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シスコン姉妹の異世界生活  作者: キリコ
30/40

牛車にて


 座布団の上で、座り心地がいい様に座り直していると、姉が前方の御簾に手の平を向けながら、何事かブツブツと呟きはじめた。限定?姉と私の名前?が聞こえる。何だろうと見ていると突然御簾が消えた。


 「えっ???」







 牛車を操作するのに不便かと前方の御簾へ、私と妹限定で透視をかけると妹を驚かせてしまった様だ。


「御簾に透視を付けただけだよ。私達に護衛や付き人はいないから。まぁアルデバランが何か気が付けば教えてくれるだろうけれど一応ね。」

「何か危険があると感じてるの?」


 おや、怖がらせてしまったか?あくまで念の為なんだけれど。


「いくら街の人々と魔力差が大きいとは言っても、何があるか分からないでしょう?どこかには強力な個体がいる可能性も有り得ない話じゃない。とは言えそうは無いだろうから、と言う意味で一応。」

「そっか。一応ね。」

「そうそう、念の為と言うだけだから気にしないでいいよ。それに進む方角が見えた方が酔いも無いだろうしね。」

「あっ、でもこれ全く揺れないからそもそも酔わないんじゃ?」

「そうかもね。もちろんそうに越した事はないよ。でも別に難しい事じゃ無いならやっておいた方がいいでしょう。労力が小さければ小さい程やらない理由はない。」


 たった少しの手間を惜しんでこの子の体調を崩す様な事になったら目も当てられない。何の為のチートだ。それに浄化では想定より消耗させてしまった。様子がおかしかった為、直ぐ様鑑定したがHPは減っていなかった。けれどももしかしたら魔力以外にも、気力の様なものを消費するのかもしれない。


「それはそうと、そろそろお茶の時間だけど何か飲まない?」


 まだお昼ではないとは言え、日も高くなってきた。移動中にどうかとは思わなくも無いけれど、浮いている為揺れは無いし部屋と変わらないのだから大丈夫だろう。魔力で生きていけるのでは、とこの間予測を立てたものの、人間をやめたいわけではないのでこれ迄の習慣をなるべく変えたくはない。


「そう言われると喉が乾いたかも。でもお茶の気分じゃないし、兄様のお水がいいな。」

「また?いいけれどよくそんな毎日飲んで飽きないね。毎日と言うか毎食?飲んでない?」


 そう口では言いつつも実は嬉しく思っているのは内緒だ。魔力その物を美味しいと言ってくれている様なものだし、私の魔力が妹の体を巡ると思うと心臓が高鳴る心地がする。いや、これは気持ち悪いか?取り敢えず褒められたら嬉しいのはおかしくないはずだ。変な事を言ってしまう前に渡してしまおう。


 盆にグラスを乗せ差し出す。


「ありがとう。・・・ん、はぁ、おいし。」

「・・・。」


 頬を染めて恍惚の表情で人の魔力を美味しいとか言うのは・・・ちょっとどうかな?吐息は良くないよね。宜しくない。みーちゃんは小学生、みーちゃんは小学生、みーちゃんは小学生。やめろ、合法ロリとか言う言葉は今すぐ忘れろ。私が女だった事に感謝しろよ!男だったら危なかった。女で良かった。・・・本当に?良かったのか?いや、今はそもそも女でもないよね。だめだ、思考がとっ散らかってきた。


「この美味しさを味わえないなんて。毎日飲みたいくらいなのに。そうだ!今度ポットに貰ってもいい?」

「そんなに?別にいいけど、あぁ、それなら街で良さそうな容器でも探そうか。それともティーポットとかがいいのかな?」

「うーん、でもティーポットだとすぐ無くなっちゃうじゃない。なんなら樽で欲しいまである。」

「く、あはははは、そんなに?それもう中毒じゃん、笑わせないで!あ!」


 ひらめいた!じゃないばかふざけるな私。中毒て。もしかしてもう私から離れられないのでは?じゃない。変な事考えるな。


「お姉ちゃんは自分の魔力だから分からないのよ!本当に美味しいんだから!」

「お兄様」

「はい、ごめんなさいお兄様。じゃなくて!それで!くれるのくれないの!?こっちは真剣に言ってるのに。」


 唇を尖らせるクセ、やめさせないと。こんなの誰だって吸い付きたいに決まってる。


「ごめんごめん、空の樽ならあるからちょっと幾つか加工して水詰めてあげるよ。それでいい?」

「ありがとう!加工どうやるのか分かんないけど、木の匂いとかが水にうつらない様にして頂ければ幸いです。ウイスキーやワインじゃないので。そのままの本来のお水のままがいいので。あ、そうだ、対価としては私の魔石でいいかな?」

