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シスコン姉妹の異世界生活  作者: キリコ
9/40

お出かけは無期限延期




「結界内は歩いていいけど、もしその外に出るならみーちゃんは抱っこね。勝手に出ない事。」

「わかった!わかったから早くー!」


(これ、みーちゃん体の年齢に精神がひっぱられてるよね。さっきは大人みたいに話してたのに。興奮すると引っ張られちゃうのかな?・・・まぁそのうち安定するかな。なんたって新しい体になってまだ二日目だしね。様子見でいいか。)


 などと考えている内に、すぐに玄関についた。


「ちょっと待ってね。」


 妹と自分に日焼け防止の結界を薄くはり、昨日履いていた二人の靴の表面と底に結界を薄くはる。


この結界は、いや、結界と言っていいのか?日焼け防止の概念()みたいなもので、どちらかと言えばバフに近いかも知れない。なので物理的には囲っていないので物を触る事が出来るのだ。今作った。




「よし、履いていいよ。靴が溶けちゃう様な物質が無いとも限らないから結界はってみたよ。無いだろうけど念のため。」

「ありがとう!そっかー。魔物が毒吐いたりしたらジュッってなるのあるあるだもんね。それにしてもお姉ちゃんこんな慎重派だった?いつもエイヤってやって色々大体解決してたイメージなんだけど。やっぱり未知の世界だから?」

「そう言われればそうだね。こんな慎重に行動した事あんまり無いかも。(みーちゃんが関連する事柄以外に関しては)我ながらいつも行き当たりばったりだしねー。この世界に慣れてきたらいつも通りになるかもね。」


 私からすると、大事なかわいいかわいい妹と、未知の場所に居るのだから慎重になるのは当然だが、自己評価も自尊心も低い妹には言ってもきっと伝わらない。下手に伝えたらまた、逆に、自分のせいで、なんて考えて自分を責めそうだし。

 

 私達家族は精一杯愛情を込めて育てたつもりだったけれど、妹の自尊心がこれ程育たなかったと言うのは、やはり周囲の環境と言うのは、人格を形成する上でそれ程大きな影響を与えるものだったのだろう。私達三人は、どうして妹が周囲に受け入れられないのかが分からず迷走し、反動で溺愛してしまったとは思う。妹に何か、これと言う原因があればまだしも、優しく可憐で気立ての良い上に美少女という好かれそうな要素ばかりなのだから尚更分からなかったのだ。気が強くて他人にはドライな私の方がよっぽど嫌われそうなものだと言うのに。


 その様な思考は億尾にも出さず、話しつつ玄関から出ると、明るく日が差し、木に囲まれた広々とした公園の様な光景が目に入った。所々草地でなく土が見えているのは、昨日ハンマーで削り取った場所である。気温は丁度良く、空気も清々しく気持ちがいい。思わず深呼吸していると、広場をじっと見ていた妹が話しかけてきた。


「お姉ちゃん、ここさ、薬草いっぱい生えてるよ。魔力がみちみちにつまった草花たくさん。鑑定してないけどたぶん薬草でしょ。」

「ほんと?あ、そう言えば、さっきも魔力見えてるっぽい発言してたけど、どうやってるの?」

「あぁ!これね、魔力を目に集める感じ?メガネとかコンタクトみたいな感じで。そしたらできたの。」

「目に集める・・・。」

「念とかで戦う漫画を参考にしてみました!」

「なるほど!」


 アドバイスに従って、身体強化をかける時の様に、目に魔力を集め纏わせる。


 すると、視界が色とりどりの魔力らしきキラキラでいっぱいになってしまい、慌てて纏わせる量を減らした。そうすると細かいものから段々と見えなくなり、大まかなものだけになった所で減らすのを止めた。これでも薬草らしき草花に魔力がみっちり詰まっているのは、はっきり見えるので、このくらいでいいだろう。


「これ凄いね。魔力って綺麗。空気中に色んな色があるのは属性かな。」

「多分そう。因みにお姉ちゃんが目玉焼きに何かしてた時は灰色?銀色?みたいな色だったから無属性?かな?ゲーム的に。」

「ふーん・・・、じゃあ一先ず、魔力の詰まった草を鑑定しながら摘んでみようよ。」


 アイテムボックスからバスケットを二つ出し、重量軽減の魔法をかける。中に入れた物にも作用する様に。一つを妹が持ちやすい様に少し小さくサイズ調整。大きさの変更は大分慣れた気がする。


