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シスコン姉妹の異世界生活  作者: キリコ
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其々の決断



 駆け寄ってきた皆に泣かれたり抱き締められたりもみくちゃにされていると、いつの間に出現したのか、テーブルとソファに収まられた夜の方から声を掛けられた。


「車を動かせる様に修繕したり荷を片付けたりするだろう?私は此方で待っているから急がず準備しなさい。その後で別れの挨拶をすると良いだろう。」

「あ、ありがとうございます。左様にさせていただきます。」


 気遣われ意外に思うも、よくよく考えればなんだかんだ言いつつ助けてくださったのはこの方なのだ。慈悲深い女神様のお言葉があったにしても、本当に不快ならば実際行動に移しはしなさそうな方の様に思うし。かけてくださるお言葉も他の土地の神々に比べ理不尽ではなく。それに僕が嘆願した流れに至っては、今思うとまるで決められている様な具合だった。もしかすると、神々には慈悲をかける際の取決めの様なものがあったりするのだろうか。冗談には驚かされたけれども。


 夜の方のお言葉が聞こえてか、皆が片付けを始めた。荷を乗せていた車が横転していて、起こすのを僕も手伝おうとするも断られ、フィリッポスに確保される。





「お兄様、わたくしも其方へご一緒してもよろしくて?」


 ハッと声の方へ振り返る。まさか女神様がお車からお出でになるのだろうか?けれども御車から流れ落ちている(恐らく)御衣装の(恐らく)裾から察するに、この様な荒野には到底似つかわしく無く(あの様に遠目でも分かるほどキラキラと輝く極上の布を、お車からはみ出す程たっぷりと使った御衣装をお召しなられる女神様は、さぞかし高貴な麗しい方に違い無い)、きっと夜の方がお許しにならないだろう。


 


「ならん。お前はそこに居なさい。そこが一番安全なのだから。」


 やっぱり。


「まぁ!その様なある筈もない事!お兄様がそちらにいらっしゃると言うのに。お兄様のお側が一番安全な事など、赤子でも存じていてよ。危険があればすぐ戻りますから。ね、お兄様。」


「・・・はは、全く。かわいらしい事を言う。仕方ないな。いいだろう。待ちなさい。」


 と、思ったがそんなことは無かった。嘘だろと思ってしまう程、女神様のおねだりにあっさり負けお許しになった。この方もしかして女神様にめちゃ甘なのでは・・・?

 

 夜の方は椅子を何処かへやり、コツコツと硬質な音を鳴らしながら(空中なのにどうして?)お車へお戻りになり、女神様をお連れになった。



 女神様は夜の方と同じく、艶やかな黒檀の長く美しいおぐしにこちらも同じ夜の瞳のとんでもなく麗しい少女であった。少なくとも美形を見慣れているはずの僕が、思わず感嘆の溜め息をついてしまう程には。


それに加え、恥じらってか、平たい何か(木目がある様に見えるけどまさか木製じゃないよね?見間違いだよね?)でお顔をお隠しになったその仕草が大変お可愛らしく、夜の方が甘々になるのも致し方無い事と思われる。


 お二人がお揃いになると神々しさが増し、ほんの少し夜の方の美貌に慣れていた気がしていたが、振り出しに戻った心地がした。



「おい、おーい!おいって!エウメネス!聞けよ!」


 肩を掴まれ揺さぶられ、呼ばれていた事にようやく気がついた。感じからして何度も呼ばれていたらしい。ごめん。


「あ、ご、ごめん。」

「あのお方々が気になるのは分かるけどな。お前、自分の事も心配しろよ!これからどうなるか分からないんだぞ!」

「とは言ってもそれを対価に差し出したのは僕だし・・・。」

「だからってお前、何の為に俺が庇ったと・・・。」

「分かるよ。ただ単に、僕に死んでほしく無かったんでしょ?僕もあの時フィリッポスが死なないなら何でもいいと思ったし。だから満足なんだ。まぁ死にたいかって言われたらそれは違うけど、後悔はしてない。」

「はぁ・・・。それはそうだが!俺は納得できない!お前が死ぬくらいなら俺が。これからお前無しで生きていかなければならないなんて・・・。無理だ・・・。」

「ごめんね。親友を悲しませる、僕の自己満足なのは分かってるんだ。・・・それでも君の死は受け入れられなかった。淋しいけどここでお別れだ。」

「いやだ!こんな事!俺たちが何をしたと言うんだ!・・・ハッ!そうだ!俺にも半分対価を肩代わりさせろ!それなら平等だろう!本当に死にかけていたのは俺なのだから、おかしな事ではない筈だ。」

