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004 箱入りのお嬢様

———アンヴィラド 御山市役所前


「お待ちしておりました。」


 突然スーツを来た男の人に話しかけられる。目が大きく、男性にしてはやや高い声が印象的だ。


「出迎えご苦労。このまま学校まで頼むよ。」

「かしこまりました。」


 どうやらこの男性は迎えの運転手さんらしく、背後に止まっていた高級車に俺たちを乗せて車は走りだした。


「こんな車はじめて乗りました。」

「確かにね、東京でこれを買おうと思うと2000万くらいはするからね。」

「2000万!?」


 この車は一見よくあるミニバンタイプの車なのだが、運転席側と後席側が仕切られており、後席はマッサージチェアのようなシートが2席あるのみだ。ミニバンの広い車内を贅沢に使い、座り心地も最高。走行音や揺れは最小限でまさにVIPといった感じだ。庶民の俺にとっては逆に居心地が悪いまである。

 

「やっぱり医者ってお金持ちなんですね。」

「いくら医者が高給取りだからといっても、このレベルの車を買えるのは一握りだと思うよ。そもそも、この車僕のじゃないし。」

「えっ、そうなんですか?てっきり先生が詐欺スレスレのことをして稼いでるのだとばっかり思ってました。」

「……仮にも命の恩人に、そんな失礼な事を言うなんて君も本性が出てきたね。」


 ジト目をむけてくるが気にしない。やられっぱなしは性に合わない。


 そうこうしている間に車は学校と思われる建物の敷地内へと入って行く。車が止まるとすかさず運転手さんが扉を開けてくれる。


「ありがとう、また夕方くらいに連絡するよ。」


 校舎へと歩き出した箱崎についていく。校舎の前には一人の女の子が立っていた。


「おや、わざわざ出迎えてくれたのかい?」

「ご無沙汰しております、先生。」


 女の子は制服を着ており、もしかしたら先輩にあたるのかもしれない。軽く会釈をするとむこうも返してくる。大きな目と肩甲骨あたりまで伸ばした黒髪が綺麗な娘だ。

 少し、緊張する。


「詳しい話は用事が済んでからにしようか。」


 箱崎に連れられ空き教室に入る。制服の採寸や書類の記入は10分程で終わった。

 

「じゃあ少し今後のことについて話そうか。」


 箱崎が教卓に立ったので空いてる席に着く。


「まずは、彼女についてだが。彼女は月島華憐君、しばらくの間君のボディーガードを依頼した。」


 月島さんが席から立つ。


「月島華憐です。どうぞよろしく。」

「あっ、えっと、宇山悠紀です。4月から入学します!」


 なんというか所作の一つ一つが上品な美人だ。


「彼女も今年入学予定の新入生だ。まぁ、クラスは違うが仲良くしてくれ。」


 同い年か。大人な雰囲気からてっきり先輩かと思った。しかし、こんな華奢な女の子がボディーガードとはなかなか信じられない。ていうか、ボディーガードなんて必要なのか?


「悠紀君、魔法使いを見た目で判断するのはやめた方がいい。彼女にかかれば君をミンチにするのなんて1秒もかからないよ。」

「えっ・・・?」

「彼女をボディーガードに選んだ理由は大きく3つある。1つは出自がはっきりしていること。月島家は代々続く魔法使いの家系でね、他国からのスパイや間者の心配をしなくていい。2つ目は責任感が強く真面目な性格であること。3つ目は魔法使いとしての実力の高さ。君と同い年で彼女にかなう魔法使いはいない、というか入学前の現時点で一般的な魔法使いよりも強いよ彼女は。」

 

 箱崎の言葉に月島さんは否定も肯定もしない。いいとこのお嬢様といのは納得だが、同世代最強はやはり信じられない。いやでも、この際そんなことはどうでもいい。そもそもボディーガードなんて必要ないんじゃないか?自分が拉致や襲撃の標的になる想像がつかない。