「はぇー、お姉ちゃんすっかり使いこなしてるね。凄い。」

「ええ?!そうかな。・・・と言うかみーちゃんに言われてもね・・・、目のやつとかさぁ。」


 続いて品質保持も付けようとしたが、何となく壊れる気がする。素材がもっといい物でないといけないと言う事だろうか?感覚的な物なので、確かではないけれど。代わりになんとかいけそうな、劣化速度減少を付ける。


「はい、これに入れてね。鮮度が気になるならいちいちアイテムボックスに入れてもいいけど、面倒ならこっちにどうぞ。」

「ありがとう!もう行っていい?」

「待って、絶対に結界の外に出ない事。それからお家の裏とかお姉ちゃんの視界に入らない所に行くのは禁止だよ。あと飲み物幾つか渡しとくからアイテムボックスに入れておいて。こまめに飲む事。守れる?」

「わかった!」

「はい、じゃあ行っていいよ。何かあったらすぐに呼んでね。」

「はぁい!」


 返事をするなり薬草がまとまって生えている所へ向かって行った。


(ここ十年くらい、いや、もっとだね。山や森に出掛けたりする事も出来なかったから、嬉しいのかな。みーちゃんに新しい健康な体をくださって、アカシア様、本当にありがとうございます。虚弱体質でも、病気じゃ無いだけありがたいよね。多分これからどんどん健康になっていくだろうし。不思議だけどそれはわかるんだよね。謎だ。)


 妹からそれ程離れない位置の、薬草が群生している箇所へ足を進めると、目に魔力を纏わせながら鑑定しつつ摘んでいく。まずは一番大量に生えているこの雑草にしか見えないシュッとした草だ。


 活生草(⭐︎⭐︎⭐︎)

 体力を活性化させる魔力を多分に含んだ草。


(これだけ?タッチで追加出るかな?)


 活生草(⭐︎⭐︎⭐︎)

 体力を活性化させる魔力を多分に含んだ草。

 魔力水で煎じると身体の損傷を回復可能な薬品   

 になる。


(なるほど、いわゆるHPポーションの材料ね。じゃあこの葉が厚めのよもぎみたいな草は?)


 養魔草(⭐︎⭐︎⭐︎)

 純粋な魔力を多分に含んだ草。

 魔力水で煎じると体内魔力を補充可能な薬品に

 なる。


(はいはいMPポーション。)


 この辺りに自生している薬草はだいたいこの二種類の様だ。


 どのくらいでまた生えるか分からない為、若芽は残しておく。と、言うよりも魔力がみちみちに詰まって見える物のみ摘んでいく。そうで無い物は(高品質)ではなかったからだ。


そうしていると変わった植物を見つけた。葉の形は正方形をしており、針金の様に硬く細い茎が一つの根っこから10本ほどまとまって生えている。


 (これ見たこと無いようなやつ。これホントに自然に生える草なの?ハサミでカットしてない?めっちゃ異世界〜。おっと、鑑定。)


 毒消草(⭐︎⭐︎⭐︎)

 魔力を多分に含んだ草。

 魔力水で煎じると毒物を中和可能な薬品になる。


(名前のままだな。しかも特定の毒じゃなくて毒ならこれ一つで大体対処出来る感じの書かれ方だよね?これ。凄すぎる。これも少し摘んでおこう。)


 毒消草を摘んでいると、どう見てもローズマリーな草花を発見した。よもぎに似た養魔草といい、似た薬草も多いのかもしれない。


(と言ってもハーブとか有名な物しか知らないんだけど。)


 ローズマリー(⭐︎⭐︎⭐︎)

 精神を覚醒させる、虫除けの効果を持つ。


(え?は?・・・名前そのままじゃん?・・・なんで?よもぎは違う名前だったじゃん。・・・もしかして、私達より前に異世界トリップした地球人がいて持ち込んだとか?養魔草ほど世間で知られて無いから名前はそのまま、みたいな。・・・それか、地球と何か繋がりがある世界だったりとか?)


 まさかの植物名に、動揺する。


(もし、もしもだけど、繋がりがあるならお母さん達といつか連絡取れる事があるかも知れない!)


