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シスコン姉妹の異世界生活  作者: キリコ
27/40

急募、男性への免疫。




「よし、じゃあ着替えた事だし牛車を見に行こう!」

「えっ!あっ、そう言えばさっき言ってたね。みたい!!めちゃくちゃ見たいです!!!」

「あ、そんなに?そんなに期待されると逆に何か自信無くなってくるな・・・まぁ改善点見つけて貰えばいいか。こうして欲しいって思うのがあったら遠慮なく教えてね。」


 抱き寄せていた妹を片腕に座らせ、テラスへの扉を開けて外へ出る。妹の衣装は特性の通り重さは感じない。まぁ少し嵩張りはするけれど私の腕力なら何の問題もなかった。


 テラスへ出ると階段につながっていない箇所へ行き、例のハンマーで柵の一部分を軽く小突いて二メートル分程取り外す。そのテラスの途切れた先へ牛車を出した。テラスと牛車の後ろの口の高さが丁度よかった。


 テラス自体を洗浄してから妹を降ろす。こうしてみると、お付きもおらず土足でこそないもののスリッパ仕様のこの家ではこの衣装は清潔とは言い難いかも知れない。いくら汚染防止がついているとは言え気持ち的な部分が引っかかった。やはりこの衣装には木と畳の家の方が暮らしやすいのかも知れないな。まぁずっと着ていくわけでは無いだろうから、その辺りはまた今度考えるとする。


「ひゃあ、すごーい!写真でしか見た事ないけど、こういう感じなんだね!思ったより大きいね。」


 特に興味を持たなければ目にすることのない珍しい乗り物を見てか、妹は目をキラキラさせている。


「大きさはね、作ってから最後に自分でちょっと大きくしてみた。元々そんなに狭くも無かったんだけどね。みーちゃんが眠くなったら悠に体を伸ばせる方が良いかなと思って。」

「なんかごめんなさい?」

「じゃなくて?」

「あ、ありがとう。へへ。」


 一々かわいいの何なんだ。頬を染めるな。はぁ愛しすぎる。ちゅーしてやろうか全く。そう思っていると急に浮いた妹はそのまま牛車の周りをフヨフヨと浮いて見て周りはじめた。


 サッと牛車の周辺にクッション結界を張り巡らせながら、わぁ、だのキレイ、だのきゃあきゃあと可愛らしい声を聞く。どうやら気に入ってくれた様だ。


 デザイン見本はいくつかあったのだが、一番美しく頑丈そうな物にしてみた。位によって色々規定があった筈だけれど此処は異世界なので気にしないでおく。決め手は物見の窓の大きさである。どうせ移動の際は牛車の周りに結界を張るので風や塵は入って来ない。


 オプションで選んだ蒔絵や螺鈿細工にはかなり魔力を取られたけれどそのおかげで、見た目は少々派手になってしまったが元から付いていたクリーンに加え破壊耐性と全属性魔法反射が付いた。見た目も弓形の屋根に黒漆、赤い御簾が美しく瀟洒な佇まいで気に入っている。


「みーちゃん、そろそろ戻っておいで。中も見てみて?」

「見るぅー、まって」


 慌てて妹が戻って来た。そこまで急がずともと、ついクスリと笑みが溢れる。


「さ、どうぞ、お姫様。」

「んぐっ」


 下簾の布を脇へよけ片手で御簾を上げて逆の手を差し伸べると、手を取り急に咳き込んだ妹はそそくさと手を離し中へ入った。








 姉(兄?)の手をとり中へ入ると、はっと息を呑んだ。床は久しぶりに見た畳であったのだ。端にはこれまた高級そうな座布団が寄せてあった。思わず座り込み畳を撫でてしまう。


 まだ小さくて元気だった頃だけ少しの間踊りを習っていたことがある。畳に正座すると、キュッと気が引き締まる思いがしていたものだ。家の和室も好きで、よく入り込んでぼうっと床の間やそこに飾られるその季節折々の飾りやお花を眺めているのが好きだった。花を活ける母の姿や、襖をあけ廊下越しに面した中庭を観ながら一人、将棋をさす父が思い浮かんでくる。家自体は洋風だったけれど私にとって畳は身近なものだったのだ。


 い草の香りを感じていると姉が隣に座ってきた。胡座をかいていてすっかり男装が馴染んでいるみたい。


 いつの間にか目が潤んでいて顔が上げられないでいると、頭にそっと手が乗り優しく撫でられる。こう言う時には揶揄ってはこないのだ。揶揄って来たら怒ったふりで誤魔化せるのに、と八つ当たりな事を思っていると、そっと抱き上げられ膝に乗せられた。