「ええ?そんなのあの方が面倒にお思いになるんじゃない?」

「お頼みするだけしてみたい!呼ばれたら、俺も近くへ行っていいか許可を貰ってくれないか?」

「ご不興をかわなきゃいいけど・・・。」

「そうかも知れないが、お許しくださるかも知れないだろう!ご不興をかったとして、どうせお前を失う事を思えばそれならそれでいいんだ。」

「そんな賭けみたいな事、みんな納得してくれるのか?無理じゃないか?」


 フィリッポスは一つ頷くと、僕の肩から手を離し、皆の方へ向き直った。


「皆、聞いてくれ。作業しながらで構わないから。」


 フィリッポスは短く息をはくと、強い意志を感じさせる表情で言葉を続けた。そう告げられはしても、皆は聞く体制に入った様だった。


「俺は、エウメネスの対価を半分肩代わり出来ないかお伺いするつもりだ。」


 イーリオが顔を青褪めさる。まぁ、そうだよね。


「何を・・・!エウメネス様がどの様なお気持ちであの様な申し出をなさったか!それを不意にするなど、おやめください!」

「俺とてその様な事分かっている!それにあの方は他の神々に比べあまり理不尽な事はなさらない気がするんだ。聞き入れて下さる可能性も無いわけではないだろう。ここでエウメネスを失って、俺がのうのうと生きていけると思うか?」

「ですが!あなた方を主と定めた皆をお見捨てになるのですか!お二人ともを失うなど・・・!」

「それは・・・、その事はすまないと思っている。だがあの時お前達の半数を連れて戻る選択を取れなかった時点で、俺たちは領主の器では無いんだ。」

「その様な事ございません!領主が必ずしも完璧である必要など無いではありませんか!少しずつ補う為にこれから部下をお選びになるのですから!そも、領主にならずとも、あなた方にお仕えしたいからこそ、皆こうして・・・、どうしてなのですか、皆、どれ程楽しみにしていた事か・・・!」

「・・・すまない、イーリオ。皆。」

「どうか・・・、どうかお考え直しください!どうか・・・!」

「すまない・・・。」

「・・・、・・・・・・ハァ、・・・分かりました・・・。それでしたら、私もご一緒させて頂きます。」

「ダメに決まってるだろうが!お、おい、お前目がすわってるぞ。」


 なんか不味い方向に話が行き始めた気がする。


「どうしてもお考え直し頂けないと言う事ですので、私もお二人にご一緒させていただく事にしました。主人をかえる事など出来ませんので。ええ、氷下の向こうまでお供させていただきますとも!」

「ばか、そんな事出来るわけないだろう!」

「フィリッポス様、エウメネス様、私もご一緒致したく存じます。」

「は!?ジュリオはもうすぐ結婚するんだろうが!ダメに決まっている!」

「いえ、彼女なら賛同してくれる筈です。」

「私もお願いします!」

「私達も!」

「私もご一緒させて下さい!」

「私も!」


 イーリオだけならまだしも、他の者まで!これ、全員じゃない!?それ程慕ってくれていたとは思っても見なかった。フィリッポスも同じなのだろう、驚きの表情を隠せていない。どう説得すれば良いのか。頭を抱えたくなったその時。



「翡翠の子、こちらにおいで。少し話をしよう。ああそれと、纏めの者も一人一緒に。」


 誰の事かと思ったけれど、フィリッポスに肘をちょん、と当てられ気付く。僕は空の様なふんわりした淡い緑色の瞳を持っている。


「・・・!はい、直ぐに。フィリッポス、お願い。」

「ああ!」


 急いで夜の方の方へ向かう。テーブルを挟んだ対面の椅子が邪魔しない位置で二人揃って片膝をついた。


「改めてご挨拶させてください。私は」

「待て。」


 静止がかかり、口がピタリと閉じた。話せない様なので、頷きで返事をする。


「ほぉ、驚かないな。」

「お兄様。」


 あっ、また注意されてる。ニヤニヤ顔から、一転して無表情へ。いや、少し口を尖らせていらっしゃる様な?気のせいか。


「コホン。あー、それでだな、今お前達がどうなっているか分かるだろう?それ程、私達とお前達では魔力量に差があると言う事だ。」


 お茶を一口お飲みになった。ただそれだけの仕草が優雅過ぎて、見惚れてしまう。


「ならば分かるな?自分よりかけ離れて魔力が多い者に、名を名告ってはならない。運が悪ければ魂が縛られるぞ。」


 やはり、この方は理不尽を通そうとされる方ではない。その様な事、わざわざお教え下さるなど。頷きを返すと、体を縛っていた力が解放された。


「はい、ご教示くださりありがとうございます。これからはそう致します。」

「よし、先ずは二人とも席へ着きなさい。」

「「はい。」」



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