第2話 「登校」
旅立ちの日の朝。
「おはよう…」
眠い目を擦りながらぼやける視界の中目の前にいる人物に挨拶をする。
「おはよう九音いつもより早いじゃない」
私は九音。この国の代名詞とも言えるほど有名な学校に通う女の子だ。
そして私が挨拶をしたのは私の母だ。 手にもったメガネをかけ、母が疑問に思ってることを答える。
「 今日は学校最後の日だからね。友達との思い出を最後も作ろうかなって」
正確にいうと私が今日学校、そしてこの国から旅立つ日である。
「そう。お母さんもお父さんもあなたを送るために昼から行くわね。」
「うん。ありがとうそれまでに終わらせるよ。」
父はもう既に出発していたらしい。いつもは遅いが仕事をすぐに終わらせ私を見送るためだろう。
なんて暖かい家庭だろう。
何気ない会話を交わし、朝ごはんを食べた後私は家を出る。
学校までの道のりにはかつて存在していた大陸から渡ってきた「りんご」という赤くて甘い実がなる木が生えている。
実を実際に見たことはないが、この国の全ての知識をもってしてようやく1つ実ができたらしい。
そしてその1つは国王の近くに保存されているらしい。
噂では滅んだ大陸に存在した技術を改良した箱で腐らないように保存しているとか。
(噂なんてただの妄想だ。いつしか必ずこの目で見てやる。)
そんな妄想をしていたら、いつの間にか学校の門の前についていた。
「おはよー九音〜」
この気が抜けるような声は…
「おはよう。まひる…って寝癖凄いよ」
「えっ…うそぉ」そう言って肩を落とす彼女は「まひる」私の友達だ。朝はこんな感じではあるが、少し経てばとても元気で明るい女の子になる。しかしそれまではどこかだらしない。
「んんーでも九音もすごいよぉー?」
…訂正。どうやらだらしなかったのは彼女だけではないらしい。
「九音って今日だよね?」まひるが何気なく聞いてくる
「旅立ちのこと?」恐らくこのことだろうと思って聞く
「うんそう」
正解だったようだ
「そうだよ」
「じゃあ、旅立ちの日に前に真ん中の木集合ね!」
朝にしては眩しすぎる程の笑顔で彼女は言ってくる。
「わかった。他にも呼べそうな人いたら呼んでおくね。」
「うん!人が多い方がいいもんね!」
そんな感じに約束をし、私の教室まで着いた。まひるとは別のクラスなのでここでお別れだ。
「じゃあ後でね!忘れないでね!」
真剣なのかふざけて言っているのか。
「私をなんだと思ってるのよ」そう微笑みながら私はいつもより少し賑やかな教室へと足を踏み入れた。