 嗚咽を堪えていると、肩に頭を乗せなさいと頭に乗った手が導いてくる。姉の綺麗なお着物に涙がついちゃうと抵抗していると、ため息を吐かれた。何故だか只それだけの事がとても悲しく、ついに涙が決壊し流れてしまった。すると肩口にハンカチが当てられそのまま姉の予定通りハンカチ越しに顔を肩へ。


「こんな時に汚れる汚れないとか気にしなくて良いのに。みーちゃんの精神状態の方が一億倍大事って分かんないもんかなぁ。」


 それでため息を吐かれたの?自分の気持ちもよく分からないままに、抱きしめられそっと髪をすかれると、やっぱりそれで安心してしまう。何だろう、この感じ。私情緒不安定ではないかしら。


「うう、だってせっかくの、綺麗な、お着物が、ひっぅう、せっかく、かっこいいのに、ダメになったら、や、だもの、」


 弁解するとくすくすと姉が笑っているのが振動で伝わってきた。真面目に聞いてよ、と顔を上げないまま、顔をあてているのと逆の肩をぺしりと叩く。


「ふふ、ごめんごめん。みーちゃんがあんまり可愛いこと言うから。そんなに気に入ってくれたなら、カラバリに何枚か作ってしばらくこのかっこで居ようかな。意外に生地も柔らかくて着心地もいいし楽なんだよね。スウェット着てるのに近いかも。」

「そうなんだ、うん。きっと、おねえt、・・・お兄様の妹は、喜ぶと思う。たぶん・・・。」

「はは、そっかぁ、ならそうしようね。それで?お兄様のかわいいかわいい妹ちゃんはどうしちゃったのかな。」


 優しく撫でられ続け、段々と眠くなってくる。まさかたったこれだけで私今日の体力使い果たしたとかじゃないよね?あ、返事しなくちゃ。


「なんか、畳がすごく懐かしくて・・・。まだ数日なのに、うう、お母さんが、お花を生けたり、お父さんが、将棋してた、思い出し、ちゃて、ふう、ヒック」


 自分の言葉がキーになり、父と母の姿や笑顔、料理している母の背中や静かに本を読む父の横顔がどんどん脳裏に浮かんでは消えていく。


「そっか、思い出しちゃったかぁ。そうだね、やっぱり寂しいよね。」


 優しい声で同意され思い出がフラッシュバックすると、もう我慢は出来なかった。


「うあーん、さびし、お母さん、会いたいよー、ふぇ、お父さん、お話ししたいこと、いっぱいあるのに、う、うっううー!」

「そうだね。よしよし、いっぱい泣いちゃえ。」


 




 しばらくわんわん泣いて、背中をトントンされていると、段々と感情の昂りが収まって来た。


 どれくらいの時間が経ったのかな。またもややってしまった。もうやだ、この体。アラサーの私が脳裏で頭を抱え悶えている。


 そもそもこの姉の包容力がカンストしているのがいけない。絶大な安心感に包まれると、感情のタガが容易く外される。これのせいも多分にあるはずだ。と、責任転嫁していると、ぎゅっと抱きしめられる。


「落ち着いたみたいだね。よくここまで持ったと思うよ。もっと早く爆発すると思ってたんだけどな。珍しくはずしたみたい。我慢してたの?考えないようにしてた?」


 体から離され、いつの間に用意したのか冷たく絞られたハンカチで顔を拭かれる。拭き終わるとじっと目を合わされた。何かを確認したいみたいな。真剣に答えなきゃかも。


「それはそう、って言うか、私が原因なのに泣き事言うのは流石にどうかとおも」

「あ?」

「ヒッ」

「あ、ごめんごめん。違う、怒ってない。」


 嘘じゃん、ちょっとキレてるよね!?なんで?なんか怒らせる様なこと言ったっけ?


「まぁーた自分のせいとか思ってたの?」


 またそれ?なんか声が怖いよ、そんな低い声出せたの??未分化になったから?変声期くる?


「そのさ、みーちゃんの自罰的な思考回路どうにかならないのかな?どうすれば変えられる?お兄様の愛を分からせちゃってもいいんだよこっちは。」


 えっ、なんか不穏じゃない?その単語血のつながった姉妹で使って大丈夫なやつ?てか顔がちかいです。


「この世に、いや、あの世界にもみーちゃんより大切な物なんて無いのに。自分が一等尊いものだってどうやったら理解できる?」


 怒っているのにどうしてそんなに悲しそうな顔をするの?私が自分で自分を諫める事すら、お姉ちゃんにとっては辛い事なの?