少し希望が湧く。但し、妹にはまだ教えられない。両親の事を思い出させる様な事になるだろうし、もう少し精神が安定してから伝えたい。なんと言っても確定どころか、かも知れないレベルの憶測だ。


 一先ず気を取り直してローズマリーをある程度摘む。そうしながら妹に目をやると、楽しそうに薬草を摘んでいる。


(体調は大丈夫そうだ。楽しそうで良かった。)


 自分も薬草摘みを再開する。摘んでいるうちに、


 カモミール(⭐︎⭐︎⭐︎)

 精神を鎮静、整える効果を持つ。


 ラベンダー(⭐︎⭐︎⭐︎)

 鎮痛、鎮静の効果を持つ。


 ミント(⭐︎⭐︎⭐︎)

 冷感作用、殺菌、虫除けの効果を持つ。


 レモングラス(⭐︎⭐︎⭐︎)

 殺菌、虫除けの効果を持つ。


 

 などなど見つけてしまった。


(ローズマリーもだったしどんだけ虫除けしたいんだ。そりゃこの辺に虫いないはずだよね。)


 昨夜、慌てて結界をはった時もこの結界内に生き物がいなかったことを思い出した。


(でもミントが普通に生えてる割に、いわゆるミントテロ状態になってないのはなんなんだろう。地球の植物とは違うって事?地球の物と似てるけど効能の種類は少ないし。でも魔法がある世界だから調合では逆に薬並みにはっきりした効果があるものが作れそうで楽しみだな。薬事法?ここは異世界なのでしーらない。)


 そこでふと、妹が発見していたら植物名からこれらの事に思い至ってしまうのでは、と言う事に今更気が付いた。だが、妹にその様子はみてとれない。どうやらひたすら活性草と養魔草を摘んでいる様だ。


(まぁ、変に隠してもね。そこから両親の事に自分で気が付いたら、きっとその時が話し合う時なんでしょう。)


 そう自分を強引に落ち着けながら、時折妹を確認し少し移動しつつ摘んでいく。やがてカゴは満杯になった。


(ポーション作成の練習には、一先ずこのくらいでいいかな?)


「みーちゃん、どう?そろそろ満足した?体力減ってない?」

「うん、今は満足したかも。また摘みたくなるだろうけど!体力はー、減ってないみたい!」

「そっか。体に結界はって少しだけ外に探索に行こうと思うんだけど、どう思う?」


 私がそう聞くと無言で両腕を伸ばしてきた。抱っこしろと言う事は、一緒に行くと言う意思表示か。カゴをそれぞれアイテムボックスへしまう。


 抱き上げ、つよめに結界をはる。


「森の中がどうなってるのか少し探って帰るだけだからね。気になる物があったら教えてね。」

「りょーかい!」


(テンション高いな。この子今日も夜はぐっすり眠れそうね。)


 結界から出る前にマップを確認する。


 円形の結界の外に少し離れて魔物がポツポツと表示されている。感覚的には一番近いので五十メートルくらいか。結界から離れる程多くなる様な感じで分布している。


(結界を避けてる?)


 そっと結界から一歩踏み出すと、私達の点から魔物が、半径百メートル程ざっと一斉に引いて行った。


(まずい!)


 慌てて結界内へ戻る。


「みーちゃん、私達、考えてるより魔力強い方かもしれない。そして今日の探索は延期になりました。」


(今思えば、結界に魔物達が当たったり取り付いたりしてない時点で分かりそうなもんだよね。やっぱり家と結界のおかけで気が抜けてるのかな。私達が脅威でもなんでも無いなら、結界にガンガン当たって来そうな事ぐらい分かるよね。)


「え、え?」

「結界から一歩出た瞬間魔物がザッと引いたの。これ、どう言う事かわかる?」

「えーと、・・・うーん、・・・もしかして魔物達より魔力か何かが高いから、それを感じ取ったか動物的本能みたいな感じで逃げたかもって事?で合ってる?」

「うん。おそらくね。それを念頭に置いて考えたとして、私達が森を歩き回るとどうなると思う?」

「うーん、私達が歩き回ったら、えっと、魔物が逃げ回って・・・あ!!!」

「そう。運が悪ければ最悪スタンピードを起こしちゃうかもね。知的生命体の居住地に魔物達が向かってしまう可能性はゼロじゃないよ。敵を知る前にそんな敵対行動ととられかねない行動をとるのは得策じゃない。」

「何それ・・・。こわ・・・。」

「ここの魔物がさ、凄く弱い部類ならまだいいんだけどねー。分かんないじゃん?だってここ森の最深部だよ。最深部の敵は強敵って言うのがセオリーなので。まぁその場合、それに避けられる私達チートじゃね?って事になるんだけど。」