「そもそもボディーガードなんて必要なんですか?」

「では、そこから説明しようか。華憐君にも君を知ってもらういい機会だしね。」



「悠紀君は世界で初めての転移魔法の使い手だ。まだ使えないけどね。でも悠紀君の魔法を解析することで、様々な分野での技術革命が期待されている。魔法研究者からしたら悠紀君の魔力とは超貴重な研究サンプルなわけだ。もし、転移魔術の普及に成功したら得られる利益は莫大ものになる。単純な金銭的利益だけではなく要人警護や国防も転移魔術ありきの対策が必要になるだろうから、その影響は計り知れない。正直なところ国家をあげて悠紀君を拉致あるいは抹殺しようとしてくる国が現れてもおかしくない。」

「えぇ・・・そこまでですか?」

「そりゃそうさ、もし人類が人や物を自由に転移できるようになったとして、いったい何人の人が職を失うことになるだろう。もし日本の首相官邸にテロリストが転移してきたら日本はどうなるだろう。今パッと思いつくだけでもこれだけあるんだ。今自分が置かれている立場を理解したかい?」

「・・・・・・いや、でも俺はそんなことしないし、できないです。」

「そうかもしれないけど、そんなこと外野は分かってくれないよ。というか、君の魔力から転移魔術が開発されればもはや君がどうこうは関係ないからね。」

「あの、さっきから魔法と魔術って言ってますけど、なにが違うんですか?」

「そういえばそこも説明しないといけないね。あまり話を脱線させたくないから簡潔に説明すると、魔法とは魔力が持つ性質が具現化したもので基本的には固有のものだ。一方で魔術とは様々な公式を用いて固有の魔法を誰でも使えるように人工的に再現したものだよ。だから悠紀君が今後慎ましやかに生きていたとしても、君の魔力から転移魔術が開発され、それを悪用されると世界中で大混乱が起きるわけだ。その為にも悠紀君は一刻も早く自衛手段を確立する必要があるし、ボディーガードも必須だろ?」

「そう、ですね・・・あんま分かってないですけど、分かりました。」


 情報量が多すぎてよくわからなかったが、要するに俺はとんでも珍獣で、みんなに狙われてるってことだろ。どうしてこうなった!?


「あの、先生少しよろしいですか?」


 ずっと黙って聴いていた月島さんが手を挙げる。やはりこの少女が同世代最強というのは信じ難い。


「なんだい華憐君?」

「今のお話を聞く限り宇山さんはそもそも学校に通うことも危ないのでは?」

「確かに華憐君言うことはもっともだね、悠紀君を狙ってこの学校が戦場になりかねない。」

「ではなぜ・・・?」

「一応対策というか牽制はしてある。事前に悠紀君の魔力を回収して主要な国や研究機関に提供しているんだ。各機関の研究活動に積極的に協力することで日本が悠紀君の保護と育成を行うことを認めてもらう算段だね。各国としても1人の青年を巡って争うのは倫理的に避けたいんだろうね。この不可侵協定は近く国際魔術協会で採択される見通しだよ。これで公的な機関からの拉致リスクは、ある程度ないものとして考えられる。あと心配なのは、反社会的組織による拉致や抹殺だね、それについては学園に通う方が安全と考えているんだ。ここの学園は魔法界のエリートも指導する関係で教師陣も実力者揃いで、素性もはっきりしている。寮生活となれば学園の敷地外にでることもそうそうないしね。それに・・・」

「宇山さんを学校に通わせることでしっかりと宇山さんの保護、育成をしているという対外アピールにもなる、と。」

「そういうこと。」

「なるほど分かりました、では私はお勤めを果たせるように頑張ります。」

「あぁ、期待しているよ。といってもあくまで表向きのボディーガードが君ってだけで、他にも関係者はいるわけだからそんなに気負わなくてもいいよ。華憐君だって青春を謳歌する権利はあるわけだからね。」

「心得ています。」


 訳知り顔で話す2人についていけない俺。というかそもそも最初の段階で話についていけてない気がする。

 

「というわけで、悠紀君。華憐君がボディーガードにつくこと、自主トレが必要なことは理解してくれたかい?」

「えと、はい!」

「なら、今日はこれくらいでいいよ。とりあえず明日からは簡単な魔術の練習と魔法界の常識や習慣について勉強していこうか。」

「はい!」


 明日からは魔術の練習!ようやく魔法使いらしくなってきた、明日が楽しみだ!!

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