イベント発生
「・・・はぁ。やめやめ!切り替えないと。そろそろ見えて来そうだし。」
最後にぎゅっと強く抱きしめて体を離した。すると妹が首に腕を回し、伸び上がってきた。頬に柔らかい何かが・・・、
「ふふ。元気出して。お兄様!」
「っ!、???え?、あぁー!え?何で?!すき!可愛いい!ありがとうございます!!!幸せがインフレする」
またもや頬にキスして貰えるなんて!!!今日だけで2回も!!!いいの!?・・・なんかサービスがよくて逆に不安になってくるんだが。いい事と悪い事は比例する・・・みたいな嫌なフラグ立ってないよね?大丈夫だよね?
「あは、なにそれ!ふふ、妹が頬にキスしたくらいでそこまで喜ぶ?ふつう。」
立ってないっぽい・・・?無邪気な笑顔が眩し過ぎる。
「・・・人目を利用して自衛するつもりだったけどはやまったのでは?こんなんみんな好きになっちゃうじゃん!可愛いいのもいい加減にして!」
「えぇ・・・?なんか怒られた・・・、」
「アッ困った顔可愛い。むり。」
「ちょ、ふふ、まって、やめ!もー!まってったら、もう!キスいったんやめて!ちょっと!ふふ、くすぐったいってば〜!」
「んふふ、あー、かわいい、かわいい。お顔の何処もかしこも、プルプルスベスベで、唇が幸せ。はぁおいし。」
はい、喋る合間合間にキスしまくっております。しあわせ。これバカになるわ。あー唇にあたる感触が気持ち良すぎる。ずっとキスしてたい。みーちゃんのほっぺやべえ。相変わらずマシュマロ。あ、もちろんみーちゃんの唇はちゃんと避けてるよ!?紳士(?)だからね?
「ちょっと、変態みたいな事言うのやめてよね。お姉ちゃんじゃなかったらかなりキモいよ!」
「え!?はいやめます!すみませんでした!」
「はぁ、なんか行く前から体力消耗しちゃった。」
くったりと私の胸に体を預け息をつく妹。少し頬も赤く、良からぬ妄想をしてしまいそう。ってそうじゃない!いい加減にしろ私。こっち来てからほんとおかしいぞ。
「ごめんなさい、何卒お許しを!ささ、こちらお水でございます。」
「あっ、やった。・・・ありがと。」
危ない。取り敢えず妹の好きな、私の水で機嫌をとって誤魔化す。二度とするなとか言われたら死ぬからね。
「主よ、近くで何者か争っておるが、如何される。素通りしてよいだろうか。」
「なんだと?しばし待て。」
マップを見るとどうやら人間と魔物の争いの様だ。
「兄様、そのマーク、魔物と人ですか?あの、助けてはなりませんか?」
「えぇ?めんどく・・・ふむ。まぁ信仰心稼ぎにはちょうどいいか。アルデバラン、そちらへ向え。なるべく急ぐように。」
「承知。」
すると、先程までののんびり飛行が嘘の様に早くなった。文字通り矢が飛ぶ様に進む。面倒だがまぁ、見捨てると妹の心の健康に悪そうだし仕方ない。日本人って基本お人好しなんだよな。自分に危険があると思えばちゃんと(?)見捨てられる人も多いけども、自身に損害なく助ける事が可能な場合に見捨ててしまうと、後々勝手に罪悪感で病む人も多いくらいには。関係ない筈なのにね。まぁそう言うところは結構好ましい人種なんだけれど。
「よし、速さを緩めろ。・・・ここでいい、止まれ。お前達はここで待つ様に。」
「は。」「分かったわ。」
魔物を威圧する為に隠蔽膜と結界を解く。すると向こうは人間までパニックになった様だ。まずい。
「動くな。」
声に魔力を乗せる。狙い通り聞こえた生き物は全て動きを止めていた。もちろん生命活動は行える様にイメージも付けている。心臓も止まったら大変だからね。みーちゃんとアルも除外。
おーおー、急に空に牛車が現れて皆驚いている。そりゃそう。あ、あそこの少年、死にそうじゃん。隣のが回復薬をかけるところだったらしい。やっべ。靴を装着し牛車から降りる。空中を歩きその者の近くへ。扇をその者の額へそっとあてる。
「君は動いてよし。作業を続けなさい。」
・・・動かない。なんでだ。
「ん?それをかけるのではないのか?そやつ死ぬぞ。」
「あ、う、」
「お兄様、魔力を抑えねば。」
あ!威圧か!ごめん!
「か、神様・・・。」
「これで動けるか?作業を続けるといい。」
「!は、はい!」
漸く動き出した。おお、液体をかけた所が治り始める。これが回復薬か。・・・だがこれでは。回復薬のランクが低いのか?
「お兄様、わたくしが治癒をかけてはなりませんか?」
おっと、御簾の向こうから妹が声をかけてきた。中から見ているようだ。御簾の下からはみ出す衣が美しい。どんな美人が乗っているのか想像が掻き立てられる。そりゃ平安貴族もこの光景をを好むわけだ。
そして賢い妹は、取り敢えず出て来てはいけない事は分かっているらしい。偉いぞ!
