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第十五話

 アニサスとリーキは、戸惑いながらも、私に同調してくれた。


「そうね。直接対決が一番早いのかもしれないわ」


 リーキは前向きに考え、頷いて言った。


「でも、相手が相手だから、危険は危険です。対策を練っていきましょう」


 アニサスは現実を見て言った。


「その通りだわ。作戦を考えて行きましょう!」


 リーキは勇んで指揮をとり始める。


「ダリアン王子を誘い出すしかないわ。ミンティア令嬢に、伝達を頼めるかしら?」


 私は、ミンティア令嬢をちらっと見て聞いた。


「私が伝達を?」


 ミンティア令嬢は、怯んだ表情をして聞き返す。


「ええ。事情を知っている貴方が一番良いわ。私が手紙を書くから、渡してちょうだい。死者がここまででている以上、嫌とは言えないわよね」


 ミンティア令嬢に有無を言わせないよう、声を大きくさせ、圧力をかけて言った。


 ミンティア令嬢にとっては、威圧的に聞こえたのだろう、何も言わずに頷くだけだった。


「さて、内容はどうたら良いかしら?」


 私は、リーキとアニサスを見て意見を聞いた。


「やはり、サーラさんがダリアン王子の秘密を暴露しないかわりに、取引したいというような脅迫文が良いのでは?」


 アニサスは考え深く意見を述べた。


「そうね。場所は、チースト科の猿に襲われた、最初の山がいいわ。人避けにもなるし、話がしやすそうよ」


 リーキもアニサスに同調して言った。


「山を場所指定するのは良いわね。むこうが一人で来ているかわかるわ。でも、取引って、なにを?」


 私は、交換条件など考えていなかったので、困ってしまう。


「ブースト科の豚の所在を話してもらうとかは?」


 アニサスが提案する。


「それだけでは、足りないわ。それプラス、私たちの国外への逃亡を手伝ってもらいましょうよ」


 リーキは、真剣な顔付きで言った。


「そうね。まずはブースト科の豚を見つけ、ワクチン開発をして、私たちは国外へ逃げる。それが、ストーリーとしてはベストね」


 リーキとアニサスの身の安全を確保しないといけない。私の実家へ行くのが一番安全である。


 しかし、それまで私の命はもつのだろうか。


「ええ。前向きにいきましょう。きっと、神が助けてくれるわ」


 リーキは、窓から差し込む光を見上げ、力強い声で言った。


「善は急げ。手紙を書くわ」


 私は、ミンティア令嬢から紙とペン、机と椅子を借り、急いで書いた。


〝ダリアン王子へ


 貴方が伝染病を広げた証拠を持っています。広められたくなかったら、ブースト科の豚の所在の情報と、私の実家への逃亡を手伝ってもらいたい。


 明日の9時に、チースト科の猿に襲われた山に、一人で来てください。


                サーラ〟


 私は、手紙を書き終えると、封をしてミンティア令嬢に渡した。


「明日の9時に指定しました。すぐに届けてください。この国を救うには、ワクチンが必要なのは、わかっているわよね?」


 私は、ミンティア令嬢に威圧をかけて言い、手紙を渡した。


「わかりました。ワクチンがなければ、この国の民が死んでしまう。やってしまったことの罪を、償っていきます」


 ミンティア令嬢は、真っ青な顔で言うと、手紙を持って、そのまま部屋を出て行った。


「私たちは、明日に備えて、作戦を練りましょう」


 そう言って、私は二人を促し、またアニサスの部屋に戻るため、城から脱出する。人が少ないとはいえ、やはり城内は危険であった。


「サーラさん、手紙に書いてあった証拠とはなに?」


 元来た道を早足で戻りながら、リーキは不思議そうに聞いてくる。


「ああ、それはね、録音テープよ。ミンティア令嬢の話、ダリアン王子の牢での話を、録音していたの」


 私は、胸ポケットから録音機を出して見せた。


「すごい、本当にあったんですね。さすがだわ」


 アニサスとリーキは、安堵をして笑顔になる。久しぶりの笑顔だった。


「やられてばかりでは、だめよね。さあ、反撃開始よ!」


 私は、熱で悪寒を感じていたが、笑顔を作って言った。


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