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開演

相棒だったモノに冷たい視線を投げかけた。3人目で泣くのをやめた。4人目で心を閉ざした。今日死んだ5人目は良い奴だった。一番の敵は感情だ。感じることは何もない。そうあるべきだ。

しかし、相棒の顔が頭から離れない。声が耳から離れない。



"踊り子"のバディになれるなんて光栄です!

お前が心を閉ざすなら、俺がこじ開けてやる。

今日から相棒って呼ばせてくれよ。

お前の相棒は必ず死ぬって言うけど、そんなジンクスは俺が叩き壊す。

駄目だ!撤退しないと全滅する!

大尉...いや、シャル...もっと、一緒に戦いたかった...



「黙れ、黙れ黙れ黙れ、黙れ...黙れぇぇぇぇぇぇ!」頭の中で反響する相棒の声を掻き消すため、手近な岩に残弾を叩き込んだ。弾痕から光が差し、全てがその中に溶けていった。


夢から覚めるとそこは飾り気のない部屋だった。寝袋を畳んでから部屋の隅に転がっているボールを蹴り上げた。朝の準備運動だ。2人目の相棒の付き合いで始めた遊びだったが、今では日課となっている。ボールが跳ね上がる度に心地よい音が響いた。

キリがないので100回を超えた辺りでボールを止めて朝食を取り、着替えも済ませた。集合時間まで暫くの猶予がある。他にすることもないので再びボールを蹴り始めた。


かつて、彼女は軍の内外で"踊り子"と呼ばれ、敵からも味方からも恐れられた。敵は壊滅し、共に出撃した者は帰らない。今は傭兵団"ムジカ・エクス・マキナ"に所属している。構成員は5人だが、少数精鋭を極めた人間とエルフの混成部隊だ。


鋼鉄海獣使い ヴィルヘルム

装甲獣使い ヴィック

機械鳥使い ミュルス

魔銃使い シャルンホルスト

魔砲使い リカルド


沖に見えるのは鋼鉄海獣"エンタープライズ9世"だ。上空では機械鳥"グレイゴースト"がワイバーンを追い回している。制空権を確保してから機械鳥"ウォートホッグ"が敵拠点の地上部分を更地にする予定だ。3センチ多砲身砲では手出しできない地下部分の制圧がシャルンホルストとヴィックの仕事だ。

作戦が成功すれば数年はオーガ軍の侵攻を遅らせることができる。失敗すれば死ぬ。人間とエルフは不利になるだろう。が、死んだ後だからどうでもいい。

「シャル、ヴィー、もうすぐ二重奏の時間だ。沈黙が入ると客は眠くなる。降下地点までは座っているだけでいい。」ヴィルヘルムの指示でシャルンホルストとヴィックは機械鳥"ウォートホッグ"に乗り込んだ。

「ボクと2人で出撃か。不運だな。」

「仲間の寿命を喰うって話か?軍の連中とは違って、俺は簡単には死なねぇ。」

「3人目も、4人目も、5人目も、そう言って死んだ。」

「お前こそ、初任務でつまらねぇ死に方はするなよ。離陸する時間だ。口を閉じてろ。舌を噛むぞ。」


速度が安定してからヴィックが口を開いた。

「しっかしねぇ、機械鳥って奴はどうしてこう、座席が付いてるんだろうな。」

機械鳥は魂を持っている。他の生物、形状を考慮すると人間かエルフに依存していない限り、このような器官は必要ないはずだ。

「どうでもいい。だが、使える物は利用する。」

降下地点の手前で風防が飛んだ。直後に座席ごと空中に放り出された。

落下傘が開いて減速し、予定の地点に着地した。

入口には見張りが2体、奥に4体だ。

左右から振り下ろされた棍棒の先端が轟音と共に消し飛んだ。

シャルンホルストの両手に握られていた小型の大砲(.50BMGサンダー)は光の粒に変わり、銃身が下に寄った回転式拳銃が構成された。


オーガは6体だ。左右の2体が体制を立て直す前に胸に銃口を押し当てて心臓を撃ち抜く。

反動で跳ね上がった銃身が眉間に向いた瞬間にもう一度発砲した。残り4体。


敵の頭を結んだ線を想像し、銃口でなぞる。頭と銃口が重なった瞬間に引き金を引く。一連の動作で4体のオーガは成す術もなく骸となった。残りは4発、右2発、左2発だ。周囲に敵の気配はない。

