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シスコン姉妹の異世界生活  作者: キリコ
8/40

朝ご飯で問題発生



 意識が覚醒していくのを感じ、その感覚に身を委ねる。


 しばらくそうしてから、ゆっくり目を開けるとベッドの天蓋が目に入り、昨夜自分で建てた家だと思い出した。






 隣に妹が見当たらず、起き上がり布団をそっとめくると、脇腹の辺りに妹がくっついて寝息をたてている。


(こんなにちっちゃく丸まって寝て体休まるの?見てる分にはめちゃくちゃかわいいけど。ぎゅっとしたいけど、起こしちゃかわいそうかな。)



 ベッドに触れ、もし妹が起きたら私へ知らせる様に魔法をかけ、ベッドからおりる。魔法で身支度をしてもいいが、せっかくなので洗面所を使って見ようとバスルームへ向かった。


 バスルームは幾つかの部屋についている。もちろんこの寝室にも。




 洗面室に入るとホテルのパウダールームのようになかなかの広さがあり、五人くらいは同時に身支度出来そうだ。奥の方には日本式の浴室へ続く扉がある。


 目線を手前に戻すと、間をあけて二つ並んでいる洗面台の蛇口の頭部分には、赤から青へとグラデーションになっている縦長の小さなパネルがついていた。それをタッチすると温度調節ができた。蛇口の下に手を翳すと水が出るようだ。


 キャリーケースから出しておいた歯磨きセットで歯を磨き、洗顔フォームで顔を洗う。


(特に何も考えず予備の新しい歯ブラシ入れておいたけど良かった。予備の方はみーちゃんにあげよ。)



 アイテムボックスからゲームアイテムのタオルを取り出し拭いた後、タオルかけにそのままかけた。キャリーケースから同じく取り出しておいたスキンケア用品を顔に馴染ませていく。一通りすませると、空いている棚にアイテムボックスからストックのタオルや洗面道具をしまっていく。


(やっぱりきちんと洗った方がスッキリするー。魔法でも清潔にする事はできるっちゃできるんだろうけど。それにスキンケアした方がいいだろうし。)


 使っていれば、手持ちの物は無くなってしまう。それはメイク用品も同じだ。と、言う事はゆくゆくは美容用品を錬金術で作製せねばならない。


 


 そうしていると妹の目が覚めたと合図がきた。不安そうな少し震えた声で私を呼んでいるのが聞こえ、急いで部屋に戻る。


(しまった。異世界トリップなんてしたんだからそりゃ不安にもなるはずだ。一人にするんじゃなかった。顔洗うのくらい後で良かっただろ、私。)



「・・・いない・・・お姉ちゃん?・・・どこ・・・?」

「ここだよ。ちゃんといるよ。ごめんね、顔洗いに行ってた。」


 足早にベッドへ近づく。


「よかった・・・。いた・・・。・・・お姉ちゃんおはよう!」

「はい、おはよう。起きたならみーちゃんも顔洗おうね。」


 洗面室へ連れて行き使い方を説明する。妹も一通り顔を洗い終えたので、まずは着替えだ。


「さ、着替えようか。・・・みーちゃんの着替え無いんだったね。どうする?あ!アイテムで服も幾つかあったような・・・、あったあった。この中ならどれがいい?」


「えっと、うーん、・・・じゃあこれ!」

「オッケー、ちょっと待ってね。」


(・・・サイズ調整、魔法でてきるかな?)