「どうして?どうしてそんなに私が大切なの?分からないよ。何がお姉ちゃんにそこまで思わせるの?家族が大切な事は私にも分かるよ。私だってお父さんもお母さんもお姉ちゃんも大切で大好きで大事だもの。でも自省も」

「みーちゃんのそれは自省じゃ無い。何度言えば分かる?それに、みーちゃんは全然自分の事分かってないよ。みーちゃんがどれほど可愛くて優しくていい子なのか、無垢で可憐で愛らしいのか。そんな掌中の珠が自己犠牲心旺盛ときた。そして他人からの謂れのない中傷で自尊心もない。誰だって過保護にもなるわ。言っとくけどお姉ちゃんのこれは界隈では全然浅い方だぞ。まぁ元凶はちょっと嫌悪感があるくらいで意気揚々と謂れのない中傷を続けてきたその他大勢の他人なんだけど。あ、これあいつら一万回くらいなら殺してもよくない?」


 なんで急にそうなるの!?なんかコッチ来てからお姉ちゃんの倫理観がおかしな事になってない?


「えっ?!ダメに決まってるよ!ちょっとの悪口で死ぬとかあんまりだよ!それに私そんなにいい子じゃ無いし。お姉ちゃん、妹に夢見すぎじゃないかな?はぁ、もう、急に話の方向転換しないでよ、びっくりする。」

「でも現実に悪口のせいで、みーちゃんの心は傷付いてるじゃん。」

「そうかなぁ?まぁ悲しいけど、仕方ないって言うか。あの人達ちょっとは盛って言いはするけどそれ程間違った事言ってる訳ではないし。まぁ確かに八つ当たりじゃんと思う内容の時もあるはあるけど。でも殆どは間違っては、ヒッ」


 あ、まって何その笑顔、なんか怖いんだけど!


「そうか、分かった。分からせ、をご所望ってわけね。」

「ご所望じゃ無いです、ごめんなさい、違います、許してください!誤解です!」

「心配しないで、痛い事はしないからね。気持ちいい事だけ。私がどれほどみーちゃんを大好きか分かって貰うだけだから。」

「そのセリフ大丈夫なやつ!?私達姉妹だよ!?」

「大丈夫、いろんなところにちょっと口がくっついたりするだけだから。ほっぺにちゅーと同じ同じ。」

「だからそれアウト!口がくっつくって、キ、キ、キスじゃん!近親なんとかはいけません!」

「ふうん。それで?私達しかここにはいないのに?誰が咎められると?」


 必死に止めるのに、意にも介されず私の背中に回っていたお姉ちゃんの腕の片方が頸へ移動し、頭が固定された。お姉ちゃんのかっこいい顔がどんどん近づいて来る。こんなに近付いてもいくら若いとは言え毛穴一つないし美しすぎるのすごい。無表情って言うより真剣な表情?かっこよすぎる。美しいのに女性的にあんまり見えないの、おでこが丸くないからなのかな。気にして見てなかったから知らなかったな。アッばかばかそうじゃなくて!どどどどうしよう?


 吐息を感じて猛烈に羞恥が襲い思わず息をとめてしまう。


 闇夜のような真っ黒の目に吸い込まれそう。ハっ、どうしよう、く、くち、口がくっついちゃう。


「あれ、みーちゃんもっと抵抗しなきゃ。え?ちょ、また!また息とめてる!ごめんって!もうしないから、息して息!」


 慌てる姿にホッとする。いつものお姉ちゃんに戻ったみたい。けれど、頭の何処か冷静な部分でそう思いつつも、背を叩かれ少し荒い息を整えながらボーッとなった私の頭の中は一つの疑問に支配されていた。お姉ちゃんの唇、触ったらどんな感じなんだろう。気にした事無かったけれど、私と違って薄いもの。きっと違う感触なんじゃないかな。あれがいつも頬や額に触れていたの?いつものほっぺにキスとそんなにかわらないはずなのに、どうしてこんなに恥ずかしいの?


「みーちゃん、こんな事されたらもっと抵抗しなきゃ!男なんて、ダメって言われたくらいじゃ止まんないよ。私まだ男じゃないけど。気持ち悪いとか、生理的に無理とか吐き気をもよおすから触るなくらいは言わないと。全然ジタバタもしないし。男に言い寄られたらどうなっちゃうの?心配だよ!!益々離れらんないじゃん・・・。」


 私の肩に額をあててがっくりしてるお姉ちゃん。そんな横顔もイケメンてどう言う事?この人ほんとにこの間まで女性だったの?ていうか


「え?だって、お姉ちゃんだよ。いけない事だけど別に気持ち悪い事じゃ無いよね?」


 そう思った事を言うと、バッ勢いよく顔を上げた姉と目があった。え?何その無表情。怖い。なんか怒ったの?