「中はボクだけで十分だ。ヴィーは入り口の安全確保を。」

左の残弾を右に移し替え、空になった左のシリンダーをスピードローダーで補充した。

6発はベルトに挟んで4発は足首に固定した。光の粒子でF2000を具現化させる。F2000はベルトで肩から下げ、後ろに回す。次に箱型弾倉のPP-2000を二丁、左右の脇に下げた。最後にワイヤーで肩に結んだ二丁のP90を両手に持って準備完了だ。

「そんな重装備で踊れるのか?」

「自分の心配をしていろ。」

「ではお言葉に甘えて、お手並み拝見だ。」



突入したシャルンホルストはカーテンを開くように敵の防衛線を引き裂いていった。

主要坑を駆け抜け、脇道の敵を弾幕で洗い流していく。P90が弾切れになるとワイヤーで吊ったPP-2000に持ち替えて薙ぎ払う。隙を見てP90の弾倉を交換してPP-2000と持ち替え、撃つ。弾幕は絶やさない。

主要坑の6割を過ぎてP90の弾倉が尽きた。役に立たなくなったP90は光の粒子に返してF2000を前に回した。


PP-2000の弾が尽きたと同時に、突き当りの広い空間に出た。気配は二つ。キマイラとオーガだ。

「エルフ、コロセ!」オーガの命令に答えるように咆哮を上げた口に擲弾を撃ち込んだ。

「大口を開けてると虫が入る。気をつけろよ、来世では。」

支えを失った山羊の後足が前方に崩れ落ちた。尻尾の蛇だけが必死に威嚇していたが、5.56x45mm NATO弾を一発受けると頭を失って力なく垂れ下がった。呆気なく斃された猛獣を前に、オーガは呆然と立ち尽くしている。


「はぁ、全く」

人間とエルフは非戦闘員の殺害を禁じている。対照的にオーガは非戦闘員を好んで殺す。

この状況で目の前のオーガは非戦闘員になる。武器を持たず、戦闘の意思もない。この状況では。

シャルンホルストは踵を返して出口に向かった。

「オーガというヤツは」

オーガは棍棒を拾い、シャルンホルストの背後に歩み寄っていく。

「どうしてこうも」

背後に迫ったオーガは大きく振りかぶった。

「馬鹿なんだ」

シャルンホルストは体を大きく沈め、横薙ぎの打撃を紙一重で躱した。反転して足首の拳銃を抜き、空振りして態勢を崩した相手の下顎に向けた。しかし引き金を引かず、距離をとった。相手が態勢を立て直し、今度は真上から振り下ろして来る。今度は左足を踏み出し、横に体を滑らせて避ける。棍棒が地面を砕いた。飛び散った小石を軽く蹴って相手の目を傷つけた。下から振り上げる一撃を左足を軸に回転して躱しつつ相手の背後を取る。そして腎臓の辺りに銃口を押し当てる。まだ撃たない。振り向きざまの一撃を前転で躱し、再び背後に回った。後頭部に銃を突きつける。まだ撃たない。シャルンホルストはオーガの体力が尽きるまで踊り続けた。臓器だけでなく足の腱や鎖骨など、重要な点に照準を定めて、わざと撃たない。

地面に倒れ伏し、息を切らしているオーガの口に銃口を入れ、引き金を引いた。

これで終わりだ。生存者はいない。


洞窟の入り口に戻ると、相棒は死んではいなかった。ひとまずは安心だ。

「良い踊りだったよ。衝動的でありながら計算された精密な動作。そして上品且つ獰猛だ。鋼鉄海獣や装甲獣に比べたら戦力外だと思ってたが、気に入った。」

「何もしていない奴が偉そうに。女のエルフが血だらけでオーガの拠点から出て来たんだ。他に言う事があるんじゃないか?」

「お前の血は一滴も混じってないだろ。俺なら返り血も浴びずに制圧できる。乱戦ならお前よりも強い。次は俺の戦いを見せてやるよ。」

登場兵器

機械鳥"グレイゴースト"

 YF-23 グレイゴースト(2番機)

機械鳥"ウォートホッグ"

 A-10 サンダーボルト2

鋼鉄海獣"エンタープライズ9世"

 ジェラルド・R・フォード級原子力空母三番艦エンタープライズ

シャルンホルストの回転式拳銃

 6Unica 8インチ銃身モデル

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