・・・ふむ、ついでに妹への、のちに判明する聖女への好感度も上げておくか?みーちゃんの慈悲深さに感謝しろ!!!となれば、先ずは少年に助けを求めさせるか。
「ならん。」
「ですがその少年、そのままでは、」
「私達はただの通りすがり。魔物の動きを止めてやっただけで十分だろう。」
「あ、あの、!お言葉を遮り大変申し訳ございません。術があるならばどうかお助け頂けませんでしょうか、何卒、お願い致します、対価ならば、わ、私の持つ者なら何でも献上致します!どうか!何卒!何でも致します!どうか、どうか!」
はい、他人に絶対に言ってはならない台詞私的第一位来たー。こら、助けるからそんなに泣くな。まぁそんな事口に出せないけど。
「ほう?何でもと言ったか?」
「は、はい。」
声が震えてるよ、ボク。まぁね、そりゃそう。見た目だけは人間ぽいけど、威圧で動けない程の魔力量的に考えて人か分からん生物に、突然こんな事聞かれたらね。いや、この子いい子だから助けてもいいんだけど、(なんとなく分かるいつものやつ)念の為周りの人間を脅しておかなきゃだからさ。
「命でも?」
「・・・、はい。私の命で助かるならば。」
おお、間髪入れず返事が出来るの?それほど大事な人間か。
「・・・そうか。ならばこれをやろう。我が妹の作りし秘薬よ。優しい妹にくれぐれも感謝を忘れるな。・・・沢山かける必要は無い。一雫づつ垂らせ。」
「あ、ご、ご慈悲をありがたく頂戴致します!で、ではその、失礼して、」
偉そうに言うけども、渡したのは貰ってアイテムボックスに入れてたみーちゃんの回復薬ね。効果は高い筈。先ほどの液体とは魔力含有量が段違いだし。
恐る恐る受け取った少年は怪我人の傷に一滴づつかけていく。一滴でかなり傷が塞がっていくからだ。手が震えているのかたまにパシャっとなってるけど。
・・・む?おかしいな。傷が全て塞がったにも関わらず怪我人は苦しそうだ。
少年よ、分かったから縋るようにこちらを見るな。
「お兄様。」
「はいはい。」
分かってるよ!命をかけさせといて放置は流石にしませんよ。私をなんだと。まぁいい、取り敢えず状態ステータスだけ鑑定。
魔力枯渇(小)
体力減少(小)
毒(中)
なる程。毒か。
「毒と魔力枯渇だな。これを飲ませそのあとこれを舐めさせなさい。魔力が回復したら吐き出す様に。間違っても噛むなよ、どうなっても知らんぞ。体が弾け飛んでもいいならそうしろ。はは!まぁそんなわけないが。」
なんちゃって、って、あれ、誰も笑わない。あ、みんな動けないんだった。
「お兄様、不謹慎だわ。どうしてその様な事仰るの?そこの貴方、安心なさって。その子の器ならば噛んでも問題ないでしょう。」
「冗談なのに・・・。」
怒られちゃった・・・。
ん?なんだ?ソワソワするような、何だこれ。虫の知らせとか言うやつか?
誰も話していないのにも関わらずざわつきを感じとり念の為マップを確認すると、少しだが赤い点がまた集まって来ようとしているようだ。魔力を多少抑えてるとは言え、ここには私がいると言うのにどう言う事だ?
そう考えたところで、ふと怪我人の胸元が気になった。薬を飲ませ終わった少年に尋ねる。
「こやつ、何を持っている?この者の胸元を探れ。」
「えっ?え???」
「早くしろ。魔物がまた寄って来ている。」
「!」
顔を真っ青にした少年が慌てて怪我人の胸元を少し探ると、左の内ポケットから魔石の装飾品らしきものが出てきた。見た感じはそうだな、・・・地球で言うところのタリスマンと言えば分かりやすいか。
「これだな。」
指先に魔力を纏わせ嵌められている魔石だけ壊す。
「な、何を・・・!」
「お待ちになって、お兄様にはきっと何か理由が、」
マップを確認すると、赤い点はそれぞれの周囲で少し逡巡した後引き返していった。
「よし。取り敢えず問題はない。」
怪我人を見ると枯渇などの諸々のバッドステータスは消え、顔色も回復しているようだった。
「この者を起こせ。この魔物に襲ってくれと言っている様な物、何故持ち歩いている?お前達を全滅させるのが目的かもしれんぞ。」
「そんな!フィリッポスがその様な事する筈ありません!」
「だが実際に、いや、そうだな。お前達の揉め事は私には関係のない話だ。さて。」
周囲を見回すと、こちらを見る事ができる体制の者は皆こちらを見ていた。泣いていたり青褪めていたり忙しそうだな。取り敢えず解放するか。
「この者達は解放して問題ないか?」
「は、はい、お願い致します。あの、怪我をしている者に、こちらの残りを使用してもよろしいでしょうか。」
「いいだろう。それはもうお前の物だ。好きに使うといい。それが終わったら皆と別れをすませなさい。お前は願いに命をかけたのだからな。」
可哀想だが、簡単に助けを求めていい存在だと思われる訳にはいかないからな。許せ、少年よ。
一度やって見たかった、指をパチっと鳴らして魔物以外の言霊を解く。急に体の硬直を解いたせいか、ドサドサと人々が座り込んだり倒れたりしている。ごめーんね。でも魔物に殺されるよりマシじゃん?
