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シスコン姉妹の異世界生活  作者: キリコ
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帰路に着く一行


「さて、ではお前達の仲間も準備ができた様だ」


 高価そうな装飾がされた細長い棒の様な、驚く事に恐らく木製であろう物で僕達の後ろを指し示され、ハッと後ろを振り向くと、車の応急処置や片付けが終わった皆が静かに集まり待ってくれていた。数名は見張りに散っている様だ。


「あの、尺出口を致しまして申し訳ございません。私共の領にお出でくださるとの事、誠でしょうか」


 隣から質問が飛び驚く。一体何を!?


「フィリッポス!?」

「そのつもりだが」

「宜しければ領城にてお世話させていただけませんか」

「何故その様な事を?」


 片眉を上げる仕草をされる夜の方。不審にお思いになられたのでは?フィリッポスが変な事言う筈もないのだから、と言う事は分かってはいるのに冷や汗が。


「不甲斐無い事ですが、おそらく城下の宿では不敬になる可能性が高く・・・・・・。いえ、領城ですらもご満足頂けるとは思えませんが、せめて、と思いまして。ご迷惑でしょうか」


 確かに! 僕は考えてもいなかったけれど、流石フィリッポス! 不敬の末お怒りを買えば、何も知らない民がどうなるか。


「そう言うことか。不敬などと、どうこうするつもりはない。その様にお前達が気にする必要は無いのだが・・・・・・、ならば教会に伝はあるか?」


 きょうかい?


「見聞が狭く申し訳ございません。きょうかい、とはどう言った物でしょうか」

「なるほど。そうだな・・・・・・神に祈りを捧げる為の施設などは存在するか?」


 神に祈りを? 一定以上の家なら祭壇があるだろうけれど・・・。でも施設って事は神殿の事?


「それでしたら、私共の領ではおそらく神殿にあたるかと思われます。伝、と言う事でしたら、私共の祖父が神官長を拝命しておりますので、それで宜しければ繋ぎは付けられます」


 フィリッポスが全部言ってくれた。お祖父様なら安心してお任せ出来る。・・・・・・一応また胃のお薬を持って行こう。


「その神殿ではアカシア様はどう言った位置付けになっている?」


 位置とはどう言う事だろう? 最高神の彼の御方ではないの? けれど最高神である事は皆知っているはずだし、この方こそがそれを知って居られない筈もないだろう。質問の意図が読めず何度も意を汲めないことに申し訳無さがつのる。僕も何か役に立ちたいのに。


「申し訳ございません、意味がよく分からず、あの、アカシア様とは最高神であらせられるアカシア神の事でしょうか?」

「そうだ。最高神か、認識に違いは無さそうだな。なら問題は無いだろう。」


 まさかアカシア神が最高神ではないと私達が認識しているかも知れないとお考えだったのだろうか?訳が分からない。


「世話は要らぬからその祖父の所へ案内してくれるか?対価は、そうだな・・・、」


 思い切って質問すると肯定され、よく分からないけれど何事か納得された様だ。周囲からぐるりとフィリッポスへ、目を巡らされた。


「お前達も一緒に故郷まで運んでやろう。その神官長殿への伝と合わせて、入る手続きを任せれば対価は見合うか?」


 領地まで運んでいただくなど畏れ多いにも程があるのでは!?手続きなどで釣り合うのか???


「それから紅玉の。あのタリスマンは神官長殿に渡す事だな。どうせ貰い物であろう? その時に入手した経緯も合わせて伝える様に」

「はい、その様に致します」

「渡しても何も対処しない様ならまた私に言いなさい。お前達には米を探して貰わなければならないのだから、いらぬ揉め事は直様解決してしまわねばな」

「承知致しました」


 そうだった! あの装飾品が何か問題ありそうなんだった! 僕もフィリッポスに後で詳しく聞かなきゃ。


 その後、女神様がお座りになっていたあの金色の神々しい敷物(?)をかなり大きく広げ、信じられない事に車や人、竜馬に、運べないと諦めた荷まで全て乗せる様指示された。


 皆、畏れ多いと思いながらも反駁できる筈もなく、急いで言われた通り乗せていく。汚れたまま乗せるのが忍びなく、せめてと、乗せる前に僕とフィリッポスで車や荷に次々と洗浄をかけた。洗浄は使用魔力量が少々嵩む上精度の振り幅が大きい為、騎士達にはさせられない。彼らの魔力は僕達を守る為のものだから。最後には僕達にも全員の靴にもかけられる程の魔力は残っておらず、皆各々靴を脱いで乗り込む。夜の方には苦笑しながら気にせずとも良いとは言われたけれど、女神様がお座りになられる様な物に、土足で上がれるわけがない。想像しただけで胃がキリキリする。そもそも乗るだけで畏れ多いと言うのに。




 イーリオから報告を受けたフィリッポスが、全て載せ終えた事を申し出る。女神様は既に御車にお戻りになったご様子だ。


「そうか。落ちないようにはするが、怪我をしないよう車が動いたり動物が暴れないか気をつけなさい」

「御意!」


 怪我をしないように??? ですって?