 出来ない可能性が高いが物は試しと、みーちゃんのサイズを念じながら取り出してみる。



 ・・・どうやら成功したようだ。明らかに大人用ではないサイズを見るに、無事サイズ調整されていると思われる。


(魔法で出来ない事ってあるんだろうか。この世界便利過ぎる。魔法がこれだけ便利なら科学は発達してないかもなぁ。逆にこんな便利なものがあるなら研究され尽くしてるだろうし、想像つかないけど物凄く進んだ文明かもしれない。怖。やっぱ慎重にいかなくちゃ。)


「はい、どうぞ。着替え手伝おうか?」

「大丈夫!もー、私ほんとの子供じゃないよ!お姉ちゃん忘れてない?」

「そうでした。だって小さなみーちゃんのお世話楽しいんだもん。かわいいみーちゃんが悪い。・・・ストレスになるなら頑張ってやめるけど・・・。」


 そう返すと、呆れた様にため息をつかれる。


「いや、そんなに深刻に考えなくていいよ。ストレスなんて思った事ないし。それがお姉ちゃんだし。我慢は良くないんでしょ?嫌な時は今みたいにちゃんと言うから、その時に聞いてくれれば十分です。」

「はぁい。」

寛大な妹がそう話すのを聞きながら、キャリーケースからカットソーと替えのスキニーパンツを取り出しサッと着替える。振り返ると、妹も着替え終わったようだった。


 レモンイエローのふんわりワンピースがとても似合っている。小さなお姫様だ。はぁ、かわい。



「似合うね!世界一かわいい。撮影会したい。」

「ハイハイ、また今度ね!」


 こんなに美少女なのに昔から妹は自分の容姿に無頓着だ。おそらく、今まで他人からそう言う風に扱われてきた為だろう。


(私達がいくらかわいいって言っても、家族のよく目とか言い返されて暖簾に腕押し状態だもんなぁ。)


 そこまで考えてハッとした。


(まさかだけど、あちらの世界に魂が馴染んでなかったって話だったけれど、もしかして存在が認識され難いとか何かあったのかな?!他人にははっきり美少女に見えていなかったのかもしれない。)


 一度その可能性を考えてしまえば、そうとしか思えなくなる。今思えば、親しい仲ではない他人からはまるでそこに居ないかの様に扱われていた事も多かった様に思う(その度に私や幼馴染が怒っていた)。当時は嫌がらせだと思っていたけれど・・・。


 まぁそんな中でも、私の幼馴染は三人とも変わっている奴ばかりで、周りがそんな扱いをする中で割と初めから妹をかなり可愛がっていたけれど。容姿の事も美少女と言って構っていた。私が居なくても頻繁に会いに来ていた様であったし。


 すっかり忘れていたが、あの三人も帰省中に(おそらく妹に)会いに来ると言っていたのだった。突然私達が行方不明になって驚いている事だろう。


 そう考えたところで、いくら友人とは言え、人のみーちゃんに妙に執着していた様に感じていた事もあって、地球で何かいらぬ事をしないか不安になる。


(彼女達が男性だったら確実にめんどくさい事になってたな。その点は女性で良かった。・・・まぁ、もう会う事は出来ないだろうし考えても仕方ないか。)


「まぁ先にカメラを作らないと出来ないし仕方ない。よし、じゃあ朝ごはん食べよー。」

「はぁい。」






 言いながら向かった先は、昨日設置しながら密かに喜んでいた、アイランドタイプの中々に広いハイスペックキッチンだ。驚く事に炊飯ジャーやオーブンも備え付けられている。


 軽くフライパンを洗いベーコンを焼く。その間にロールパン・サラダ、それから平たい大きめのお皿を二枚取り出す。大きめのお皿にそれぞれに盛り付け、最後に目玉焼きを取り出し一つづつ乗せモーニングプレートは完成だ。


 使った道具の洗浄をサッと済ませ、準備を横からじっと見上げていた妹を席へつく様促す。


 ダイニングテーブルへ、盛り付けた朝食を並べる。ゲーム内ではオレンジに似ていた果物のジュースも出した。


「「いただきます。」」


(このベーコンすごく美味しい。あ、これもアカシア様の魔力?神力?だからかな。ん?)


「お姉ちゃん、これ全部すっごく美味しい

!あれ?・・・ベーコンだけ、なんか・・・。」

「これ、」


 ベーコンとそれ以外を食べて違いに気が付いた。


「魔力の総量が増えてる?」

「!!!それ!体の奥の魔力入れてる丸がほんの少しだけど強くなった気がするの!」


 慌ててステータスを確認する。


MP 1290148/1290148


(うん、しっかり増えてる。やばい。ちえの実じゃあるまいし、回復ならまだしも総量が増えるアイテムはそうそう無いのがテンプレだぞ。ただでさえ魔法メインな世界の可能性が高いのに!)