魔物は邪魔だろうし一先ず念動力で脇に寄せて置く。
直ぐに皆が少年と怪我人の少年に駆け寄った。少年は回復した怪我人の少年に泣きながら抱き締められて、喜びながらも息苦しそうにしている。あれ?そう言う感じ?・・・ふむ、って事は、あの魔物寄せのタリスマンはここにいない者に渡されたか。怪我人の少年も、直感的には変な人間ではなさそうだし。
少年達から目を逸らし、近くに絨毯を敷きアンティーク風のテーブルセットを出した。一通り浄化をかけソファへ座る。自身の服装との違和感がすごい。
「馬車を修繕したり荷を片付けたりするだろう?私は此方で待っているから急がず準備しなさい。それが終わったら別れの挨拶をすると良い。」
「あ、ありがとうございます。そう致します。」
涙声やめてー。私悪者じゃねこれ。まぁしゃあない。若干そんな感じにしたしね。
馬車も横転していたり、荷も飛び出したりしているのだから時間もかかるだろう。手持ち無沙汰なのでお茶でも飲みたい。喉も乾いたし。お別れの時間を長くとってあげるなんて、私って慈悲深い。
妹をどうするかな。あのまま牛車の中で待たせるのは可哀想か?だがこの人々に見せるのもな。揉め事の気配のある集団に認知させるとか変なフラグが立ちそうじゃないか?かと言って、うーん。存在は既に認知されてるしな。いや、やっぱやめておこう。なんか見せるのやだし。何かが減る気がする!
「お兄様、わたくしも其方へご一緒してもよろしくて?」
タイムリー過ぎるよ、我が妹よ。
「ならん。お前はそこに居なさい。そこが一番安全なのだから。」
「まぁ!その様なある筈もない事!お兄様がそちらにいらっしゃると言うのに。お兄様のお側が一番安全な事など、赤子でも存じていてよ。危険があればすぐ戻りますから。ね、お兄様。」
なんっっってかわゆい事言うの???こんなの言いなりになるしかないじゃん!?すき!ええ、チョロい姉ですが何か?何なら姉とかいて愛の奴隷と読んでもいいまである。まぁ?私の側が一番安全なのは今のところ確かにそうだし?離れてると飛べる何かに牛車ごと連れ去られたら大変だもんね?だからこれは仕方ない。うん。
「はは、かわいらしい事を言う。仕方ないな。いいだろう。待ちなさい。」
みんな見ろ!いいだろう、こんな美少女な妹に頼りにされてるんだぜ。一番安全とか。あー気分が良い。優越感と顕示欲と独占欲が満たされるー!こんなん調子に乗っても仕方ないやつじゃんね?
椅子をしまい宙を歩き、浮いている牛車へ。扇の先で御簾をめくり妹の手を取ると、妹が見えたからか人々が騒ついた。感嘆する様な声が幾つも聞こえ更に気を良くし、妹を腕に乗せた。こら、頬を染めるのはやめなさい。そんな可愛い顔、他人に見せないでくれ。目で咎めると妹はサッと扇で顔を隠した。それでいい。
テーブルの前に着くと、結界を平たく三畳分ほど出し金色の和雲に変化させる。和雲なら上は平たいから座り易いはず。そして妹の神々しさが増し増しになる事請け合い。何だ?妙に騒つくな。まぁいい。
その和雲の上に妹を下ろす。和雲の厚みは五十センチほど。もちろん地面から浮いております。一段一段は十センチほどの厚みだけれど、和雲の座面には実家にあった高級ソファの感触をイメージ付けし、背の位置には見えない結界で作った背もたれを浮かせて固定してあるので座り心地に抜かりは無い。洋風の椅子にはこの衣装では座れないだろう、かと言って地面に座らせるなどあり得ないのだから。あと雲の床に広がる衣装の美しさを見せびらかしたい。
妹の長い髪を手ずから後ろへ流してやり、全体を確認する。横座りで檜扇を顔へかざす姿は、完全に何処ぞのやんごとない姫君だ。実に美しい。
とは言え、自分から来たいと言ったくせに、どうやら注目されて少し緊張しているらしい。私も妹の隣へ胡座で座る。牛車用のつもりで作っていた肘置きも出してしまえ。これ結構快適だわ。
魔法で熱湯を出し、念動力でお茶を淹れる。決めた分数待ち温めたティーカップへ注ぎソーサーへ乗せると妹と自身へ配膳した。
青い(青くはない、どちらかと言うと薄緑)空、白い雲、そして妹は美しく茶は美味い。最高だな。




