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第参記 ハトウシャ

ヒッタイトの純粋な末裔まつえい?ヒッタイトは人喰いか?

「違う!それは俺だけだ」

名は何と云う?

「ハトウシャ」


○ハトウシャ

ハトウシャまたはハットゥシャ。ヒッタイト帝国の都の名。


「この場所に先祖が来たのは数百年前。平安の時代だ。親はヒッタイトの再構を夢見て、生まれた俺に名付けた」

逃げてきてひっそりと暮らしていたのだな。

「そう、しかし先祖はここで幸福に暮らしたのだよ。製鉄を教えた。ヒッタイトは隕鉄=隕石から取り出した鉄成分、を使ったが、ここでは海の砂浜や山中の川から砂鉄が取れた。それを利用した」

タタラか・・・・。


○タタラ

たたら製鉄。古代から近世にかけて発展した製鉄法で、炉に空気を送り込むのに使われるふいごが「たたら」と呼ばれていたために付けられた」。砂鉄や鉄鉱石を粘土製の炉で木炭を用いて低温で純度の高い鉄が出来る。


「だが、お前の刀の製法は妙だな。我らのやり方とは異なるようだ」

幸福に暮らした先祖なのに、なぜ?お前はこんな山奥で1人で暮らしている?

「平安王朝以後も我らは狙われた。このむらに。侍がやってきて、我らを出せと云った。隠すとお前らも殺すと。製鉄技術をぶん取るためにな。邑人は我らを山に隠したんだな。ところがバレて侍は邑人を連れてここに来た。」


異人は先祖の話を仕出した。

「南蛮人!出てこい」彼らは家族で洞窟に隠れていた。邑人は命が惜しくて居場所を吐いた。

「悪いようにはしない。礼を持って迎えよう。さあ、共に都へ」

嘘だな。奴隷化するつもりだ。

「行かぬ!わしらはここから動かぬ!」

ブン!侍は刀を一振りし邑人を殺した。「た、太助ーーー!!」

「出てこなければ、まだ続くぞ!」

先祖は出るしか無いと思ったが、ある薬を用意した。それを煮詰め、入口に向けて大きな団扇で仰いだ。

「ん?なんだ?窟の中から芳しい匂いがしてきたな」その匂いを嗅ぐと侍たちは倒れ込んだ。共に邑人も倒れた。そして刀を持った南蛮人が出てきた。

「き、貴様、毒を撒いたのか?」侍は抵抗しようとしたが、体が動かない。南蛮人は刀を侍たちに振るった。うぎゃああ。1人、また1人。全員を殺した。

邑人は窟の中に運び、寝かした。


しばらくすると、邑人は気がついた。

「あ、俺たちゃどうしたんだ?あの侍たちは?」

「殺した」

「え?!」

「変な匂いがしたろう?あれは私が調合した麻酔薬と云うものだ。全身が動かなくなる。侍の死体は、わしが隠す。お前らは邑に戻れ」

「太助が殺されちまった」

「私のせいだな。すまぬことをした」

邑人は帰って行った。

が、数日して大勢でやってきた。手にくわや落武者から掻っ払った刀を持っている。

「あれは?私らを殺しにきたのか?おい、お前はお供を連れて裏の穴から逃げろ」と、妻に告げた。「あなたは?」「話し合ってみる」


南蛮人は外に出た。「農民がその出立はどうしたんだ」

「奴らはきっと仕返しに来る。あんた方にここに居られちゃまずいことになるだ」

「・・・・・なるほど。そうか・・・・わかった。私らは他の土地に行こう」そして窟に振り返った時、わああああ。1人の邑人が襲い掛かった。うがあ!鍬を振り払ったのだ。「ぐう。な、何をする」

わああああーーーー

すると残りの邑人たちも襲い掛かってきた。

なぶり殺しだ。


邑人たちは南蛮人の遺体を見て震えた。そして泣いた。

「お前たちが居てはわしらは生きれない。居なくなっても追求されて、また殺される。だから、お前の死体を見せてやるんだ」


母親と子供たちは山中を遠く逃げた。そしてここに留まった。それがここだ。


・・・・俺が山中で倒れたのは、その麻酔薬と云うやつだな。日向は聞いた。

「そうだ」錬丹術師のようだ。

「母親、まあ、何世代前だが、我らの国では魔女と呼ぶな。お前に書を見せよう」

日向は共に奥に入った。狼たちはここに居なさい。


奥には木の扉を付けた部屋らしきところに案内された。扉を開けるとそれは幾多の書簡が棚に綺麗に保存されてあった。

これは?!

「ヒッタイトの歴史、そしてここに来た先祖の歴史の書簡だ」

すごいな。国学者に見せたら飛び上がるぞ。

見ても善いか?彼は頷いた。


日向は数冊手に取るとパラパラとめくった。これは何語だ?

「ヒッタイト語だ」

なんという遺産!多分、世界のどこを探してもこんなものは無いだろう。


近年、ヒッタイト語と思われる文字で掘られた石板が見つかった。

エジプトのツタンカーメンの遺跡からはヒッタイトが作ったと思われる刀も出土した。彼らは近国と広く貿易をこなっていたのがわかった。とはいえ、詳細は未だに謎である。


日向は悩んだ。

こいつは人喰いの犯罪者だ。しかし・・・・歴史から見ると生きたヒッタイトの証人になる。

どうすべきか?


すると傍にあった、刀をハトウシャが手に取り、日向に向けた。

「俺が1人だと云うことはお前しか知らない。お前は山を降りたらそれを邑人に話すだろう。奴らは俺は集団だと思って恐れている。1人だとわかれば必ず殺しにくる」

ま、待て!


その刀を日向に振るった。日向はそれをすんでで避けた。

やめろ!ハトウシャ!

本気だ。

日向も刀を抜いた。

狼たちも異変に気づき、飛んできた。

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