「お、お姉ちゃんこれ人に知られたら大変な事になるやつ・・・。」

「うん、危険度を分かってくれてる様で安心した。知られたら間違いなく捕らえようとされるし、最悪戦争もあり得る。」


(ただでさえ魔法メインの世界っぽいのに、尚更面倒臭い事になりそうとしか思えない。)



「でも逆にさ、この世界を主に支配してる生物が人間かどうかも分からないし、その生物より強くならないとそもそも危険だから、私達にとってはいい事だよ。きっと。」

「確かに。でもどうしてベーコンだけ・・・、うーん・・・、あ!ベーコンだけお姉ちゃんが手を加えたから?」

「ええ?私?」

「だってそれしか考えられないし・・・。焼いてあるのは目玉焼きも一緒だけどそっちは普通でしょ?目玉焼きは取り出した時点で焼かれた状態だったし。このベーコンが特別な生き物のお肉で出来てるとかじゃないなら、やっぱりベーコンだけ違うってなるとそれしか無いよ!」


(そう言われてしまうとそうとしか思えなくなって来た。もしかしてメイカーのスキルが、アカシア様お手製アイテムと合わさってバグ技みたいになっちゃったとか・・・?でもそんな事ある?)


「ちょっともう一度試して見るから待ってて。」

「私も見とく!」


 もう一度キッチンへ行きフライパンを温める。ベーコンだけがそうなのか他の食材もなのか確かめたいので、今度はベーコンではなく卵を焼いて見る。フライパンへ卵を落とすと、横で見ていた妹が声を上げた。


「お姉ちゃん!やっぱり!お姉ちゃんの魔力でなんかしてる!卵にお姉ちゃんの魔力が覆い被さってるよ!」


(なんと!?もしかして魔力が見えてるの!?この子スペック高くない?!・・・て言うか私何もしてないんだけど。)


「えぇ?何もしてないよ?」

「え?でも魔力が・・・。」

「もしかしたら神様提供素材な事とメイカーのスキルか称号が影響してるかもしれない。どっちもアカシア様に貰ったものだしね。あ、こう言う時こそ鑑定しよう鑑定。」

「それだ!普段使い慣れとかないと、存在を忘れてて対応にロスが出ちゃうね。」

「いざと言う時の為に鑑定使い慣れとかないといけないねー。」


  鑑定



 ヒイドリの卵の目玉焼き(神)


(やばい。(神)て。もうちょっと詳しく・・・またタッチででるかな?)


 ヒイドリの卵の目玉焼き(神)

 神力が漲っている

 取り込むと器を強化する


「ヒイドリの卵の目玉焼き(神)だって。(神)って素材レベルとか品質の事かな?レアとかノーマルみたいな。まさか生産者マークじゃないだろうし。そしてやっぱり魔力総量が増えるみたい。器を強化するって書いてある。」

「加工前の卵は?」

「ちょっと待って。」


 加工前の卵の同じ物を取り出し鑑定する。


 ヒイドリの卵(神)

 取り込むと魔力を補充する


「ヒイドリの卵(神)だって。こっちは魔力を補充するみたい。目玉焼きにした方は器を広げる感じで、そのままの卵は器に空きがあれば取り込んだ分を補充できるって事か。やっぱりメイカーも神様に貰ったスキルだし、ゲームで言うバグ技みたいになってるのかな。」

「ってなると、この世界の普通が分からない間は神素材じゃないこの世界の物を加工して食べた方がいいかも?もし神素材じゃない物を加工してもこうなるなら、もうどうしようもないけど・・・。あ!それなら私が料理すればいいだけだ。頑張るよ!」


(私達の魔力量ってこの世界的にみてどのくらいなんだろ。街とかがあるなら行って生き物を片っ端から鑑定するか?)


