表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/18

第十二話

 翌日、体がだるくなり、発熱した。


 やはり、アニサスの作った薬草は、一時的にしか効果がない。


「サーラさん、休んでちょうだい」


 リーキは、心配そうに私に言う。


「リーキ、血清をとりましょう」

 

 私は、これ以外の選択肢が考えられなかった。


「でも、血清は本来、感染している動物からとるもので」


 リーキは、声高に言う。


「そうよね。だから、それをとりに行きましょう」


 私は、熱で悪寒が走るのを感じながら、リーキに説得する。


「でも、変異した豚がどこにいるのか謎のままです。山で見てから、誰も目にしていないわ」


「そう。多分、チースト科の猿だと思わせるために、ダリアン王子が仕組んだんだわ」


 私は、ベッドに横になり、考えられるだけ考えた。


「そうね。証拠隠滅のために、殺してしまった可能性が高いわ」


 リーキは、同感して頷く。


「でも、万が一でも生きているなら、そいつから、血清が採れる。もう、この方法にかけるしかないわ」


 私は、寒気で震えながら言った。


「わかった。探しましょう」


 リーキは力強い光を目に宿す。希望を捨てていないのだ。


「この感染症に、あの薬草はもう効かないとアニサスが言っていた。飲めるのは一度だけだと。あとは、弱っていくだけね」


 私は、体中が熱くなっていくのを感じていた。


「しかも、指名手配中よ」


「外に出るのは危険すぎるけど、行くしかないわ。まずは、ミンティアに会いに行く」


「ダリアン王子の婚約者の?」


「ええ。何か知っているなら、彼女しかいないわ」


 私は、確信を持って言った。


 そのとき、部屋のドアがギイと鳴った。


「誰?!」


 私とリーキが振り返ると、青い顔をしたアニサスが立っている。


「アニサス!良かった。無事だったのね!」


 私は、重い体を起こして、アニサスに駆け寄った。


「私は、大丈夫です。だけど、街が酷いことになっています。死人がどんどんと増えて、教会や病院や臨時の診療所は、死体だらけです。感染者は増加する一方で、街中、感染者で溢れてます」


 アニサスは、死体の山を思い出しているのか、肩を震わせている。


「私の作った薬草は、誰も信じてくれず、飲まない。むしろ、病気を広げているのではないかと暴言を受け、逃げ帰ってきました」


 アニサスは、苦い表情を浮かべて話す。


「ダリアン王子が、ハルファス王に仕掛けて、軍隊が動いているわ。ダリアン王子の指揮よ。私たちも、追われている」


 リーキは、現実を直視しようと、強い口調で言った。


「そうね。とにかく、ワクチンの血清をとるために、ミンティア令嬢に、会いに行きましょう」


 私は、先導を切るように言い放ち、アニサスに事の経緯を話した。


「城に戻るなど危険過ぎますが、今は致し方ない。血清さえとれれば、ワクチン開発ができる」


 アニサスは、強く頷き、注射器や駆血帯、

アンプル、包帯、採血管などを鞄に入れ始める。


 リーキもアニサスを手伝い、私も鞄に必要最低限の医療書と小型顕微鏡を入れ、準備が整うと、部屋を出て、城に向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