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真実を暴露する話

古井戸の上から真実を暴露する

作者: 氷桜 零


「魔王様!何故この案が許可されないのですか!?」


「くどい!そんなことに税金を使えるか。それより、先月の報告書がまだのようだが?」


「あ〜ははは、……失礼します!」



いつもそうだ。

あいつらは自分都合が悪くなったら、すぐに逃げる。

どれだけ皺寄せが来てるのか、わかっているのか?

いや、わかってないんだろう。



ほとんどの魔族は、落ち着いて考えると言う事をしない。

1に力、2に力、3、4、5も力だからだ。

力が全て、考えるのは弱者だと言い張る。

下剋上上等な考えだから、何処にいてもどんな状況でも気を抜けない。


そんな魔国だから弱い人間にも勝てず、土地は荒廃し、滅びに向かっていたのだ。

だから魔王からほど遠かった下級魔族であった私が、魔王になるしかなかった。


当時の下級魔族は、飢えと苦しみを抱えて、上級魔族から隠れるしか生きる術がなかった。

私はそれが納得できず、鍛えに鍛えたところ、魔王の力を手に入れた。

手に入れてしまった。


魔王になった私がまずしたことは、法律を作ること。

秩序を作り、何でも力で解決する魔族を抑制した。

流石に100年も経てば、国は落ち着いた。

だが私の周囲は落ち着かなかった。

強いものには服従するが、いつ寝首をかかれるかわかったものではない。


そして致命的に書類仕事ができない。

身体を動かすことしか考えていないあの脳筋どもは、それ以外で全く役に立たない。

幸い、下級魔族は考えることや書類仕事が得意なので、そちらに任せることができた。



ここ最近は、夜襲が頻発にあったため、あまり眠れてない。

趣味にも手をつけることができず、イライラが増していくばかり。


そんな日々を送っていた時、下級魔族に広がる噂を耳にした。

何でも魔王城ないにある古井戸に向かって叫べば、願いが叶うとか叶わないとか。

よくある眉唾物の噂の類だ。

決して、信じたわけではない。

ただちょっと気になっただけで。

私には関係ない。


……


気がつけば、私は例の古井戸に来ていた。

別に、本気にしてない。

ただ検証に来ただけだ。

ちょっとだけ、やってみるだけ。


私は古井戸の縁に手をかけ、息を大きく吸った。


「魔王なんて、嫌よ!なんで脳筋馬鹿しか、周りにいないのよ!?どうせなら、目の保養になる可愛いメイドさんにしてよ!いっそのこと、みんなメイド服を着ればいいの!そうしたら少しはマシになるかもしれないわ!」


『…………(いや、視界の暴力!!)』


「この前だって、栄養補給剤って何よ!?ただのプロテインでしょ!そんなもんに、税金かけるわけないじゃない!あの筋肉見るたびに、暑苦しいのよ!何度温度が上がっていると思っているの!氷山にでも行きなさいよ!」


『そ、そんな〜』


『確かに、暑苦しい。夏は本当に近寄らないでほしい。』


「夜に下剋上しにこないでよ!乙女の寝室に入るなんて、襲撃じゃなくて変態よ!睡眠不足は乙女の大敵なのよ!お肌に悪いじゃない!」


『グホッ……』


『上級魔族って、変態ばかりだったのね。』


『下級魔族でよかったな。』


「上級魔族の脳筋談に付き合うより、下級魔族とカフェや手芸の話がしたいのよー!キャハハ、ウフフしたいの!最近できた可愛いカフェにも行きたいし、フリフリのドレスも着たい!何で、黒一色の面白みのない服を着ないといけないの!?」


『魔王様……お気の毒……(フリフリの魔王様見てみたい。)』


『うぅっ……お可哀想……』


「手芸会にも、刺繍会にも行きたい!私の作ったネコちゃんとかリスちゃんを見てほしい!デカくてゴツくて可愛くない魔獣なんて、お呼びじゃないのよ!ついでに魔族もデカくてゴツいのは、お呼びじゃないの!小さくて可愛いが正義なのよ!」


『お呼びじゃない……そんな……』


『小さくて、ゴツいはダメですか!?』


「あと、可愛い彼氏が欲しい!姉妹みたいにフリフリを着て、カフェに行ってくれる人がいい!……つまり、もう魔王は嫌なのよーーー!!」


『立候補しようかな……?』


『くっ……俺は無理だ。いや、デカくてゴツくてもフリフリが着れればチャンスはあるか?』


『止めろ、馬鹿!』



ふぅ……

スッキリした。

たまには叫ぶのもいいかもしれない。

ん?


「何故、ここに妖精がいる?」


「僕はイタズラ大好き妖精だよ!みんなに知ってもらえて、良かったね!!きっと君の願いは……プフッ……叶うはず!」


「まさか、今の話……何処に流した!?」


「ま、こ、く、じゅ、う!!……エヘッ。」


「い、いやぁぁぁぁぁぁ!」


恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい。

知られた。

みんなに知られてしまった。

恥ずか死ぬ。

今なら、死ねる……。

でも、その前に……。


「こ、の、クソ妖精ーーーー!!」


私とイタズラ妖精の鬼ごっこは、三日三晩続いたのだった。


あの事件以降、周囲の視線が妙に生暖かく、いたたまれない気持ちになった。


だが良いこともあった。

可愛いもの好きの子たちと友人になって、カフェ巡りできる様になったのだ。

あと、可愛い、どストライクな彼氏が出来たことも報告しておく。




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― 新着の感想 ―
可愛い彼ピッピとカフェ巡りできる友達ができれば仕事が大変なのもなんとか…なんとかなる…かも〜〜!??ないよりはマシ!!かも?? そのうち魔王さまのいるところ、下級魔族の勤めるお役所になるような予感…
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