「そっかぁ。あ、でも私がよっぽど弱い個体じゃ無い限りお姉ちゃんは多分チートだと思うけどね。」

「なんで?」

「いや、だって私とお姉ちゃんのMPも中々の差があるんだよ?だから魔物が逃げた理由が強さだとしたら原因はお姉ちゃんだと思います。」

「うぐ・・・。ゴホン、えーと、と、言う事で今日は魔力を体内でぎゅっと抑え込む練習をします。」

「魔力を抑え込む・・・。」

「外に漏れなければ何でもいいと思うんだけど・・・。やり方は分からないけど、それができないと探索どころじゃないからさ。それぞれやってみようよ。」


 アイテムボックスから絨毯を出し、草地の上にひく。


「日焼け対策もしてあるし、外の空気気持ちいいからここでやろ。」

「ピクニックみたい!」


 早速靴を脱ぎ絨毯に座りこむ妹に続いて靴を脱ぎ少し離れて座る。


 座禅とか瞑想のイメージで胡座で座り、目を閉じた。




 魔力を意識しようとすると、段々と体のまわりに湯気の様なモヤモヤがあるのが分かる様になって来た。これが威圧の原因と思われるので体の中にしまおうとするが、意識して魔力を動かしたところは抑え込めても、他の箇所へかわりに多くはみ出す。


 しばらく頑張るが、何度やっても全部仕舞い込むのは難しい。となると体から飽和状態なのかもしれない。他の方法を探す。

 

 体内の魔力を今より高濃度に固めて、その空いたスペースにしまえないか試す。高濃度に固める方法として、水分を蒸発させるイメージで不純物を無くそうとするが、体の内部は中心へ行けばいくほど、すでにマグマの様にドロドロとしているかの様に濃度は高く難しい。


 今度は体内で魔力をシート状に整えたものを何枚か作り半分にたたみ、もう一度たたむ。それを袋状にした魔力に何枚か入れ、布団圧縮袋の様にぎゅっと圧をかけかさを減らす。すかさず空いたスペースに漏れ出ている魔力を押し込むと同時に、体の内側に沿う様に魔力で結界の様に外に漏れない様に膜を作る。


 ついに成功した!と思ったが、少し気を抜いた瞬間袋が破れ魔力が体内に溢れ出した。その勢いを殺せず膜も破ける。衝撃による目眩と頭痛を目を閉じてやり過ごす。なんとか落ち着いたところで目を開けると、目をこれでもかと見開いた妹に凝視されていた。


「・・・今のなに?とんでもない魔力の爆発だったけど、いったい何したの?お姉ちゃん、魔王にでもなるつもり・・・?」

「いや、あの、・・・魔力を圧縮したんだけど、保てなくて弾けちゃった。爆発自体は体内でとどめたつもりだけど、そんなに爆発感知した・・・?」

「凄かったよ。逆にそんなに平気そうにしてるのが意味わからないよ。絶対今の危ないやつ!その方法は是非やめていただきたく思いますが。」

「敬語やめて。ごめんなさいもうしません。違う方法考えます。」

「なら良し。」


(まぁ確かに危険かもしれない。もしかして私、魔力の操作が下手なのかな?先に魔力操作の練習するか。)


 目を閉じ魔力を認識する。気は丹田から発生してると言う話を読んだ事があるので、イメージの練習としてそれを採用し意識して丹田からゆっくり全身に循環させていく。速度を少しずつ上げ、慣れてきた所で、目を開けた。そのまま循環を続ける。意識を視界にもとられるからか、少し難しい。しばらくはこれの練習だな。生活しながら循環が無意識にできるまで練習だ。




 ふと妹に目をやると明らかに力がもの凄く弱くなっているのを感じる。まさかもう成功しているのだろうか?


 そう考えていると妹が目を開いた。


「お姉ちゃん、私できたみたい。」

「マジで?!」

「ほんとほんと。お姉ちゃんは?」

「うぐ。・・・できてない。みーちゃん凄すぎるよ。私魔力の操作が下手なのかもと思って先に魔力操作を練習しようと思うんだけど。」

「そっかぁ。お姉ちゃんステータス見なくても感じ取れるくらい明らかに私より断然魔力多いからね。それを抑えるのは確かに大変かも。」

「こんな落とし穴があるとは。悲しい。」

「じゃあ私はお姉ちゃんが訓練してる間、ポーション作りでもしとこうかな。一人で外に行くのは怖いしここなら薬草沢山生えてるし。」

「そっか、見てくるだけとは言っても何があるか分からないし、回復手段を用意出来るなら尚良いもんね。早く行ける様にお姉ちゃん頑張るよ!」




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