 いくら対価と言えど、神々がこの様に一々小さな事に心を砕いて下さる事が信じられない。いや、確かに命は助けて頂いたのだけれど。だって他で聞く神とは、災厄とは言わないまでも、理不尽で大変な思いをする様な話ばかりなのに。


 いや、古代の神々ならばいざ知らず、恐らく現代ではこの方々だけが違うのだろう。とは言っても夜の方もはじめよりお優しい気がする。女神様は最初からお優しい方だったけれど。


「では出立する」

「「はい」」


 そう考えるとどうも僕達は、とんでもない幸運に巡り合わせていただいたみたいだ。アカシア神よ感謝致します。






 それから領に着くまでは本当にあっという間だった。


 夜の方が出立をお告げになると同時に、横につけられた女神様のいらっしゃる御車ごと、見えない四角い箱の様な魔力に囲まれたのを感じた。あれが恐らく落ちない様にすると仰っていた何かなのだと思う。この魔力が最初はあれほど恐ろしかった筈なのに、今は安心すらしている自分に、内心で少し笑ってしまった。


 最初に、丸ごとふわっと僕の背丈程浮いたかと思うと夜の方は一度首を少し動かしこちらへ目をやり、直ぐに前に向き直られるとぐんぐんと高度をお上げになった。今思うとあのチラ見は僕達の様子を確認してくださったのかも知れない。一度優しいと感じたからか、色々な事がそう思えて来る。





 その様な高いところを飛ぶと言うのは初めての事で、静かながらも僕だけでなく皆も興奮しているのをひしひしと感じた。仕方ないだろう。むしろ静かにしていられただけ褒めて欲しい。


 あの様に高く飛び上がるとかなり遠くの地まで見渡せ、晴々とすると言うか、不思議な、ひどく爽快な心地がする事を知った。とにかく気持ちの良い景色だった。


 気のせいかも知れないけれど斜め後ろから見えた横顔の夜の方が、少し苦笑していらっしゃった気がしたので、ばれていたのかも。


 その様に楽しさが先に立ちあの様な高所に恐ろしさをあまり感じなかったのは、揺れも何もなかった事と、やはり目の前でご一緒してくださったからだと思う。我ながらこのたったの数時間で、この方へ信頼を寄せすぎているかも知れないけれど。


 けれど仕方ないだろう。友の命を救っていただいた上に、圧倒的な御力を持ち、それに裏打ちされた自信に満ちて、かと言って、他に聞く名もなき神々の様に横暴な振る舞いはなさらず。番の女神様を大事にしていらっしゃるのを見ると、本来はそう言う方なのだろうと一層尊く思う。恐らくアカシア神より名を戴いていらっしゃるに違い無い。この方を主として戴き、着いていけたら、などと有りえない事を思ってしまった。白の次期族長として許されない事なのに。そう思うと最初はその様になる筈だった事が惜しく思えてくる。勿論、夜の方のお決めになった事に反する気は無いけれど。





 故郷が目視出来てくると、急に郷愁にかられた。この数時間で色んな事が起こったのだし、無理も無いと思って欲しい。サヴァジュで何をしていたか曖昧になりそう。


「実に濃い時間だったな」


 チラと隣を見て目が合ったフィリッポスがしみじみと呟いた。


「そうだね・・・・・・。フィリッポスの感は正しかったみたいだし」

「そうだろう! やはり話の通じる方だったな。番の姫のお陰も大いにあるだろうが。依頼の話も含めて慈悲深い方々だ。ま、何はともあれ着いたら直ぐに領城と爺さんにコレを先触れに出さなきゃな。経緯を一応書いたが・・・・・・信じて貰えるかどうか」


 いつの間に。流石としか言いようがない。普段は大雑把なのに、いざという時は本当に頼りになる。それに比べ一人で浮かれてた僕って・・・・・・。同じ次期族長なのに・・・・・・。


「信じなかったら信じなかったで、信じてくれない方が悪いのでは? そこは僕達にはどうしようもないし・・・・・・。取り敢えずお祖父様へはジュリオ、領城へはイーリオで良いかな?」

「そうだな。あの二人なら上手くするだろう、良いんじゃないか? まかせる。とは言え信じられ無いのも仕方ないだろうがな。お祖父様は大丈夫だろうし、領主様ならどうにかして下さるだろ」

「ふふ。そうだね。むしろすっ飛んできそうだけど」

「やめろ、有りそうで困る」


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