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僕だけがハーフなエルフの件について  作者: 澤梛セビン
地球編

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22/38

22.未来へ

 僕は一人、新東京都を見下ろせる丘の上に寝転んで、ドームの向こう側に広がる星の海を眺めていた。

 柔らかい風が頬をなでる。この風、どうやって吹かせているんだろうなんて、どうでもいいことを考えちゃう。ちょっとだけ現実逃避。


 いやほんと、どうしよう。


「ねえ、イブキ? みんなのこと、放っといていいの?」

「よくないけれど、どうすればいいのか……」


 家族のみんなには、ちょっと散歩に行くって言って出てきたんだけど、自分でもあの時は違和感半端なかったと思う。今も、少し離れた木の陰に4人が隠れていて、こっちの様子を窺っているいるのがわかる。

 ていうか、体がはみ出ていてバレバレなんだけど。


 失敗したかなぁ。

 部屋でミモザからもたらされた情報に、ちょっと考える時間が欲しかった。自分が魔法を使えている時点で今さら感は半端ないんだけど、その上を行く情報にちょっと処理が追いつかなかったんだよ。いやマジで。


 ダンジョン化――。

 ミモザの口から出たなんともファンタジーな単語に、心躍るのは僕だけじゃないと思う。


 方舟の最下層まで駆け抜けたあの時、ミモザが方舟のメインエンジンに沈んだその瞬間に、方舟はダンジョンになったんだって。

 外装を皮切りに方舟全体に魔法がかかって、不壊属性が付いた。つまり方舟が破壊不能オブジェクトと化したわけだ。そのおかげで、あの壮絶な噴火に乗って宇宙まで行けたらしい。


 そして、船に重力がある件について。


 そもそも宇宙空間に出た時点で、重力が足下方向にかかっている状況がおかしいと思うんだけれど、誰も気がついていない感じなんだよな。

 当然ながらこの船には、疑似重力発生装置なんて、そんな未来の技術は使えていない。


 ミモザ曰く、とっさに重力発生させた。後悔はしていない。らしい。


「何を悩んでいるのか知らないけれど、普通に話せばいいと思うわよ。たぶん誰も、信じないと思うけれど」

「そこなんだよなぁ……」


 首を巡らせて、一番頭がいい(?)だろう姉が隠れている木にじっと視線を向ける。そのまましばらく見つめていると、観念したのか木陰から姉が出てきた。


「やあ、弟よ。偶然だね、こんなところにいたのかい」

「いや、さすがに無理があると思うよ」

「む……そうか、今日は少し調子が悪いみたいだな。出直そう」

「待って待って、さすがに戻らないでいいから。話が進まないから――」


 無理矢理服を引っ張って、僕の隣に座って貰った。

 少しの沈黙。話し始めたのは、姉の方だった。


「弟がな、わたしたち家族に対して、何か後ろめたい思いを感じているのはわかる」

「いや、違うよ?」

「だがな、わたしたちは家族なんだ。疎外感をな、感じる必要は――」

「ちょっと待って、シリアスさん待って。ステイ、ウェイト」


 僕の言葉に、姉がキョトンとなった。いや珍しいな、機械神になって表情筋が固定されてから、初めてじゃないかなこんな顔。目を見開いて口をあんぐり開けて、僕を見ている。

 ちょっとした認識のずれなのか、僕が深刻になっていないのが意外だったんだと思う。その顔のまま、コテンと首をかしげた。


「他のみんなに話しても大丈夫か、姉さんに意見聞きたかったんだ。ミモザがさ、この中にいるんだけど」


 そう言いながら、腰元に何故か浮かんでいた携帯電話を姉の顔の前に持って行った。


「あ、モモカさんだ。三日ぶり?」

「…………ふむ。弟よ。亡くして寂しい気持ちは分かるが、さすがにこれは」

「違うよ、たぶん姉さんが想像しているのとは違うと思うよ、絶対」

「ふふふふっ、戸惑ってる戸惑ってる」

「いやミモザはミモザで、なに他人事みたいに笑ってるのさっ」


 姉が首を反対側にかしげる。それから悩ましげに目をつむって、額に手を置いて何かしばらく考えた後、目を開ける。再び首を反対にかしげた。


「いやこれは、どういうことだろう。そのミモザ君のプログラムがどこにも見当たらない。その、弟の携帯電話もハッキングして調べたのだが、なにも無い」

「いや、姉さん何してんの!?」


 苦言を呈した後で、僕が苦笑いしながら携帯電話を手渡すと、じっと画面を見つめる姉。


 でもそうか、もしかしたら姉は僕がおかしくなっちゃったと思って、心配してくれたってことか。普通ならミモザがいるって携帯電話見せられたら、そんな反応するよな。僕だって逆の立場なら、まあ。うん。


「本当に、ミモザ君なのかい?」

「あら、予想とは違う反応? そうだって言ったら、モモカさん信じてくれる?」

「ああ。もちろんだ。義妹の言うことだ、当たり前だろう」

「えっ……そ、えっ……」

「いやすまないな。泣かせるつもりはなかったんだが」


 横から僕の携帯電話を覗くと、ミモザが両手で顔を覆っていた。それをなんだか困った顔で見ている姉が、本当に自分の姉でよかったと思った。

 嗚咽が聞こえる。僕はしばらくまた、ドームを見上げた。


 その後、姉も含めて三人で少し相談した結果、ミモザのことは他の家族にもまだ話さないことになった。

 なんて言うか、最初に姉が反応したようにプログラムにしか見えないと言うのが主な理由だった。実際、ここ10年くらいでAI技術が急成長していて、ミモザと同じレベルで会話ができるアプリとかも普通にあって、逆にAIにしておいた方が都合がいいそう。

 そうじゃなくても昨日まで、ミモザのことは指名手配で捜索されていた。どちらにしても、知っている人を増やすリスクは、たとえ家族でも増やさないに限る。


「いずれ実体化させられる目処があるなら、今は隠しておく方がいいだろうな」

「たぶんコアが安定するまで一年くらいかかると思うの。実体化ができたとしてもその後かしら」

「どうせそのくらいは、方舟内部もゴタゴタしているだろうし。ゆっくりやろうよ」

「まあ、他の家族三人はわたしに任せておくがいい」


 そう言って姉は、僕と一旦別れて木陰の家族の元へ。

 そこで実際に何を話してきたのか分からないけれど、なんだか申し訳なさそうに出てきた三人には何の憂いも無い感じで、いつもの家族漫才をしながら僕らは家に帰った。


 夕飯をみんなで作って、また僕が弄られながら和やかに過ごし。お風呂に入ってから、部屋に戻った。

 テレビを見て、一緒にミモザと笑う。途中で幸彦さんが顔を出してきて、ちょっと慌てる場面とかもあったけれど、これがこれから始まる僕の日常なのかなって、なんだか嬉しく思った。

 そして就寝。もちろん枕元には僕の携帯電話。ミモザも一緒だ。


「ミモザ、おやすみ」

「うん、また明日ね。イブキ」


 そして僕は、穏やかに眠りに落ちた。




 かくして、僕の崖転落から始まった一連のゴタゴタは、最終的に方舟で地球脱出という形で一旦落ち着いたのかなって思う。

 ミモザの件とか、他にもいくつか細かい問題は残っていると思うけれど、まあ何とかなるかな。


 そもそも方舟がダンジョン化しているって点が、安心感として段違いなんだよ。ファンタジー脳で考えたって、ダンジョン化なんて完璧最強だし。


 次は長いだろう宇宙旅行。

 新しい生活が、楽しみだなって思った。


 いや、フラグじゃ無いよ!?


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