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シスコン姉妹の異世界生活  作者: キリコ
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変化への自覚


「それで、お兄様。あの子はどうなさるの。もちろん命をとったりはなさいませんわよね?」


 お茶で口を潤した妹は優美な仕草でソーサーをテーブルに置いた。外野の視線を感じてか扇を開き顔を隠す。恥ずかしがりさんなの可愛い。


「当たり前だろう?その様な事をして何になる。無駄に恨みを買うだけだ。お前の心身にも障るだろう事くらいは私にも分かるぞ。」

「そうよね。変な事言ってごめんなさい。」

「何だ気になるのか?特に決めてはないが、多少教育してお前付きの側使えか神官にしてもいいかとは思ったが、」


 何だろう。嫌だ。神官はともかく、側仕えは嫌だ。自分で言っといて何だが。口に出すまで嫌だと気が付かなかった。私は馬鹿か。


「まぁ、それは嬉しい事ですけれど。まだ幼くお可哀想ですし、使者、と言うか他者との折衷役などに任命なさったら?」

「ほう?」

「オーラも白くて柔らかいわ、きっととても良い子よ。」


 何だそれは?何故その様に可愛らしく微笑む?その案は、友らしき怪我人の少年と今生の別れにさせないようにと言う事か?確かに妹は優しい子だけれど。まさか気に入ったのか?やけに気にかけるとは最初から思っていた。だがどう言う意味でだ?いくら男性に免疫が無いからと言って、少年の顔の造形は整ってはいるとは言えまさかこんなポッと出の子供に、



「・・・様!お兄様ったら!」

「・・・なんだい。」

「もう、何かおかしな事お考えになっておりません事?」

「・・・それは、どのような?」

「それは分かりませんけれど。私はただ、アカシア様への信仰心が強いか分からない者を無理やり神官にはできないと言う事と、もし側仕えを頼むなら女性に頼みたいと思っただけですのよ?」

「何だ・・・、そうか・・・。」


 はぁ、まずい事になった。この感覚は憶えがある。嫉妬だ。この子があの少年を少し気にかけていると思っただけで???あの微笑み、一瞬で思考が偏ったぞ。これまでは二人きりだったから大丈夫だったのか?あの方の時は諦めが先に来た筈なのにどうして。いや、それよりも魔力がある世界でこれはまずいだろう?しかも地球の時よりも悪化している!物語の悪役の様に私が堕ちたらどうなる。どれほどこの世界を汚染する事になるか。妹をお連れくださったアカシア様に恩を仇で返す事になるに違いない。それだけは避けなければ。


・・・何れにしても、このままでは色々落ち着くまで他者を妹の側に置くわけにはいかないと言う事は確かだ。



「はぁ、すまないがあの少年は連れて行く訳には行かなくなった。わけは後で話すと約束する。私のごく個人的な問題だけれど、話しておかなければ、良くないフラグが乱立するだろうから・・・。」

「まぁ、それはどの様な、・・・いえ。よろしくてよお兄様。存じませんでしたの?わたくしはお兄様さえ居てくださるなら構わないのよ。」


 は?嘘だろ。この子の一言で荒ぶる私の心は一瞬で収められるらしい。よもやこの様な、自身の心が制御不能になるとは。・・・前途多難だ。どうすればいいんだ・・・。

 

 暴走しそうになった時に頭をはたいてくれたり、脇腹に肘を入れたりしてくれていたハルたちが、どれほど重要な存在だったのか、今にして実感してしまう事になるとは・・・。あいつらがそうなった時は私もしていたけれど。


 一人勝ちなどと、私は馬鹿か?なんとくだらない。そうだ、私達はそれぞれがお互いにそうやって牽制し合って上手くやっていたはずだったのに。ちょっとチートを手にして二人きりになったからと言ってこんなに調子に乗る人間だったなんて。自分にがっかりだ。


 だがそうは言っても、これ程魔力差があって万が一負の感情が魔力に乗り、人に当たって仕舞えばどうなるか分からない事は理解している状況下で自制出来ない様な愚図ではなかったはずだ。


 そう考えるとあの事も今思えばおかしい。私はこれ迄ごく普通の一般市民として倫理に従って生きて来た。それなのにこちらへ来て自分でも思考が少々過激になる瞬間がある事を一応は自覚してはいた。とは言ってもそれだけで深くは考えてはいなかった。その時点でおかしくはないか?まさか物語の噛ませ犬のように異世界転移で箍が外れてヒャッハーしてるんだろうか?けれど私は別に好き好んで罪を犯す様な人間ではない。ましてや何の罪もない一般人相手になど。それに郷に入っては郷に従う心積りもある。我慢できる範囲は、だが。妹の安全と言う最優先事項の為なら何でもするだろうが、それとこれとは別の話だ。


 この事には何か理由がある。直感はそれが正しいと言っている。ならばそれは何なのか。







 何だろう。おね、いいえ、他者と接触したからには、考え事の中でもお兄様と呼ぶ様にしていった方がいい気がするわ。いざと言う時にボロが出ては困りますし、話し言葉も、外面だけでなく通常も変えていった方が良いでしょうね。


 幼少期から学院で多少慣れているおかげで、今は少し気疲れしてもその内慣れるでしょうし、実際それ程不便もありませんもの。学院では必要時以外は親しく話してくださる方はいらっしゃらなかったけれど、聞こえて来る会話はこの様な風でしたもの。周りに合わせなければ余計に酷い目に遭いそうで、自然とこうなったのだわ。悲しい事よね。今は助かるのだけれど。たまに庶民の地が出るのは仕方ないわよね?お父様の収入が庶民の割に少し多かっただけで、別にお嬢様ではないのだもの。なんちゃってお嬢様とはよく言ったものだわ。


 ではなくて。先ほどからお兄様のご様子がおかしいのよ。先ほどは魔王と見紛う様な雰囲気で私を見つめたかと思えば、今度は落ち込み何か考え事をしていらっしゃる。この方がこの様に私に関する事柄以外で、内心が目に見える様な振る舞いをなさるなど、本当に珍しい事。一体どうなさったのかしら。


 いえ、そうなのね?きっと私に関する事なのだわ。けれど何かしたかしら?魔王の時は、・・・そうね、少年の処遇について話していた時よね?私が側仕えを否定して・・・。それほど私の側仕えに付けたかったのかしら?けれどその後に撤回なさったわ。どう言う事なの。


 まぁ、後で話してくださる様ですし、今はどうしようも無いわね。何も分からないのだもの。ともかく、少年について話す時は少し気を付けた方が良さそう。


 とは言っても何をどう気をつければ良いのかは分からないのだけれど。


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