「………………はあっ!?」


 まあ、そうなることは分かっていたけどさ。

 大きく目を見開いたゴウダさんは、僕の腰元の保存ケースを指さすと、口をパクパクとさせた後、そのまま天を仰いだ。

 額に手を――正確には、防護服ヘルメットの額の上に手を置いて、大きくため息をついた。


「いやあれだ、篤輝。お前らしいわ」


 っていうか、なんで!?

 僕が何かしたわけじゃないのに。何だか温かい目で見られた。


 そして始まる、大男と小妖精の会話。

 どこかに謎のシンパシーがあったのか、郷田さんはミモザと指先で握手していた。


「分かった。今さら、妖精の一人増えたところで誰も何も言わねぇだろうよ。エリクシルな機械の時点で世の中おかしいんだ。いずれにしろ、現場検証はこれからが本番なんだろう?」

「え……そうなの?」

「なんだ、もう空白の2週間は解決してたのか?」

「あっ、そうだ。まだだな」


 何か忘れているとは思っていたけれど、それか。


「ねえアツキ。空白の2週間って何の話かしら?」

「えっと、なんて説明すればいいのかな。僕がミモザな黒紫蝶を発見して落ちてから、下で気がつくまで一日だったはずなんだ」

「そうなの? わたしが憶えているのは、ここの崖下で横たわるアツキの手のひらからの記憶だけよ。その前は、真っ赤な血の海に溺れる直前までしか、記憶にないわ」

「え、なにその記憶。怖いんだけど」


 じゃあやっぱり、謎の2週間失踪はあったってことなのかな?

 三人で話した結果、やっぱり分からない。僕は一日だけれど、郷田さんは山の麓の登山道で別れて2週間。エリクシルの生命維持期限が確か10日だって記憶しているから、色々と計算が合わない。


「まああれだ。下に下りれば分かるだろう」


 結論はそれに尽きる。だね。




 籠に揺られ、切り立った崖をゆっくりと下降していく。

 突貫施工の断崖エレベーターは、予想以上にスムーズで、風もないから静かなもんだった。


 いやごめん嘘ついた。大人7人プラス妖精1人が、静かなわけがない。

 なんなら意気投合したのか、郷田さんの肩の上に乗ったミモザが、他の自衛隊員の人たちと談笑しているまである。


「いや、俺なんてこの間、リアル幽霊と遭遇したぜ。銃で撃って普通に壁に銃弾が着弾してさ。焦ったよ」

「どうなったのよ。幽霊なんて実体が無いんでしょ?」

「それ用のお守り? お札みたいなの支給されているから、投げつけたら消えたよ」


 とか。


「人面犬って知ってるか? びっくりして固まってたら近くまで来てさ、食べ物を要求されたんだよ。非常食渡したら『しけてんな』って言って、瞬きしたら消えてた時には生きた心地しなかった」

「コボルトと何か違うのかしら?」

「体は犬だったから、違うと思うよ。俺が止まったままだったから、呪いとか無かったし」


 みたいな。


 いやなんだよその、裏話的な会話。

 確かにミモザ自体がそっちの、超常現象的な存在だけれど、今その話?

 大学の講堂でやったディスカッションにもいた人たちだったから、僕の件で来てくれているとは思うんだけど、完全に僕は放置だった。まあ、聞いているだけで楽しかったからいいんだけどね。

 てか、自衛隊員って結構普通に、そういった超常現象的な何かに遭遇しているんだって思ったら、何だか近親感を感じた。


 まあさすがに、僕が魔法を使えることをカミングアウトとかしなかったけれど。

 喉まで出かけたけど、ぐっと飲み込んだのは秘密。




「よく、無事だった」


 崖下に下りると、楢崎教授を始めみんなが待ってくれていた。

 姉が無言で近づいてくると、そっと僕に腕を回して抱きしめてきた。まあ防護服越しだから江面は最低で、何だか締まりは無かったけれど。でもやっぱり、その、案じてくれていた気持ちは伝わったから嬉しかったけれど。


「さて、柏崎君……いや、柏崎教授もいるから、篤輝君の方が良さそうだな。調査の結果が出たから、改めて情報を共有しようと思う」

「え、もう何か分かったんですか?」

「ああ。空間の揺らぎを観測することができた。ちょうど篤輝君が落ちた場所の真上、少し前に白い巨大オオカミが出現した場所でもある」


 大きな、会議室を兼ねたテントで、衝撃の事実が判明した。

 崖上の落下開始地点と、崖下の落下地点。そのちょうど中間らしい。僕たちがエレベーターで下りて、入れ替わりに色々な機材がのせられて上がっていったから、既に調査が始まっているとは思うけれど。


 でもそうか、何かが掴めつつあるんだ。


「多分、異世界に繋がっているゲートだと思うわよ」


 そしてミモザの発言に静まりかえる会議室。

 

 うん。まだミモザの存在、みんなに言っていなかった気がしてきた。


 郷田さんたち、そのまま上に戻っていったからなぁ。僕も流れで報告していなかったし。

 何というか、絶妙なタイミングに思わず笑みが漏れた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