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僕だけがハーフなエルフの件について  作者: 澤梛セビン
宇宙編

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33.出入船待機ロビー

 出入船待機ロビー。その脇にある制御室の通信端末の前で、姉が外の宇宙船と通信している。

 僕らはそれを取り囲むように、対話の様子を窺っていた。


 正面のモニターには、方舟と並行して航行する宇宙船が映っている。形は米軍の戦闘機みたいな感じで、ちょっとかっこいい。ただジェット推進じゃないみたいで、後部は丸くなっている。


「音声だとちょっと、何言っているのか分からないな。しばらく会話して、言語解析しないとか……」

「この映像は?」

「弟が付けたのではないのか? 外部カメラなぞ元々なかったはずなんだが」

「いや……どうなのかな、記憶にないんだけど」


 いや実際、ここ出入船待機ロビーが意味分からない。

 フロアを作った時には、エレベーター前の広いロビーをイメージしただけだったんだけれど、実際にエレベーターから降りたところで全員固まった。


 まず、見た目からしておかしい。

 シックな色合いの椅子とテーブルが並ぶ、まるで空港の高級ラウンジを彷彿とさせる内装。壁に大量に並んだ箱形の機械は、色々な食べ物の自動調理機みたいで、試しに餃子のボタンを押してみたら、お皿に焼きたての餃子が載って出てきた。意味わかんない。

 ドリンクサーバーも多種多様で、青汁なんて今はもう懐かしい飲み物まである始末。野菜ジュースがセロリ控えめで美味しかった。


 間接照明は自然な太陽光を彷彿させる色合いで、ほんのり温かい気がする。

 出入船待機ロビーの隣には、宇宙服や防護服を脱着するための更衣室があったんだけれど、専用の大型ロッカーを始め、シャワールームや仮眠室など至り尽くせりの設備が完備されていた。それだけでなく、その隣の医務室には、緊急オペ室とさらに大量のポーションが配備されていた。


 いや、ポーション。これがヤバい。

 姉に鑑定して貰ったら、普通に四肢欠損程度なら生えてくるような強力なもので、それがただのポーションらしい。どうなってんだろう。


「どんな生命体なんだろうか。俺は、グレイタイプだと思うんだが」

「あら、わたしはタコさん型だと思うわよ」


 しばらく時間がかかりそうだと悟った父と母が、ラウンジで軽食をつまみ始めた。相変わらず、我が親ながら自由だなって。笑えてきたよ。

 再び姉の前に視線を戻す。幸彦さんが横に椅子を持ってきて、画面を見て首を傾げている。


「よし、いくつか言語のパターンが分かった。会話の間に、同時翻訳を挟めそうだ」

「元の言語は、地球だとどこの言葉が近いんだい?」

「難しいな。基本が『グ』と『ギャ』の組み合わせの、単純言語系なんだが。長さと組み合わせでいくつかのパターンがある。ああ『ゲ』の音もあるのか」

「最初の通信が機械通信だったから、音声でのそれは想定外だね」

「ああ。うまくいくといいが」


 ところで、どうして僕らがまたここにいるのかというと、空間の揺らぎ昇華ツアーが高速回転し始めたことで、人手がこっちに回せなくなったからなんだけど。


 原因は、元々がバスの運転手だった人たち。

 あの手の運転手系の人たちって、運行に全力をかけている人たちが多くて、バス人になった人を見てほとんどの運転手が同じように、バスとの融合昇華を望んだんだって。その結果、最終的にバス50台体制でツアーが進行して、現場の手が足りなくなったらしい。

 

 そして変化は、空間の揺らぎにも起こった。

 巨大門が消えずに固定化されたそうで、門の境界にある虹色の幕を通過するだけで済むようになったんだって。この時点で、嫌な予感がすっごくするんだけど。


「よし、さっそく通信を繋いでみよう……お待たせしたね。こちらの言葉が分かるかい?」

『びっくりしたな、いつの間に我々の言葉を喋れるようになったんだ』

「同時翻訳をかけていてね、今もお互いに別の言葉を発しているよ。だから、喋れるようになったわけではないのだよ」


 いや、すごいな同時翻訳。会話に全く違和感がない。

 未だに相手の姿が分からないけれど、レーザー光線を使える宇宙船を複数持っている。僕たちみたいに、やっとの事で宇宙に飛び出した文明なんかとは、比べものにならないんだろうな。


『なるほど、そちらは我々より遙かに優れた文明を持っているようだな』


 ……あれ?


