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009.ローマのパン屋さん(3)

「本当にお前らしょうがないな。飯食わせてるんだから、頑張ってもらわないと困るんだよ!」


 デキムスは昨日まったく仕事の役に立たなかった3人のペーツォ(天使)を早朝叩き起こし中庭にある別棟に連れて行った。


「ここは人が足りてるんだけど、まあいいや。3人もタダ飯食わせとけねえ…」


 別棟はレンガ造りでそこではパンこね工程が5、6人の女たちによって行われている。


「みんなおはよう!元気にやってるかい!?この子たちなんだが…」


 デキムスが話そうとするや否や、それを遮るように女たちは大騒ぎを始めた。


「あら〜かわいい子たち!!」


「そんな愛くるしい子たちをどこから連れてきたの、デキムスさん!?」


「こっちに来てよく顔を見せて!!」


 デキムスは呆れたような表情で首を振りながら言葉を続けた。


「だから、それを今話そうとしてたんじゃないか!先日、河原でうずくまってたところを助けたんだよ」


 パンこね女たちの中では最も年長のオプミアがまた話を遮るように言う。


「あら、助けただなんて!どうせ働き手が欲しかったんでしょう?さあ、あなたたちこっちに来てちょうだい!」


 女たちは6人すべて中年だったが、よく栄養が行き届いているのか、ポッチャリしていて肌艶がとてもよい。中には未婚者や夫を亡くした未亡人もいる。


 プルプラたちがデキムスに促されて女たちに近づくと、女たちは立ち上がってペーツォ(天使)たちを取囲み抱きついたり頬ずりしたり、腕やほっぺをつまんだりして愛撫した。


 ペーツォたちも嫌な気はせず、むしろ女たちの猛攻撃を喜んで迎え入れている。


「その子たちは力がないから男の仕事ができないんだよ。ここは人が足りているけど、雑用でもなんでもいいんで使ってやってくれないか!」


 年増女たちはデキムスの言葉を聞いて弾けるばかりに喜んだが、出てくる言葉は素直なものではなかった。


「あら?こんな可愛い子たちに重いもの持たせたの!?なんて酷いこと!」


 未亡人のフリアが芝居がかったような素振りでデキムスを責立てる。

 残りの女たちもペーツォたちを撫で回しながら、


「大丈夫だった?」


「痛いところない?」


「怪我したんじゃないかしら?手を見せてちょうだい!」


 と、我が子のように溺愛した。


 パンこね女たちの中では比較的若くしっかりものなティトゥリアが決意したようにデキムスに言う。


「とにかくこの子たちは私たちが責任を持って預かります!することはたくさんあるし、それよりも何よりも私たちが気分良く働くことが出来るわ!」


 デキムスは納得した。


「それは何よりだ…」


 デキムスはペーツォたちを振り返ってまた呆れたような顔をしてため息をついたが、女たちを喜ばせたことで内心は喜んでいた。


 

───プルプラ、スピーツォイ、セーモたちはデキムスが去ったあと、先ほど以上の歓迎を受けた。


 時間が経っても女たちのぺーツォたちに対する興味と興奮は冷めず、近くに座らせては体に触ってみたり、赤ちゃんをあやすような口調で喋りかけたりした。


 小さなコップに水を汲んで来るように頼むと、たったそれだけ心配し、


「大丈夫?転ばないでね!」


「重くない?ゆっくりでいいのよ」


 と、大袈裟に扱う。


 プルプラたち3人は、マルバスタ(地球)に転生して初めて受けた愛情にまんざらでもない。


 それでも女たちは自分の仕事はしっかりとこなし、6時のパン焼き班がパン生地を取りに来る前にすべてを終え手しまった。


 手が空いてこれで存分にペーツォたちにかまえることができ、愛撫はさらに激しいものとなっていく。


 女たちは顔を高揚させながらプルプラ、スピーツォイ、セーモに抱きついて接吻した。


「なんて可愛らしい生き物なのかしら!まるで天使みたい!」


 女たちは口々にそう言った。



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