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007 究極の魔術

読んでいただきありがとうございます。

後半は別視点です。もしかしたら後で修正するかも?

———白桜学園 体育館


「よーし、全員揃っているな。では防衛魔術の授業を始める。」 


 体育館に整列して授業を受けていると、まるで日本の体育の時間みたいだ。いや、厳密にいうとここは日本ではあるみたいだが、地球ではない。ついでにいえば、授業の内容も防衛魔術とかいう未知の内容だ。


 日本中から魔法使いが集まる白桜学園では、国語、数学、英語のような基礎教科に加えて魔術の授業がある。つい先日まで魔法や魔術とは無縁の生活を送っていた俺にとっては、不安もあるが興奮が上回っていた。


「まずこの授業についてだが、みんなには夏休みまでに2つの防衛魔術を習得してもらう。中間、期末テストはこの2つの習熟度によって成績をつけるからそのつもりで。なにか質問のある者はいるか?・・・よし、では早速始めるぞ。」


 おぉ、ついに始まった。俺はワクワクしながら授業を受けているが、周りはあんまりそんな感じはしない。というか白けている。あれ?防衛魔術って響きカッコよくない?


「みんなも知っているとは思うが、防衛魔術とは魔力を集めて自分の身を守る盾とする魔術だ。」


 先生の説明を受けてなんとなく察した。俺は防衛魔術なんて知らなかったが、みんなは既に知っているのだ。知っている魔術を今更授業で習うのが面倒なんだろう。


「防衛魔術には大きく分けて2つの種類がある。風間分かるか?」

「鎧型と盾型でござる。」


 突然ふられて即答する風間君、やはりこの辺は知ってて当たり前の範囲なんだろう。


「そうだ、アーマーとか障壁とか人によって呼び名は違うが、防衛魔術は鎧と盾の2つで構成されている。この防衛魔術を極めることで怪我や命を落とすリスクを大きく軽減できる。」


 魔力を集めて身を守る。シンプルでまさに入門編って感じの魔術だな。


「通常、魔術とは決められた術式があり、その術式を正確に構築し、魔力を過不足なく供給することではじめて発動する。つまり魔術にはそれぞれに決められた魔力量があり、それを超えた魔力を込めたとしてもその魔術は強化されない。それどころか正しく発動すらしないだろう。しかし、防衛魔術は身体強化魔術と同じで、術式を必要とせず魔力を込めただけ強化される。簡単だが奥が深い魔術だ。」


 おぉ、なんか簡単で便利そうな魔術だな。テストもあるみたいだし自主トレに追加しようかな。


「最近の流行りでは高度な攻撃魔術ばかり注目されているが、防衛魔術と強化魔術さえ極めればそんな攻撃魔術は通用しない。つまり、この2つの魔術は基本にして究極の魔術といえる。」


「・・・詭弁でござる。」


 ボソッと風間君がつぶやくのが聞こえ、思わず視線をやると目が合った。


「確かに強化術と防衛術は魔力をつぎ込むほど強化されるでござるよ。であるならば結局は魔力量勝負になるでござる。それを覆す為に高度な魔術が必要なのでござる。」


 小声で教えてくれた風間君の説明は、なぜか説得力があった。 


「よーし、じゃあ早速練習だ。みんな二人一組になってくれ。」


 うっ、苦手なやつがきた。コミュ症にとっては、その場でペアを組むのは難易度が高い。入学したばっかりで、知らない人が多いと尚更だ。俺が尻込みしているなか周りは次々とペアを組んでいる。マズイな、これは『余った人は先生と組んでね』パターンか?


「なにをオロオロしているでござるか?」

「あ、風間君。ペア組んで。」

「承知でござる。」


 よかった〜、これで気まずい先生ペアは回避だ。て、あれ?そもそもこのクラスは偶数人だから余りは出ないのか。


「組み終わったらそれぞれ前にボールを取りにこい。」


 2人に1球ずつボールが配られる。ドッチボールに使うような柔らかいボールだ。どうすんだこれ?