「対価とかべつに、いや、やっぱ貰おうかな。釣り合う様にするには樽何個分になる事やらだけども。もしもの為に聖属性の魔力を詰めてもらおうかな。」

「なるほど!なら今日寝る前にやってみるね!時間があれば。就寝前に魔力をギリギリまで使うのは定石、だったっけ?」

「そうそう。枯渇にならない程度にね。まぁ私は枯渇にならないラインで、回復する片っ端から結晶化させてるんですけども。」

「そんな事してたの!?量が凄い事になってそうね・・・。」

「予備のシュガーポットはとうに使い切って、スーツケースに入れてた未使用のビニール袋5枚も使い切って、今はテキトーに魔力で作った箱に突っ込んでるよ。そのせいか現在の魔力量をまずまずの精度で把握出来るようになったけど。」

「そうなんだ!良かったね!」

「・・・ん?その反応もしかしてみーちゃん、とっくに出来てた感じ?」

「え?う、うん。わりと最初から・・・」

「そっか、最初からそんなだったなんて感度がいいんだね。だから敏感・・・あ!その、変な意味じゃなくて。魔力感知の精度の話。」

「?うん。その話してたじゃない。そのくらい分かるよ?」

「あー、いや、うん。何でもない。」


 何かいちいち思考がよく無い方にいってしまう。思春期男子かよやめてくれ。気持ち悪いとか言われたら死ぬしか無いのに。今までこんな事無かっただろ。どうしてしまったんだ私は。


 こんなどうすればいいのか分からない事など、あの忌まわしき『みーちゃん姉離れ事件』以来だ。あの時はクソギャル共を処した後何とかみーちゃんを丸め込んで元に戻って貰ったんだよね、確か。


 はぁ、忌々しい。あいつらのせいであの二週間は生きた心地がしなかった。あの時は後を尾ける事を決心するまでの約二週間、四人でお互い誰が原因か喧嘩したりみーちゃんに素っ気無くされてオロオロしたり、無駄に嘆き悲しんだり、全員役立たずで無能の極みだったな。あの時のみーちゃんは、思い出すだけで胸が痛くなる。


 うっかり思い出してしまい、物見の窓から外に視線をやり小さく息をつく。すると、突然妹が私のあぐらをかいた膝に小さな手をつき、顔を覗き込んできた。


「どうしたの?今の会話何かいやだった?それとも何か懸念があるの?やな事でも思い出しちゃった?」

「っ・・・、」


 どうして。オーラ鑑定のスキルか?・・・いや、この子は昔からこうだ。


 辛い事や腹立たしい事があると、何か察する様にいつも寄り添ってくれる。歳の離れた妹にそうされて喜ぶなど、情け無いかも知れない。みっともないかも知れない。けれど、いつもたまらない気持ちになって、抱きしめさせて貰うと嫌な気持ちはどこかに行ってしまうのだった。


 膝についた手を引き膝に抱き上げる。

 

「何でもないよ。みーちゃんが離れて行こうとした時の事、思い出してしまっただけ。いつもの発作よ発作。少しだけこうさせて。」

「発作って、・・・もう。」


 小さな体を抱き込むとホッとする。この子は奇跡的にまた私の腕の中に戻って来てくれた。手放したのは私の方だったのに。もうどこにもやりたくない。嫌だと言うまで私の手元におく。いや、嫌だと言われても手放せるのだろうか。この世界にはハルは居ないのに。この子を託せる者などいるわけが無い。


 やめろ。これは考えてはならない事だった筈だ。何のために転勤の話を受けた?離れて暮らす日々も、何の為に我慢した?こうならない為だった筈だ。


 ・・・はぁ、いつものアレをするしか無い・・・。


私に閉じ込められ泣き暮らす妹を想像する。もうこの時点で心臓に悪い。・・・最初は普通に怒っていた妹も、段々と私を嫌い罵り憎悪を向けてくる様になる。そのうち食事をしてくれなくなり、話しかけても瞳は虚空を見つめ・・・


 ・・・よし、色々萎えた。断じてその様な事は私にすらさせない。泣かせる様な事などしない。閉じ込めてはならない。そもそもこの子をそう言う意味で手に入れてはならない。禁忌を犯せば、優しいこの子は受け入れる事も拒否する事も出来ず、きっと壊れてしまうから。





 ただし私の手から離れるのは、強制にならない範囲で全力で邪魔させてもらう。それで諦めるなら双方その程度の思いだったと言うだけだろう。特に誰とは言わないが。私の唯一の宝を奪おうと言うのだからその程度、当然の事。


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