「うーん、ただでさえチートスキルいくつも貰ってるし、魔力の総量の並が分かるまではそうした方がいいかなぁ。でもみーちゃんが料理するのはその体じゃ不便じゃない?」

「う・・・、でも他に方法がなくない?」

「神様素材じゃなければ大丈夫だとは思うけど、そうなった時は街を探すのを前倒ししようか。そしたら買って食べればいいし。それまでの間だけなら総量が増えはするけど仕方ないと思おう。めちゃくちゃ増える訳じゃ無いし。そしてなるべく加工済みの方を食べよう。未加工の食材にしたって、増える魔力も今の総量からすると一食でめちゃくちゃ増える訳じゃないから、嗜好品程度に考えとこう。凄く美味しいからたまに食べたいし。」

「そうだね!他のも充分美味しいけど、お姉ちゃんが焼いたベーコンだけめちゃくちゃ美味しかったもんね。贅沢用にしよう!」


「そうと決まれば、今日は結界内を軽く見たら結界の外に食材とかあるか見に行ってみよう。木の実とかさ。今日の所は見るだけね。鑑定たくさん使って慣れる為にも。」

「行く!楽しそう!」

「じゃあ早くご飯食べちゃおう。」

「はぁい。」


 今焼いた目玉焼きは一旦フライパンごとアイテムボックスへしまい、テーブルへ戻り食事を再開した。


(パンにジャムを付けただけならどうなるのかとか、調味料かけたらとか調べたいけど、一人の時にしよう。食事中に実験みたいな事するの教育に悪いよね。いうてみーちゃんも、中身はもうアラサーだけど。体が小さいからどうしても気になる。私も慣れが必要かなぁ。)


「「ごちそうさまでした。」」


「お姉ちゃん、私食べながら思い出したんだけど、私もアイテムボックス使えるみたいなんだよね。爆薬と飲み物とかパイならいっぱいあるんだけど、お姉ちゃんに渡しておいていい?」

「そうなの?でもどうして?」


(ば、爆薬?!ああ!あのほのぼのなのに物騒な錬金術師のやつか!)


「私食べ物持ってても使わなさそうと言うか、飲み食い自体忘れてる事多いし、お姉ちゃんがいつもサッと用意してくれるから持ってるの忘れちゃう。それにお姉ちゃんの貰ってばっかりはなんか・・・。」

「家族なのにそんな事気にしないでよー!なんか距離を感じる!寂しいじゃん。じゃあ聞くけど、お母さんとかお父さんが用意してくれる物に遠慮したりする?しないでしょ!」

「それは確かにそうだけど・・・。」

「今はお姉ちゃんが、そのかわりなんだから気にしない!・・・それにみーちゃん、体ちっちゃくなっちゃってるの忘れたの?そんな子供に、対価みたいなの求める人やだよ。頭脳は大人って言ったって、出来る事は限られてくるでしょ?そもそも他人の子じゃあるまいし。もし体の大きさが逆になっちゃったとして、小さなお姉ちゃんに対して対価みたいな事考える?」

「それを言われると納得せざるを得ない・・・!」

「でしょでしょ。あ!そうだ、じゃあパイ関係だけ少し貰おうかな。食べてみたいし。少しだけね、少しだけ。そもそもみーちゃんも万が一の時の為に食べ物持ってた方がいいと思う。逆にご飯系を少し渡しておきたいくらいなんだけど。」

「なるほど・・・。凄くよく分かった。パイね!ほんとに沢山あるから是非貰って欲しい。」

「受け取るのはまた今度ね。」

「はぁい。」




 食事が終わり食器を魔法で洗浄ししまう。まだこちらに来て二日目だが、すでにこのルーチンにも慣れてしまった。


「よし、じゃあ家の周辺の素材探しに行ってみようか。」

「やったー!ずっと楽しみだったの!早く行こう!早く、早く!」

「はいはい。」


 返事しながら妹に手を引かれ玄関へ向かう。

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