「え?無表情怖いよ。どうしたの?なんで怒ったの?私あやまる?ごめんなさい?」


 ハァ〜〜〜〜〜、とめちゃくちゃ長い溜息をはくと、何故か軽くデコピンされいつものお姉ちゃんの顔に戻った。


「まったく。この私に対して対理性特攻みたいな事ばっか言いおってからに。知らないからね。いつか分化したら覚えてなよ。」

「???」


 特攻?何?何用語なのそれ?なんか私が悪口言ったみたいに思われてない?


「え?ごめんなさい?悪口言ってないよ?」

「・・・そうだね。言ってないね。はぁーーーーー、どんだけピュアなアラサーだったんだよ・・・今の状況に危機感ないのかよ。いや気持ち悪くないらしいから無いのか。へへ。じゃねーよ馬鹿。もうちょっと世間擦れした方がいい気がして来た。いや、でもそれはそれでやだな・・・、まぁまだ小さいし先の事はいいか。やべ、アカシア様に守るとか言っちゃったんだった。いらん事言ったな。何もできん。いや、ほっぺちゅーがアリならワンチャンある?」


 なんなの?昔からこう言うよく分からない誤魔化しみたいな事時々あるのよね。言葉は分かってもそれが何を指してるのか分からない様な。まぁ、お姉ちゃんが知らなくていいと判断したなら別にいいと言えばいいんだけど。それで問題になった事もないのだし。それで本当に不味い事なら忠告してくれるのだから。


「・・・まぁいいか。んー、よし。目も腫れてないね。かわいいほっぺもいつも通りすべすべ。」


 気を取り直したらしき姉に頬を撫でられ顔を上げると、優しい顔でこちらを見ていた。あの顔を見るとつい微笑んでしまう。滑らかな姉の指が頬をする感触が気持ち良くて思わず擦り寄ってしまう。


「んん!」

「?」


 喉の調子でも悪いのかしら。あげたくとものど飴すらここには無い事を思い出し、ひと段落ついたらのど飴を調合しちゃおうと決意した。


「どうしようかな。体、疲れてない?今日出発のつもりだったけど、一旦休んで明日でかけようか?」

「!やだ!行けるなら行きたい!あっ、でも私何も用意してない・・・。何が必要かな?」

「いや、今のところは特にないかな。ご飯もあるし着替えも用意しようと思えばすぐ出来るし。あ、そうだ!」


 姉はそう言うと、端に重ねてあった超高級そうな座布団を引き寄せその上に座り、また私を膝に抱え直した。


 思わず見上げると目が合い、頬を緩ませた姉に顎を掴まれ額に口付けられる。いつもの触れ合いなのに自分の頬が熱を持つのが分かってしまった。私は一体どうしてしまったのだろうか。少し混乱して俯いてしまう。


「ありゃ。赤くなっちゃってかわい。男の人の格好してるから恥ずかしくなっちゃったかな?大丈夫、お姉ちゃんだよー。中身はいつものお姉ちゃんだよー。」


 そう言う事か!お姉ちゃんが男性みたいな格好だから!私男性に免疫ゼロだしそれなら仕方ないよね。なんだ、危なかった。ん?何が危ないんだっけ?


「おーい。みーちゃん帰って来てー。」


 顔にいっぱいキスが降り注ぐ。いつもの事だけれど、今更ながらもしかしてお姉ちゃんには私が赤ちゃんにでも見えているのだろうか。いや、小学校低学年ならあんまり変わらないの?でも中身が大人だって知ってるはずなのに。高等部へ上がった頃くらいからキスしてこなくなったくせに。こっちへ来てからここぞとばかりにキスされている気がする。別に嫌な訳じゃないけど。大人の私にはしないくせに。


「あれ?ムッとしてどうしたの。お口がとんがっちゃってるよ。」

「うまれつきだからいいの!」

「そ、そうだっけ?」


 あまりにも姉に口元を凝視され、訳も分からずソワソワしてしまい落ち着かず、唇をソッと戻した。まだ視線は剥がれない。


「・・・そうなの!えっと、それで、何か気が付いたみたいなの何だったの。」

「ああ!えーと、はい!じゃーん、これ見て。」


 姉は突然ステータスを立ち上げたと思ったら、よく見えなかったけれど青っぽいアイコンをタッチした。


 



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