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プロローグ
いつから歪んでしまったのだろうか。どこで道を間違えたのだろうか。それを今も探し続けている。それは綴化した花のように異形でありながら、美しく、逃れられない運命だった。
手の中には、一冊の文庫本。ページの端が擦り切れ、幾度も読み返されたその本は、まるであの日々を閉じ込めた小さな牢獄のようだった。
あの夏。
麗華の笑顔。
あの選択。
すべては終わったはずだったのに、文庫本を開いた瞬間、時間が逆流しはじめる。
思い出すたびに心が擦り切れるようだった。けれど、忘れてしまうには、あまりに眩しすぎた。
右手に文庫本を握りしめながら、俺はただ一言、呟いた。
「ありがとう、麗華。……俺も大好きだよ」