「それでさっそくなのだが、今回の直接通信の意図を聞かせて貰っても?」

『ああ、まず謝罪を。電信でも伝えたが、オクトパス13型は宇宙船にとって最大クラスの脅威なんだ。だから、討伐できたことは喜ばしいが、その過程でそちらを危険にさらした』

「ふむ。オクトパス13型とは、どういう意味なのだろうか」

『謝罪が……いや、いいのか? 宇宙蛸は、その脚が増える毎に、危険度が跳ね上がるんだ。基本の8本を1型とし、今回は脚が20本のために13型だ。13型は、一億人クラスの大型の宇宙コロニーが瞬時に蹂躙され壊滅するレベルの危険度だ。出発時点で100機編成の討伐隊が、残り10機といえばどれだけ危険か分かってもらえるかと思う』

「つまり、目的は燃料の補給と、あと可能ならオクトパス13型の回収辺りだろうか」

『…………お手上げだ。厚かましいとは思っている。助けていただけないだろうか』

「ああ構わない。ゲートを開けよう、歓迎する」

『いや無理なのは重々承知の上で――え、何て?』

「現在は正面左側のゲートしか進入口はないが、そこに向かって欲しい」

『……』


 声の感じから、相手が困惑していることは分かった。まあ普通は呆れるよね。

 この後、いくつかの形式的な通信だけして、姉が一旦通信を切った。幸彦さんも眉間に皺を寄せているし、ミモザなんて目がまん丸だよ。


「姉さん、よかったの?」

「この弟謹製のセキュリティは、わたしでも抜けられないだろうな。ミモザ君は、父と母をこの部屋へ呼んできて欲しい」

「ええ、分かったわ……」


 どうやら、僕の知らないセキュリティが、ここの出入船待機ロビーにはあるらしい。全く知らないんだけど。

 そうして父と母が制御室に入ってきた時点で、姉が制御室の扉をロックした。同時にエレベーターが隔壁で遮断される。すごいなこれ。


「よし、相手の宇宙船がドッグに入ってきた」


 そこで、僕の携帯電話が通知音を鳴らす。このタイミングで通知って、どういうことだろう。あの宇宙船に対して、ダンジョンとしてなにかアクションがあったんだろうか。


【ダンジョンへの新規入場者を確認。入場処理を開始します】


 通知文を見て、首を傾げた。まさかの、ダンジョンのなにがしが起動しているよ?


【魂を確認。通信端末を確認。魔式を導入しました。標準言語として、日本語を魂に書き込みました。方舟住民データベースに、個体情報を仮登録しました。本登録は入船管理局で直接処理してください】


 流れる文字を追っていたら、いつの間にかみんなが僕の携帯電話を覗き込んでいた。


「弟よ、これは?」

「ああうん、僕に分かるわけがないじゃないか」

【初めまして。Assist Intelligence、略称AIのマシキです。DCミモザの下位コアとして、今後は魔式全般を管理運営していきます。よろしくお願いします】

「え、何これ。ダンジョンコアのサブコアなんて聞いたことがない……あっ」


 たぶんあれだよね、方舟のメインエンジン。

 きっと、あの固定化した巨大門もダンマスである僕の『魔法』部分が忖度した結果じゃないかな。その集大成が『マシキ』なんだろう。


 まあ、マシキについては後でじっくり考えよう。


 まずはあの異星人らしき人たちの処理だ。


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