「では、お互い邪魔にならない位置に広がったら、魔力を起動しろ。もう防衛魔術が使える者は使っていいぞ。」


 指示に従い魔力を活性化させる。風間君は魔力を纏っているようにみえる。なるほど、これが防衛魔術か。


「よし、次に身体の周りを魔力で固めろ。イメージはなんでもいいぞ。ボールが身体に届かなくなるまで固めれたら完成だ。」


 ざっくりとした説明だな。まぁ、術式を使わない分

説明もシンプルになるのは当然か。


「ではまず拙者からでござるな。準備はいいからボールを投げるでござるよ。」


 風間君に言われてボールを投げる。緩く投げたボールは、風間君の胸の前で跳ね返る。やはり風間君は既に防衛魔術が使えるようだ。


「まぁ、こんなもんでござるな。次は宇山殿の番でござるよ。」

「よ、よし、やってみるよ。」


 そんなに気軽に言わないで欲しいがとりあえずやるしかない。まずは魔力練って身体の外に放出する、すごいスピードで魔力が減っているが今は無視だ。身体の外に出た魔力に干渉しようとすると案外簡単にコントロールできた。身体の周り魔力を押し留めるようなイメージで魔力の鎧を形成するが、所々から魔力が漏れている。最初だしこんなもんか?


「こ、これでできてるか?」

「うーん、まぁできてるっちゃできてるでござるよ。もしかして苦手でござるか?」

「ま、まぁな、あんまり練習とかしてないから。」

 

 喋りながら鎧を維持するのが難しい。風間君は先生に言われてからずっと発動しっぱなしだが平然としており、彼我の差は歴然だ。


「ではボールを投げるでござるよ。」

「よし、こい!」


 俺に向かって緩く投げられるボール、それを鎧で受ける。ボールは俺に当たることなく跳ね、鎧はボールが当たったことで砕ける。ちなみに鎧を維持する為に全力で魔力を注いでいたのでもうガス欠寸前だ。


「ふぅぅぅ。なんとか成功か。」

「うん、まぁ、ポジティブに捉えることはいいことでござるよ。」

「ん、なんか言ったか?」

「なんでもないでござるよ。」


 ちょうどそのタイミングでチャイムが鳴る。魔力切れの俺にはありがたい。号令をしていそいそと校舎に帰る。

 しかしだ、一回使っただけで砕けるし魔力も尽きかけた。周りは使えて当たり前、みたいな雰囲気だし明らかに俺だけレベルが低い。


「こりゃ、自主トレに追加確定だな〜」


 校舎に帰る足取りが重いのは、きっと疲れだけが原因ではない。





——— Side 陣之助

 


 拙者は風間陣之助。アニメが好きな普通の男子高校生でござる。本当は学校なんて行きたくなかったでござるが、ある目的の為に白桜学園に入学したでござる。しかし、勉強熱心な拙者にとって、高校の授業なんぞ既に知っていることばっかりでござる。授業中どうやって暇を潰すか入学前から考えいたでござるが、そんな心配は入学式の日にふっとんだでござる。


 宇山悠紀、普通科の生徒とは思えないほど多くの魔力を持っていた隣人でござる。魔力量だけでいえばSクラスに引けを取らないレベルでござる。しかし、同年代でそれだけの魔力量があれば拙者が知らないわけがないでござるが・・・・・・

 話した感じではどこにでもいるような普通の男子生徒でござった。軽く調べてみても一般家庭の一人っ子のようでなにも怪しくないことが逆に怪しく感じるでござる。


 そして、今日ついにその彼が初めて魔術を使うところを見て更に興味を惹かれたでござる。

 まず驚いたのがその魔力出力。保有魔力のほとんどを数分で放出しきる出力の高さに驚き、そしてその魔力の扱いのお粗末さに更に驚いたでござる。

 宇山殿レベルで魔力の量が多く、出力が高い学生なんてまず素人じゃないでござるよ。大体が名家の坊ちゃんか幼い頃からトレーニング積んだエリートでござる。しかし、そのどちらかであればあの魔術の下手さはありえない。最初は裏の人間が演技をしているのかと思ったでござるが、それならば魔力量や出力を隠すはず。現状では目立ち過ぎでござる。ではなぜ彼がこの学園に来たのか、そしてどこから来たのか。興味は尽きないでござる。


 宇山悠紀、せいぜい拙者の学園生活を盛り上げてくれでござる。

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